第35話 休日 武器屋

 昨日、魔獣を狩ってだいぶ稼いだので、今日は狩や採取はお休みとすることにしました。

 クーラーとかの進捗状況を確認するため、工房を訪ねたところ、販売権を譲った契約料として、白金貨十二枚を受け取ることになりました。


 こんな大金を持ったまま出かけるのは、危険ではないかと心配になりますが、マーサルのアイテムボックスに入れて仕舞えば、そこより安全な場所はありません。


 さて、工房の次に向かったのは武器屋です。


 そこは、少し前に、私のグレイブと防具を買った、ギルド直営店です。


 今回の目的はマーサルの剣です。

 今使っているものは、Bランクパーティのクラークから拝借したもので、物は悪くわないのですが、レベルアップしたマーサルには、役不足なようです。


「おや、この間の嬢ちゃん。どうした、それは合わなかったか?」

「いえ、今日は彼の剣を買いに来ました」

「剣か、剣ならあっちだぞ」


 店主に教えられて、剣が並べられている場所に向かいます。

 大小様々。剣といっても、大きさだけでなく、種類が色々あり、この中から選ぶのは一苦労しそうです。


「沢山あるけどどれにするの?」

「日本人としては刀が一番馴染みがあるけど、この国にあるのかな?」

「そうよね。場所が分からないほど遠い国からの物が入ってきているかしら?」

「似たような物ならありそうなきがするけど――」

 私たちは並べられている剣を順番に眺めていきます。


「あら、これ、聖剣ですってよ!」

「聖剣デュランダル。本物かな?」

「レプリカって書いてあるわよ」

「本当だ、流石に本物は売ってないか――」


「こっちにはエクスカリバーがあるわよ!レプリカだけど――」

「レプリカがあるってことは、どこかに本物があるのかな?」

「あるとすれば、勇者が持っているか、王宮の宝物庫か、ダンジョンの奥で台座に刺さっているあたりかな?」

「ありがちだね――」


「ちょっと、これ、村雨のレプリカよ!」

「村雨ってことは日本刀なのか?」


「それはダンジョンで見つかった刀のレプリカだな。本物は氷の魔剣らしいが、これはレプリカだからな。ただの剣だ。それでも切れ味はいいぞ。メンテナンスが大変だけどな」

 二人で騒ぎすぎていただろうか、いつのまにか店長が脇まで来ていて、村雨レプリカの説明をしてくれました。

 日本刀……、ダンジョンから出てくるんですね――。


 マーサルは村雨レプリカを手に取り、色々確かめています。


「これにします!」

「気に入ったか。それはよかった」


「よかったわね。日本刀があって」

「これは日本刀というのか?これと同じような槍があるんだが――」


「それって、薙刀?」

「興味があるなら見てみるか。それと同じダンジョンで見つかったんだ。しかも、それと違ってオリジナルだぞ!」


 折角なのでそれを見せてもらうことにしました。


「ほら、これだ。今日入ったばかりでな。値段もまだ付いてない品物だ」

 私は店長からそれを受け取ります。


「これ、神薙の薙刀……」

「名があるものなのか?」

「名というほどではないですが、物はそこそこいい物ですよ」


「そうなのか。物が特殊なのか、鑑定がうまくできないそうなんだ」

 ごめんなさい! 凄くいい物です。でも、それを言ったら値段が上がりますよね?


「まあ、確かに特殊ですからね。欲しがる人はいないかも――」

「でも、嬢ちゃんは欲しんだろ?」

「あれ。バレちゃいました!」


「バレバレだ。仕方がない。仕入れ価格で売ってやろう」

「本当ですか! ありがとうございます」

「剣も買ってくれることだしな。そっちは負けないぞ!」


「おっと。値引き交渉する前に、釘を刺しますかー」

「前回ので懲りてるからな!」

 店長が渋い顔をします。前回、値切りすぎたでしょうか。


 思いがけず神薙の薙刀を手に入れてしまいました。

 ですが、どうしてここにあるのでしょう?

 昨晩の夢は、これを暗示していたのでしょうか……。


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