2021年1月30日 魔界東京

――照葉市 ニュータウン跡地紅葉――


▶クリスマス前の冬。コロナウイルスと、元来の密集地東京がタッグを組み、オリンピックへの愛憎を詰め込んだ現在の東京はとてもとても夜叉が立ち入れるような空間ではなかった。最近、それを利用して悪鬼適性のない人間が主導となり、悪鬼への可視化をするために亜人とタッグを組んでより混沌になろうとしていた。それを阻止するため、英雄は東京近郊に集められていた。集められて1週間が経とうとする頃、水着メイドアルトリアオルタのコスプレをしたマスターが管理しているニュータウン跡地紅葉に移動していた……


メイドオルタ「こんにちは、英雄の皆様。会えて光栄です」


梧桐 「だそうですよ、英雄先輩」

鏡花「だそうですよ、ここ一週間ずーーーーっとイチャイチャしてただけの秋斗先輩?」

莉乃「ずっと、遊んでいた先輩……」


秋斗 「なあ、俺の評価皆の中でそんな低いの?大丈夫?いい大人なのに終いにゃ泣くぞ?」


鏡花「ふふっ、いい大人なんですからちゃんとしてくださいね?」

梧桐「先輩の面の皮だけは評価してますよーちゃんと」

夏乃「大丈夫でしょ、ずっと前から緋奈と遊んでたのもみんな知ってるだろうし」


メイドオルタ「えーっと……。お客様がお見えですので、奥の席にお座りください」


――照葉市 ニュータウン跡地紅葉:個室席――


▶水着メイドオルタに奥のボックス席に案内されます。既に、冬なのに肩出し白いワンピースの女性が、本を読みつつ出迎えてくれます。女性は本を机に置くと優しく微笑みますね


花染「こんにちは英雄様方。紅葉幹部の花染と申します。今後ともお目知りおきを」


莉乃「こんにちは……こちらこそよろしくお願いします。葉月、です」


花染「今、本を読んでいたの。奇しソフィアっていうのよ。これが本当に脈絡のない展開で、先がわからなくて楽しいの。そうそう、これは知ってる?こっちはレプリカント臨摹というんだけど」

花染「思い出というセピア色の映写機に名前をつける……。残酷だけど美しい行いよね。風化しないで飲み込んでしまえばいいけど、歯車に咀嚼されてしまうもの」


秋斗 「萩原です。だからアルバムとかに閉じ込めるんじゃないですかね」

梧桐「はー幹部様ねぇ。名ばかり英雄にゃこうして会うのが憚られるもんすねー。梧桐っす、まぁ覚えなくていいんで」

夏乃「英雄ともなると幹部にも様付で呼んでもらえるんだねぇ。私は夏乃、初めまして」


花染「勿論勿論。物語の華はやはり魅力的な登場人物、そしてそのもの達の命の輝き……。その白夜灯に一夜でもお供できるとするのならば、紅葉の幹部である意味合いも少しはあると思うわ」

花染「ところで皆々様方。ときに、カンフーはお好きかしら?」

花染「私、飛び入りエキストラは得意じゃなくて。もしもドラゴンが燃えたりするのでしたら、私をクッパ城から助け出してもらえると」


莉乃「──えーと、私の手伝いをしてほしい……?」

梧桐「はーい先輩パスでー。おつかれっした~」

秋斗「というか見守ってるから守ってねって感じじゃね?まあ、まさかこのまま帰るだけとも思ってなかったんで、それは良いんですけども」


メイドオルタ「花染様、御用は済みましたか?申し訳ないのですが、こちらの用事もお願いできますか?英雄様方」


▶メイドオルタのマスターは、他のヒロインXXの格好をしている少年に、

『配膳しばらくお願いね』と言うと、

徐に「問おう。あなたがわたしのマスターか」。と呟きます。

すると、ゲーセンの奥、ガンダム動物園の奥の壁が開き、下に向かう階段が出てきます


メイドオルタ「やっぱりこの合言葉恥ずかしいですよね?そちらはどうだったんですか?」


梧桐「なんつーかまんまなんだなー。『ハーレム喫茶があるらしい』、でしたっけーハーレムパイセン?」

鏡花「懐かしい話ですね」

秋斗「ああそうね、戻る機会も少なすぎて忘れかけてたな」

梧桐「……はー。先輩、反応がつまんなくなること多くて悲しいっすよー俺は」


――照葉市 ニュータウン跡地紅葉:地下――


▶地下に転送機が置いてあります。また、大量の本棚がおいてありますね


メイドオルタ「申し訳ありません。いくつか、お聞きしたいことがあるのです。その……、私の妹のことなんですが」

メイドオルタ「私の妹は生きていれば今11歳くらいです。――ある時、家から帰ってきませんでした。紅葉で駄菓子を選んだ帰りのことなんです」

メイドオルタ「このような顔に、見覚えはございませんか……?」


▶メイドオルタのマスターはウィッグを外して、黒いセミロングの髪をたなびかせます。顔をまじまじと見ますが、残念ながら全員見覚えはありませんでした


鏡花「見覚えは……無いですね。すみません。……もし、何処かで見つけるような事があればご連絡します」

梧桐「水月が知らないんじゃ地元で知ってるわけねーなー。他んとこでも見た覚えはないけどー」


メイドオルタ「そうですか……。次になんですが……」


▶言いかけたその時、ヒロインXXの少年が飛び込むように入ってきます


少年「ボス!敵襲です!!悪鬼も店を中心に発生しています!!!」

メイドオルタ「わ、わかりました!」


▶少年の言う通り、悪鬼が発生しているようですね。店の入口から硝煙の臭いと銃火器の音、金属がぶつかる高い音が響いてきます


メイドオルタ「すいません……。戦力が現在、私と彼の2人だけでして。迎撃をお願いできますか?」


莉乃「……て、敵襲?!」

梧桐「はー?今かよ。まぁあの幹部様がなんとか……出来ねぇのかよ」

夏乃「まあまあ、直接拠点を叩いてくる度胸に免じて出迎えてあげようじゃないか」

鏡花「さくっと行きましょう!マルチ・マジック・デバイス起動!継承者コード・オン!」


▶紅葉の玄関の方を見ると、黒いマントに剣の、なろうアベンジャーズさながらの人間が40人規模で突入していますね。ステータスオープン!とそこらじゅうから叫んでいるのが聞こえます


