第6話

 弁当を食べ終えて俺は陽彩と一緒に屋上で寝転がっていた。

 春のそよ風が体を通り抜けて気持ちがよかった。春の日差しもポカポカで温かい。日向ぼっこをするには最高の天気だった。


「こんな素敵な場所を独り占めしてたなんて、翼ずるい!」

「独り占めって人聞きが悪いな。誰も来ないだけだろ。ここが立ち入り禁止だから」

「じゃあ、私たち今いけないことしてるね。学校のルールを破ってるんだから」

「そうだな」


 俺は頭の後ろで手を組んで隣をチラッと見た。

 隣には学年一の美少女の陽彩が寝転がっている。横になっているとスタイルのよさが浮き彫りになっていた。豊満なバストにキュッと引き締まったウエストに形のいいヒップ。運動したりしてるのかもな。


「どうしたの?」

「神宮司さんって何か運動してるの?」

「いきなり何。もしかして、私に興味が湧いたとか?」


 陽彩はニヤニヤと笑っていた。

 そうかもしれないな。こんなに話した同級生はに久しぶりだったから少し陽彩に興味が湧いたのかもしれない。

 

「そうかもな……」

「マジ?」


 陽彩の顔がニヤニヤ顔のまま固まった。

 俺は気にせず話を進めた。

 

「で、何かしてるのか?」

「え、何もしてないよ」

「そうか」


 じゃあ、その体は天からの贈り物というわけか。


「そ、そういう翼は何か運動やってるの? 私と一緒で部活入ってないよね?」

「そんな時間はないからな。今はスイーツ作りで忙しい」

「そうなんだ。その割には翼って細身で筋肉質そう。足速かったし」

「筋肉質かどうかは分からないが、細身ではあるな」

「腕触ってもいい?」

「いいけど」


 特に断る理由もないので俺は承諾した。

 陽彩が少し、こっちに転がってきて、俺の腕をべたべたと触った。まるで、俺のことを品定めするみたいに。


「やっぱり、筋肉質だ」

「そうか?」

「うん!」

「まあ、腕は普段使ってるからな。自然と筋肉が付いたのかもしれないな」


 スイーツ作りは腕を使うのが主だ。子供のころからスイーツ作りをしてきたから、自然と筋肉がついていても不思議ではなかった。


「私のも触ってみる?」

「えっと……それはどう意味で?」

「翼、何か変なこと考えたでしょ! 二の腕だよ? 触っていいのは!」


 二の腕って確か……。俺は陽彩の胸元に視線を移した。

 やっぱり陽彩は天然なのかもしれない。それとも、分かって言っているのか。俺をからかって楽しんでいるのかもしれない。

 それなら、それで提案に乗るのもいいな。


「じゃあ、遠慮なく」

「どうぞ……」


 陽彩は少し頬を赤くして、恥ずかしそうに二の腕を差し出した。

 俺はその二の腕を服の上から優しく触った。ふにふにとした感触。服の上からで分かる柔らかさ。まるで、シフォンケーキみたいな感触だった。女性の二の腕はこんなに柔らかいものなのか。

 俺がしばらく触っていると、陽彩の顔をゆでだこのように赤くなていった。


「もう! 触りすぎ!」

「気持ちよくて、つい」

「こういうことは普通、恋人同士の人たちがやるんだからね」

「俺に触らせてよかったのか?」

「それは……。もう! 私、教室に戻るね」


 陽彩はゆでだこ状態のまま屋上から逃げるように去って行った。

 俺は、チャイムが鳴るまでもう少し屋上にいることにした。心臓がバクバクと音を鳴らしている。緊張した。まさか、本当に触らせてくれるとは、思ってもいなかった。

 心が落ち着くまで俺はその場から動けなかった。




 







 

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