プロローグ 憂鬱な日常
…大きくチャイムの音が鳴り響くと共に、
社会の教師がチョークを黒板に走らせる手を
ピタっと止め、チョークを置いてこちらに
ふり向く。それと同時に、
肌色一色の頭が日の光を反射した。私は
笑いをこらえたが、数名がクスクスと笑っている。この状況をもし作文で表すとする
ならば、つけ加える言葉は一つ。
まだ誰も
心中でそう考えていると、教台に広がった
教科書をまとめた教師が
「では、今日はここまでです。日直の
さん、号令お願いします」
…今日日直だった私の名前が呼ばれたので、
「起立。気をつけ。」と号令をかけた。
クラスメイト全員が私の声に合わせて
立ち上がる。それを確認し、
「ありがとうございました!」
と先ほどより大きな声で言うと、それに
「「ありがとうございました!」」
とクラスメイトたちが復唱した。
教師が私の教室を去ると、男子数名が立ち
上がって、端っこに固まり話を始めた。
それを見た女子も数名が立ち上がって、
私の机に集まり、話し始める。
「…んな訳ないけどね。」
私は所謂ぼっちと言うやつだった。
中学の今現在でぼっちは危ないだろうか。
誰からも話しかけられず、休憩時間にする
ことといえば黒板の内容を写すだけ。
教室が騒がしくなった今でも、ノートに
世界地図を書き写していた。
正直寂しい。入学式直後に、
「とっても楽しい3年間になりそう!」
と叫んでいた心は既に私から消え去って
いた。今では楽しさの欠片も感じなく
なってしまった。
世界地図を書き終えた私は、自由帳を机に
出して自分で書いている小説の続きを
頭に浮かべて、書き始めた。
夏休みまでに完成させようとコツコツ
書いていたもので、今日、夏休み二日前と
時間が迫ったところでようやくクライ
マックスの場面まで行った。
入学式一週間後、ぼっちが確定してから
書き続けた甲斐があったものだ。
行くとしてもあと1、2話ぐらいだろう。
完成したらどうするか。自分で読むのだ。
友達もいないし、やっと全話揃うのだ。
何を書いたのか自分で読み返しておきたい。
これまでの自分の思いを、
見返すかのように。
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