黒マント「この場所は我らゲーム教が支配した!!死にたくなければ我らと奴隷の淫紋を結べ!!」


梧桐「あーめんどー……。まぁ頼れる前衛が何人もいるってのは気が楽になるけどさぁ」

鏡花「害為す魔剣、命絶つ霊剣、罪を断て『断罪剣』!『奥義・三連殺!』」

莉乃「おねがい、セシル! 鏡花ちゃんを、支援して!」

セシル「りょーかいりょーかい!ねんがんの アイスソードをてにいれたぞ!」


黒双剣「火炎ソード!!抵抗するなら建物ごと燃えるがいい!!」


▶燃え盛る刀剣を家具に斬りつけると、そのままお店が炎上し始めます


梧桐「何してくれたんだかあいつー……!ったくもー大層なご身分だよなホント。せんぱーい、道作るんでよろしくーってこと、でっ!」

鏡花「ああもう!魂をも凍てつかせる絶望の氷河!『起点延長・範囲拡大・貫通・三重詠唱』!『術式行使・アイスフォール』!」

莉乃「屋内でも、雨模様……」

セシル「ブロ解より溶けない氷を喰らえー!」


花染「憐れなカナリアを助けてはもらえませんか?毒で鳴けなくなる前に」


夏乃「カナリアっていうなら鳴けなくなるまで仕事してほしいもんだよ、守って逃がしてじゃただの雛鳥じゃん」

秋斗「数ならこっちも揃えられるぜ。ミニ秋斗くん、二人だけ花染さんについていてやってくれ」

鏡花「死なせませんよ!……命の雫降り注ぐ『癒しの慈雨』!」


花染「君がため 惜しからざりし 命さへ長くもがなと 思ひけるかな」


梧桐「反応しづらいっつーの。んで、後は」


▶ゲーム教と言われる人間をあっさりと大量にぶち転がすと、奥に淫紋をつけられた女性を盾にした男が入ってきます。よく見ると女性はアンドロイドのようですね


黒衣の男「アルカディアの力よ!我に!!」


▶腕輪を掲げると、ぶち転がされた人間の剣が大量に浮き上がり、剣だけがこちらに向けて襲いかかってきます。また、何故か鏡花とコスプレをしたマスターと少年、それにセシルが操られてしまいます


梧桐「あーはいはい、古典的な人質に商売上がったりな何でもあり、んでお前は何してんだよ水月」

莉乃 「……はっ! 鏡花ちゃん!?」

鏡花 「か、らだ、が……!?」


黒衣の男「異世界の魔神よ!我にチートの力よ!!!ゲームこそが全てのサブカルの源!ゲームこそが一番の力なのだ!!!」


秋斗「発展したもの全部無視して太古のなんかしら守ってるの、よく居るよなゲームに」


メイドオルタ「ぐ、ぐぐ……。お逃げください……!転送装置のパスは334です……!」

セシル「マスター……私をお戻しください。今はお役に立てません」

鏡花「ま、魔力が……勝手に……!に、逃げてください……!」


莉乃 「うん……セシルは戻って」


黒衣の男「ゲームの基盤は全部持ち帰れ!!」


▶男は倒れた黒マント達の腕に擦らせるように剣を突き刺し、無理やり意識を戻させた後基盤を袋に詰めさせていきます


梧桐 「ちっ、遊んでる暇ないんだけどー?さっさと杖でもぶん投げて下がれつっーの、刃物飛び交ってる中突っ込んでやれねーぞ」


鏡花「体が……言うことを……聞かないん……ですっ……!」


秋斗 「うーん、とりあえず装置の準備しとくか」

莉乃「どうにか、できない……?」


花染「奴隷契約しなければまだ望みはあるかと。そのためにもまず撤退し、北海道につなぎ木陰を呼び出すのが急務です」


鏡花「私は、大丈夫ですから、今は早く逃げてください……!」


梧桐 「……ったく。世話が焼けんのは俺だけで十分だってのに、めんどくせぇ……」

莉乃「────逃げる……しか、ない?やだ……、鏡花ちゃん……」

夏乃 「質で対抗するしかないってのにそれも持っていかれたんじゃ……全滅だけは避けないと」


▶夏乃が莉乃を引っ張るように地下に戻ります


――照葉市 ニュータウン跡地紅葉:地下――


▶地下に戻ると、転送装置が動いていますね。先に入ったメイドオルタの人がスイッチを入れたみたいです。槍で押したのか装置もボロボロで、壁にも線が入っていますね


メイドオルタ「妹を……どうか……」


▶メイドオルタのマスターは自分が先に出て扉を強制的に閉めます。槍でスタッフルームへの道を壊したのか、瓦礫と剣戟の音が聞こえますね


梧桐「名前も顔も知らないやつを託されてどうしろってんだよ……くそっ」

秋斗「くっそ……、すまん水月、先に行く」

夏乃「まいったね、今になってこんな負け戦やらされるとは……」

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