第37話 充電

 今日は一日、狩や採取をお休みとし、工房で用事を済ませたり、街で買い物をして、白銀亭に帰ってきました。

 特に、街の古道具屋では、変わった物を手に入れることができました。


「ただいま。ミーヤさん、お土産にいい物を手に入れて来ましたよ!」

「お帰りなさい。ミハルさん。それは何ですか?」

「ジャーン。ロボット掃除機です!!」


「ロボット?」

「自動的に床を掃除してくれる道具よ」


「へー。そんな道具があったのですか。それは助かります。おいくらですか?」

「あ、いいの、いいの。おまけにもらった物だから」


「これがおまけですか?」

「実は、まだちゃんと動くかわからないの――」


「箱に入ってますが、試作品ですか?」

「ちゃんとした製品なんだけど、動くかどうかがわからないの。動けば問題ないわ」


「それは、動けば問題ないでしょうけど?」

 ミーヤさんは首を傾げています。


「試作品じゃないから、暴走の心配はないってことさ」

 マーサルが補足して説明します。


「そういうことですか。なら、なぜ、動くかわからないのですか?」

「動力が特殊でね。魔力では動かないんだ」


「魔力ではないなら、何で動かすのですか?」

「電力なんだけど――。ミハルならなんとかできるかもしれないんだ」


「そうですか。ミハルさん。私の労働軽減のため頑張ってくださいね!」

「任せて。頑張ってみるわ」


 ということで、充電の実験です。


 まずはスマホから。数がありますからね。壊してしまっても問題ありません。


「電気は電子の流れだ」

「電子って、あの小さい粒よね?」


「そうだよ。温度を変えられたミハルなら、電子を移動させることもできるはずだ」

「そうね。生み出すのではなくて、移動させるのならできそうな気がするわ!」


「そうしたら、この充電端子のプラスのこちら側から、マイナスのこちらに電子を移動させてくれるか」

「プラスからマイナスに移動させるのね? やってみるわ」


 私は電気の粒が移動するイメージで魔力を込めます。

 すると、スマホの画面に充電中のマークが映し出されました。


「よし、充電できているようだぞ。二十パーセント、五十パーセント。こりゃ、どんな高速充電器より早いな。八十パーセント。よし、もうフル充電だ」


 うまく充電ができたようです。


「これでスマホが使えるのね――。やったー! と言いたいところだけど、ネットが使えなければ意味ないわね?」

「そうだな。でも、カメラは使えるし、手帳としも、目覚ましとしても使えるぞ。それに、この機種はトランシーバーのアプリが入ってるから、近距離なら通話もできるぞ」

「へー。通話もできるんだ」


 携帯できる時計なんて、かなりのお金持ちでないと持ってないし、カメラなんてこの国では見たこともない。これは、高く売れるのではないでしょうか?


 問題は、充電できるのが私以外いないということでしょう。


「ねえ、雷って電気でしょ。なら、それで充電できないかな?」

 雷魔法は使える人がそれなりにいます。


「雷だと電圧が高すぎて壊れちゃうだろうね。だけど、充電のための魔道具は作れるかもしれないから、今度、工房に行ったときに頼んでみよう」

「ついでにその時、このスマホも売ってこようよ。三十台もいらないでしょ!」


「そうだな。動くとなれば高く買ってもらえるだろうな――」

 マーサルも頭の中で金勘定を始めたようです。


「そういえば、これが出たというガラクタダンジョン。日本の電化製品ばかり出るのか?」

「どうだろう。私が聞いたところでは、使い古された物とか、壊れた物とか、捨てられたであろう物ばかり出るそうよ。必ずしも日本の物ではないと思うわ」


「そうか。日本の電化製品ばかり出るなら、大儲けできるかと思ったんだが――」

「日本の電化製品ばかりではないけど、それが出ることはあるんだから、一度、行ってみる?」


「そうだな。ダンジョンがどんなところか一度見てみたかったし、もう少しレベルが上がったら行ってみよう!」

「そうね。その方がいいわね。ガラクタ置き場はCランク以上が推奨だし」


 その後、スマホ三台とロボット掃除機三台に充電しました。


 ロボット掃除機三台とスマホも一台ミーヤさんに渡すと、スマホで動画を撮りながらロボット掃除機を追いかけていました。


 ミーヤさん、そんなことをしてないで、ちゃんと仕事をしてください!!


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