第7話

「ひーちゃん、どこ行ってたのー?」


 教室に戻ると雛形愛理ひながたあいりがスリッパをぱたぱた音をさせてと駆け寄ってきた。愛理はこのクラスのマスコット的存在だ。背が低く、愛くるしい笑顔が特徴だ。


「秘密〜」

「え〜。なにそれ〜。怪しいですな〜」

「愛理。あんまり相手のテリトリーに入っちゃダメよ。陽彩に嫌われるわよ」

「それはヤダ! ごめんね。ひーちゃん」


 愛理は両手を顔の前で合わせて謝った。その隣に立って愛理の頭をなでているのは、このクラスの学級委員長の有川七海ありかわななみ。七海はこのクラスのまとめ役。いつも冷静で大人っぽい雰囲気が特徴。


 この二人は私にとって親友に近い存在だった。出会ってまだ一ヶ月弱しか立ってないのに、毎日のように笑い合ったり、ふざけ合ったらしている。

 そんな二人には何でも話してきたけど、さすがにさっきの翼とのことは話せない。

 話したら絶対に根掘り葉掘り聞いてくる。


「ひーちゃん。どうしたの? ボーッとして」


 愛理が首をかしげて、きょとんとした目で私のことを見ていた。私は何でもないよと、猫をなでるみたいに愛理の頭を優しくなでた。


「あ! つーくんだー!」

「え!」


 愛理が教室に戻ってきた翼のもとに駆け寄って行った。

 私は思わず変な声を出してしまった。その様子を七海が怪しんでる。もしかして、バレたかな。七海は他人のことをよく観察してるから、ちょっとした変化にもすぐに気づいてしまう。


「そういうことね。まあ、頑張りなさい。応援するから」



 七海は私の肩をポンと叩いて、愛理の対応に困っていた翼の元へと向かった。

 やっぱりバレたか。まあ、でもバレたのが七海でよかった。これが、愛理だった。エールだけじゃ済まないところだった。

 私は自分の席に戻って三人の様子眺めていた。


 

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