第20話
ゴールデンウィークも七日が過ぎた。
あっという間だった。毎日、お店の手伝いをして、勉強をしていたら一日が終わるといった感じだった。
結果から言うと、陽彩をアルバイトに誘ったのは正解だった。三人で回していた時よりも格段に楽になった。それというのも陽彩が優秀だからだ。だいたいのお店での立ち回りを陽彩は二日目にして完璧に把握していた。
さらに、その容姿と持ち前のコミュニケーション能力で常連さんたちとも仲良くなって可愛がられていた。
「陽彩ちゃん。こっちの注文もお願い~」
「は~い。今行きます」
常連のマダムが陽彩を呼ぶ。
マダムは毎日のようにお店に来ては、陽彩と雑談をして楽しんでいるようだった。
「陽彩ちゃんが来てくれてほんとに助かったわ~」
「だな。誘ってよかった」
「ゴールデンウィークが終わってからも働いてくれないかしら」
「どうだろうな。本人に聞いてみたら?」
「翼ちゃんが聞いといて!」
「なんで俺が……そういうのは、このお店の責任者のお母さんの役目では?」
「いいから、翼ちゃんに任せる。いい? 必ず落とすのよ!」
何を落とせっていうんだ!?
その意味ありっげなウインクはなんだ!?
自動ドアが開いて、知った顔が二人、入店するのが見えた。
「ひーちゃん。来たよ~」
「え、愛理。なんで来てるの……」
「そりゃあ、親友が働いてるんだもん。様子を見に行かないわけにはいかないでしょ」
愛理は学校と変わらないテンションで陽彩のもとに駆け寄った。
「獅戸君。久しぶり」
「どうも」
「お仕事の邪魔はしないから。安心して」
「別にそこの心配はしてないけど……」
陽彩の方を見てみると顔を真っ赤にさせていた。
どうやらメイド姿を見られてことが恥ずかしかったらしい。
「あの服はあなたの趣味?」
「違うから! お母さんがああいう服が好きなだけで!」
「そう。まあ、別に私には関係ないけど」
絶対に誤解されてる。
最悪だ。このことが学校中に広まったら、俺の空気としての学校生活が終わてしまう。
「ひーちゃん。その服可愛いね~」
「あら、もしかして陽彩ちゃんのお友達?」
「はい。えっと、もしかしてつーくんのお母さんですか?」
愛理は朝美のメイド姿をまじまじと見ていた。
そりゃあ、顔は若々しいくて二十代に見えるけど、実際は四十代だから。おばさんがそんな服を着てたら痛いよな。
「そうだよー。あなたは翼ちゃんの……」
「友達でクラスメイトで~す! つー君のお母さんめっちゃ可愛い~」
「ほんと? 嬉しいわ~」
そうだった、朝美はこういう人だった。しかも、朝美と同じような匂いがする。愛理も可愛いものが好きで、メイド服とかしょちゅう着ているんじゃないだろうか。そんな愛理と意気投合して、その場がややっこしいことになりそうだった。
「愛理。もう少し静かにしなさい。他のお客さんもいるのよ」
「お母さんもそのへんにしといて、仕事に戻れよ」
二人はしぶしぶといった顔をしていたが、愛理と七海は空いてる席に、朝美は他のお客さんの注文を取りに行った。
「大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。愛理たちにこの姿を見られてちょっと恥ずかしかっただけ」
「だろうな。休憩するか?」
「ううん。大丈夫」
「そっか。無理はするなよ」
「うん……」
俺は少し心配だったが、メニューが決まったお客様に呼ばれたのでそのテーブルに向かった。
陽彩も気を取り直して、お客様からメニューを聞いて蓮夜のところへそれを伝えに行った。
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