第41話 護衛依頼

 予想外に三ランク特進して、Cランクになった私たちは、手続きを済ませて二階から一階に降りて行きます。


「いやー。いきなりCランクとは、びっくりだな!」

「本当にね。流石、王都本部はやることが大胆だわ。ミマスでは、こうはいかないもの」


 私は一階の掲示板の前で足を止めます。


「何か気になることでもあった?」

「ミマスへの護衛依頼が多いなと思って――」


 多分、噂になっている、ミマスの冒険者ギルドのトラブルの影響でしょう。

 冒険者ギルドが機能していないと、肉類や薬草は不足することになります。

 王都から持って行っても儲かると考える商人は多いはずです。


「折角Cランクになったんだから、護衛依頼を受けてみるかい?」

「今なったばかりよ」


「ミマスのギルドのことが気になるんだろう。ついでに行ってみればいいじゃないか?」

「でも、今更、関係ないわ――」


「白金貨十枚用意できたんだし、この際、借金を返してしまったらどうだい?」

「でも、あのお金はマーサルの分でもあるのよ」

「それは気にしなくてもいいよ。どうせすぐ入ってくるし、とても使い切れそうにないからね」


 マーサルの言う通り、クーラーとかの多額な利益が、これからも入ってくることでしょう。


「本当にいいの? なら、甘えさせてもらおうかしら――」

「それじゃあ、護衛依頼をどれにしようか決めようか」


 私たちは、Cランク二人でも受けられるミマスへの護衛依頼を見繕って、依頼受付へ持って行きます。


「この依頼を受けたいのですが」

 私は、依頼票とギルドカードを受付に渡します。


「クゼン・ファミリアさんは、こちらでは初めてですよね?」

「はい」


「Cランクになったばかりなのね。上で渡された冊子は読みましたか?」

「はい、大丈夫です」

 パラパラとめくってみましたが、ミマスの物と然程変わらない物でした。


「それならいいわ。ミマスへの護衛依頼ですね。この依頼は至急案件ですが大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


「でしたら、この書類を持って依頼先のエドワード商店にいって、詳細の打ち合わせをしてきてください。エドワード商店の場所はわかりますか?」

「いえ、わかりません」


「でしたら、これが地図です。終わったら報告に戻ってきてくださいね」

「わかりました。行ってきます」


 私は書類と地図を受け取ると、マーサルと一緒にエドワード商店に向かいました。


 エドワード商店は、ギルドから歩いて十分のところにありました。


 店に入って依頼を受けたと話をすると、店の奥に通されました。


「Cランクパーティのグゼン・ファミリアです。護衛依頼を受けることになりました」

「エドワード商店のエドワードだ。随分と若いようだが、本当にCランクなのか?」

「こう見えても、十六歳です。Cランクにはなったばかりですが――」


「Cランクになったばかりなのか。大丈夫なのかい?」

「シルバーウルフも、ワイバーンも狩ったことがあります」


「ワイバーンを二人で狩ったのか?」

 エドワードさんは疑わし気に尋ねてきます。

「はい。まあ、今日のことですが」


「ワイバーンの討伐依頼が出てるなんて聞いてないぞ」

「討伐依頼でなく、薬草を採取していたら襲われたので倒しました」


「事前準備もなしに二人で倒したのか。それが本当なら大した実力だ」

「お褒めにいただき、ありがとうございます」


 エドワードさんは、暫く黙ってこちらの様子を観察しています。

「お疑いでしたら、ギルドで確認していただいて構いませんよ」

 信じてもらえないと話にならないので、マーサルがギルドに確認してみてはどうかとすすめます。その言葉で決心がついたようです。


「わかった。二人に任せるよ。護衛の内容は書類にある通り、ミマス行きの荷馬車の護衛だ。

 急で悪いが、明日の朝ここを出発したい。大丈夫か?」

「大丈夫ですが、随分と急ぎですね?」


「ミマスの冒険者ギルドの混乱がいつまで続くかわからないからな。終息する前に、稼げる時に稼がないと」

「そういうことですか――」


「それと、荷馬車いっぱいに荷物を積んで行くから、自分たちで馬を用意するか、こちらの馬車に乗るなら、乗るスペースを自分たちのストレージに荷物を入れて確保してもらいたい。それも大丈夫か?」

「ストレージには余裕がありますから、馬車に同乗させてください」

「わかった。ちなみに、どのくらい余裕がある?」


 さて、困りました。マーサルのアイテムボックスならいくらでも入ります。ですが、それを正直に話す訳にはいかないでしょう。どれくらいと言うのが適正でしょうか。


「荷馬車の半分くらいなら余裕で入ります」

「半分か……。料金を払うから、こちらの荷物をストレージに入るだけ入れてもらえないか」

「料金次第でしょうか――」

「わかった。では交渉しよう」


 その後、エドワードさんと詳細を詰めて、書類にサインをもらい、ギルドに戻りました。

 ギルドに戻ると、こちらでも書類を確認して、手続きが完了しました。

 明日から、初めての護衛依頼です。


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