第32話 買取窓口
私たちは、ギルドに着くとそのまま真っ直ぐに奥の素材の買取窓口に向かいます。
すでに何回か来ているので慣れたものです。
「今日は少し多いけど、ここでいいかしら?」
「おう、構わないぜ。どんどん出してくれ!」
窓口の男性は、マーサルがストレージ(本当はアイテムボックス)を使えるのを既に知っているので、構わず獲物を出していきます。
「先ずは、ホーンラビット十二羽ね!」
「今日は森に行ったのか? 森には強い魔獣もいるから気を付けろよ」
「そうね。今日も危ない思いをしたし、注意するわ」
最初にシルバーウルフと戦った時は肝を冷やしました。
初めて戦う相手には十分注意しなければいけません。
「次に、ファングボア四頭ね!」
「お、ファングボアも狩れたのか! それも四頭も。この切り口、そのグレイブか。嬢ちゃん見かけによらないな。まだ、Fランクだったよな。実力はCランクか?」
窓口の男性は私の武器を見て感心しています。
「そして、最後にシルバーウルフ三頭!!」
「シルバーウルフも狩ったのか!! こりゃ実力は本物だな。それにしても、よくこれだけの量が入るな? お前さんの魔力も飛び抜けてんな!」
まあ、確かにマーサルの魔力は飛び抜けてはいるが、それ、ストレージじゃなくて、アイテムボックスだから――。魔力関係ないチートだから――。
ふと、横から視線を感じて私がそちらに振り向くと、隣の窓口に並んでいた、どこかで見たことのある大男と目が合いました。
あれは、初めて薬草採取に出た時に絡んできた男です。
ただの、チンピラかと思っていましたが、ちゃんと冒険者としての仕事もしているようです。
「随分と調子が良さそうじゃないか?」
目があったのが気まずかったのか、男が顔を引き攣らせながらも話しかけてきます。
余程、なんちゃってファイヤボールが怖かったのでしょう。
「おかげさまで!」
私は笑顔で返します。男には悪魔の微笑みに見えているかもしれません。
「なんだ、モーブと知り合いか?」
窓口の男性が私たちのやりとりを見て心配そうに声をかけてきます。
あの男、モーブというのですね。初めて知りました。
「いえ、二、三度顔を合わせたことがあるだけです」
窓口の男性は、それだけで状況を察したようです。
「そうだな。嬢ちゃんの実力なら心配する必要はないな。ワッハッハ」
窓口の男が大笑いするので、私は注目を集めてしまいます。モーブはバツが悪そうで、こちらを向かず、ソッポを向いてしまいました。
結局この日、ホーンラビット十二羽で、銀貨九十六枚。ファングボア四頭で、金貨四枚。シルバーウルフ三頭で金貨四枚と銀貨五十枚。合計で、金貨九枚と銀貨四十六枚の稼ぎになりました。
この調子で毎日稼げれば、白金貨十枚でも、四ヶ月足らずで返してしまえます。
勿論、稼ぎはマーサルとも分けなければなりませんし、生活費も食費もかかります。
それを考えても、一年もあれば借金を返済できるでしょう。
もしかすると、私は冒険者に向いていたのでしょうか?
そんな自惚れも出てきてしまいます。
まあ、それもこれも、マーサルがいてくれたおかげです。勘違いしてはいけません。
マーサルのアイテムボックスと、レベルアップのチートがあればこそ、ここまで稼げるのです。
マーサルと出会えたからこそ、今こうしていられるのです!
それはまるで夢のようです。
夢……。
夢?
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