第18話

 そして、怒涛のゴールデンウィークの十日間がやってきた。

 昨日のうちに両親には陽彩がバイトとして手伝ってくれると伝えたら、もの凄く喜ばれた。


「陽彩ちゃんって、この前翼ちゃんが連れてきてた彼女でしょ」

「彼女じゃないから」

「そうなの? 素直じゃないわね~」

「意味が分からん」

「お給料たくさんあげないとね」

「そこは、任せるよ」

「まかないも出すからな~」

「ありがと、お父さん」


 ということで、俺は今陽彩が着替え終わるのを待っていた。

 一応、お店での制服がある。男性は(俺)紳士的なタキシード姿。女性は(陽彩と朝美)はどこかのお城に仕えていそうなメイド姿だった。キッチンに入っている蓮夜はコックの服装だった。こんな趣味をしているのは朝美だ。

 お店を開業した当時から変わらずに同じ服装でお店を営業しているらしい。


「お待たせ。どう、かな?」

「いい感じじゃないか……」


 メイド服に着替えた陽彩が更衣室から出てきた。

 似合いすぎてるなんてもんじゃねえぞ。メイド服姿の陽彩を直視することができなかった。ぱっくりと開いた胸元からはその豊満な胸がチラッと見えてるし、学校よりも短いスカートからは真っ白な綺麗な足が伸びていた。


「ほんとに、こんな姿で出なきゃダメなの?」

 

 陽彩がもじもじと恥ずかしそうにしていた。


「が、我慢してくれ。それが、うちの制服だから……ごめん」

「はぁ~。しょうがない。我慢する」

「悪いな。美味しいスイーツをちゃんとごちそうするから」

「約束だからね! めっちゃ美味しくないと許さないよ!」

「が、がんばります……」


 頑張ってくれてる陽彩のためにもめっちゃ美味しいスイーツを作って食べさせてやらないとな。


「ところで、翼もこんな服装が好きなの?」

「え……」

「どうなの? 好き?」


 陽彩がじりじりとメイド姿のまま近づいてくる。

 正直に白状すれば、陽彩のメイド服姿を見れて、嬉しいと思っている自分がいる。


「どうだろうな……」


 俺は陽彩から視線をずらして、ボソッと言った。


「そっか~。翼はこういう服が好きなのか~」

「そ、そんなこと言ってないだろ」

「反応で分かるよ~」

「うっ……」


 言葉を返すことができなかった。

 すぐ下に視線を移せば、陽彩の豊満な胸がすぐそこにある。

 俺は心臓の音が聞こえませんようにと祈るしかできなかった。


「二人とも、いちゃついてないで早く手伝ってよ~」

「いちゃついてないから!」

「は、はい。今行きます」


 朝美が俺たちを呼びに来た。

 ホールに出てみると、開店してまだ、数分しか経ってないのにお店の中は一杯だった。


 目まぐるしく変わるお客さんを必死で捌いているとあっという間にお昼になった。

 お店は間休憩として、十二時から十三時の間は閉店にしている。

 俺たちはイートインスペースのテーブル席に座って蓮夜がまかないが来るのを待っていた。  

 

「二人ともお疲れ様~。初日から凄いお客さんだったね」

「去年より増えてないか?」

「そうかも~。ほんとに陽彩ちゃんが来てくれて助かったわ」

「そんな。私はほとんど何もできなかったですから……」

 

 陽彩は見るからに落ち込んでいた。

 思った以上にお客さんの入りが多くて、陽彩はテンパっていて、俺や朝美がフォローしながら、お客さんを捌いていくという感じだった。それが陽彩にはかなり悔しかったらしい。


「陽彩ちゃんは今日が初めてだからね、しょうがないよ。少しづつ慣れていこうね」

「はい。頑張ります」

「まかないができたぞ~」


 蓮夜がまかないを運んできた。

 今日のまかないはエビのラザニアだった。


「うわぁ~。めっちゃいい匂いです」

「さあ、ご飯食べてお昼からも頑張ろう~」

「頑張ります!」


 こんなに忙しいとは思ってなかったので陽彩に悪いことしたかなと思っていたが、思ったより楽しそうにしていたので、俺は安心した。

 蓮夜のまかないを食べ終えて再びお店がオープンした。

 さすがは要領のいい陽彩。午後からは俺と朝美がフォローしなくてもしっかりとお客様の対応ができていた。

 まだ、少し表情が硬かったけど。



 

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