第40話 ランクアップ

 ワイバーンを倒し、薬草採取から戻った私たちは、ギルドの素材買取窓口に薬草を出して、受付のお姉さんに渡します。


「貴重な薬草をこんなに沢山。品質も最高品質ですね。いつも通り、高く買い取らせていただきます。今計算しますから少しお待ちくださいね」

「これとは別に、今回、大物もあるんですが、どこに出しましょうか?」


「大物ですか?」

「ワイバーンです!」

「もしかして、丸ごとですか?」

「そうです、ワイバーン、丸ごと一羽です!」


「おやっさんー。クゼンがワイバーンをマルイチで持ってきましたー」

 受付のお姉さんが、奥に向かって大声をあげました。

「おう。いま行く!」


 出てきたのは、前回、魔獣を持ってきた時に対応してくれた男の人です。

「嬢ちゃん、今日はワイバーンか。ワイバーンの討伐依頼は出てなかったはずだが?」

 おやっさんと呼ばれた男の人は、呆れた顔で私を見ています。


「薬草を採取している最中に襲われました」

「なんだって! どこで出会った」

「切り立った崖の岩山付近です」

「ああ、例の岩山か。登っている最中に襲われなくてよかったな」

「そうですね――」

 まあ、登っている最中でも、空を飛べるからどうにかなったでしょうが。


「こっちに出してくれ」

 マーサルが言われた場所にワイバーンを出します。


「ほー。これは、両方の羽根が完全なままじゃないか。骨も折れてないし。これなら高値で買い取れるぞ。計算するから少し待っててくれ」


 言われた通り待っていると、一旦奥に引っ込んだおやっさんが戻って来ました。

「ほらよ。ワイバーンが金貨七枚、薬草が金貨二枚で、合計金貨九枚だ!

 ワイバーンの討伐依頼は出てなかったが、気持ち色をつけておいたから」

「ありがとうございます!」


「それと、ランクアップするから、二階の受付に行ってくれ」

「わかりました」


 私たちは金貨を受け取ると二階に向かいます。


「まだ一週間だが、もうランクアップするのか?」

「FからEへのランクアップの条件は、一人当たり金貨十枚稼ぐことなの。だから、パーティによっては一日でランクアップするところもあるわ」


「そんなの条件があるのか――」

「ちなみに、Dランクに上がるには金貨五十枚、Cランクに上がるには、一年間の期限内に白金貨一枚、つまり金貨百枚稼がなければいけないわ」


「Bランク以上はどうなんだい?」

「Bランク以上は金額的な条件はないわ。実績を総合的に判断して決めることになるわ」

「そうなんだ――」


「護衛依頼などは実質Cランク以上でないと受けられないから、早めにCランクまで上がりたいものね」

「金貨百枚だろ。この調子ならそれほどかからないんじゃないか?」

「そうね。この後も順調ならそれほどかからないわね」


 二階に着いた私たちは、窓口のお姉さんに声をかけます。


「すみません。グゼン・ファミリアですが。ランクアップしたらしのですが――」

「はい、グゼン・ファミリアさんですね。ランクアップしてますよ。手続きしますから、そこに座ってください」


 私たちは、勧められた椅子に座ります。


「じゃあ、ギルドカードをお預かりしますね」

 私たちはギルドカードをお姉さんに渡します。

 お姉さんは、カードの更新作業をしながら説明を始めます。


「今回、グゼン・ファミリアさんは、FランクからCランクにランクアップします」

「え。いきなりCランクですか! Eランクじゃないんですか?」

「三ランク特進でCランクですね」


「まだランクアップの条件を満たしてないと思うのですが?」

「金額ならまだですが、買取部門のガイ部長より推薦がありました」


 確かに金額が満たなくても、ギルド幹部の推薦があればランクアップできます。

 それにしても、三ランク特進は異常です。


「あの、ガイ部長というのは……」

「買取の窓口で何度かお話ししていると思いますが?」


 ああ、あの、「おやっさん」と呼ばれてた人か。


「本当によろしいのでしょうか?」

「ガイ部長の推薦なら全く問題ありません」

「そうですか。ではよろしくお願いします」


 後で、ガイ部長にお礼を言っておかなければなりませんね。


「それではこちらが新しいギルドカードになります」


 銅製のCランクのカードと、説明が書かれた小冊子を受け取ります。


「Cランクからは、ギルドを跨いだ活動が可能になります。

 それに伴い、今度のカードは、他のギルドでも実績が加算できるようになっています。他のギルドでお金の出し入れもできますから、有効に活用してくださいね」

 移動中に大金を持ち歩く必要がなくなるので便利なのですが、マーサルのアイテムボックスがあるにで、私たちには恩恵がありません。


「その他、Cランクになって変わったことは、その冊子に書いてありますので、後で目を通してください。何かご質問はございますか?」

「いえ」


「それでは以上になります。ご活躍を期待しております」

「ありがとうございました」


 私たちはお礼を言って窓口を立ちました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る