2020年10月6日 紅葉の裏方

――佐賀県 糸島市――


▶お昼時、女子大生の藺牟田由布いむた ゆうは、佐賀大学から逃げるように電車に乗ってたどり着きました。温泉で現実逃避をしに歩いていると、小さな女の子にぶつかります


藺牟田「ふー着いた着いた、さてさてお目当ての温泉はどこかなー………、わっ!ててて……。だ、大丈夫?ごめんね、ちょっと周りよく見てなかったかも……」


幼女「いったぁ……。おねーさん、ちゃんと前見て歩いてよね。前髪スカスカなんだからそれくらいしっかりしてよね」


藺牟田「むっ、ぶつかったのは悪かったけどそんなこと言われる筋合いはないわよー……」


幼女「まあいーけどね。月奈つきな、ちょーっとアイスが食べたい気分なんだけどなー」


藺牟田「アイスー……?仕方ないわね、高いのは勘弁してね?」


月奈「そう……。ダッツで許してあげる。こっちだよ」


藺牟田「なーんか薄々そんな感じはした……業務用とかはダメだからねー?」


▶幼女に手を引かれ、そのままどんどんと路地裏の細道に入っていきます


藺牟田「結構な路地裏だけど……、こんなところにコンビニあるの?ただの近道かな?」


▶気づくと、藺牟田は研究室のような場所に立っていました。後ろを見ても白い壁ですね


月奈「警戒心がないおねーさんだなあ。月奈でよかったね、美人局とか警戒しないの?」


藺牟田「え、あれ……?どこここ……。コンビニとかスーパー……なわけないよね……。ね、ねぇ、月奈ちゃん、ここは……?ほ、ホントにそんなことしてるわけ……、ないよね……?」


月奈「名前で呼んでいいなんていってないよね?おねーさんナマイキ~~~」


藺牟田 「う……。も、もう、からかわないで、アイス買ってあげないわよ……。というか本当にここどこなの?戻りたいのだけど……」


月奈「もう戻れないから。おねーさんが前見て歩かなかったのが悪いんだよ?」


▶近くの研究室の扉が開いて、剃りこみが深くタトゥーをしたマッチョが出てきます


藺牟田「えっ……それどういう……ひっ……!?」


マッチョ「おいおい。お客さんを毎回ビビらせて遊ぶのはやめろと言っただろ」

月奈「え~?いっつもタイミングよく出てくるほうが悪いんだよ。このおねーさんが今日のおもちゃね」


藺牟田「ひぃぃ……。あの、あの……ごめ、んなさ……、お金は、全部置いてくから……たすけて……」


マッチョ「やりすぎだ馬鹿。俺は椊田そねた。あっちのクソガキは七五三掛しめかけだ」

月奈「月奈つきなは月奈だから。そっちで呼ばないで」


椊田「突然呼び出したようですまないな。こいつは、適性のある人間を連れてくるプロなんだ」


藺牟田 「え……えっと、その……藺牟田いむた、です……。適正……?まさか……私、何も出来ません……!だから許して……」


椊田「おい、何を吹き込んだんだ……?ものすごく怯えられてるんだが」

月奈「言う事聞かないとおねーさんの尊厳とか貞操がなくなっちゃうかもねーって言っただけだよ?」

椊田「やらんやらん……。君、藺牟田さんだね?こっちに来てくれるかな?」


藺牟田 「は、はい……。行きますから……乱暴しないで……」


▶部屋に入ると、カプセルのようなものが大量に並んでいます。中には犬やうさぎなどが入っているようです。床には寝袋が2枚敷かれていますね


椊田「汚い部屋ですまないな。俺は研究職でな、仕事としてはそこの月奈と一緒に概念履面についての研究している」


藺牟田 「わ……ここは、いったい……。概念、履面……?」


月奈「鍵かけちゃった。もうおねーさんここから出れないね」

椊田「カードキーがないと開けられないのは本当だ。上の人と、俺しか持っていない。――パニックになって逃げられて迷子にでもなられるとそれこそ色々なくなってしまうからな」


藺牟田「ひぃぃ……やっぱりぃ……。私はただ温泉に入りたかっただけなのにぃ……たすけて……」


椊田「そもそもだが、ここの空間には選ばれた人間しか入ることができんのだ。疑問に思わなかったのか?路地裏から急にこんな場所になるわけがないだろう」


藺牟田「ぁ……たし、かに……。ふと気づいたら、ここに……」


椊田「紅葉はしってるか?うるさくて俺は好まんが、大体の場所にあるゲーセン喫茶だ。その紅葉の執行役員様がそこのガキだ」

月奈「ガキじゃなくてつーきーな!まったく、ほんとまったく……」


藺牟田「紅葉……?あー……色んなところに温泉入りにいくときに、結構見かけた、かも……」


椊田「結構どころじゃないチェーン店だがな。紅葉は裏で色々と疾しいことをやっている。俺たちはそれの後処理が仕事だ」

月奈「おねーさん、才能ありそうだったし体験実習してみない?とっても簡単だから」


藺牟田「裏で……疾しい……。うぅ……やっぱり……、やっぱりなの……?」


椊田「やっぱりとはなんだ。お前さんが思ってるようなものじゃないぞ。どうだ、一緒に働いてみないか?」


藺牟田「い、一応、聞いてみますけど……。どんなことを、する……させられるんですか……?」


月奈「ゴミ拾いだよ?集めて、捨てるだけ」


藺牟田「ほんとに、それだけ……?ただでは帰してくれなさそうだし……分かりました。ちょっとやってみます……」


椊田「こいつは一度言い出すと聞かないんだ。助かるよ」


▶椊田はそう言ってカードキーを差し扉を開けます。先と違って研究室が真っ赤になっています


▶藺牟田 情報分析

 失敗

▶血かな?とは思いましたが、確証は持てませんでした


藺牟田「うわ……なにこれ、真っ赤……。血……なわけ、ないよね……?」

月奈「放っておくとこんな感じで汚れちゃうから、お掃除するの」

藺牟田「うーん、深く考えずにささっと掃除したほうが良さげかな……」

椊田「そうだな。紅葉から定期的にこういうのが送られてくるんだ。それを掃除して、カプセルに放り込むのが俺たちの仕事ってことだ」


▶藺牟田 ハウスキーパー

 成功

▶赤い液体や黒いゴミを大量に拾って月奈に渡しました


藺牟田 「よっ……と……。うへぇ、すごい量だ……はい、どうぞ」

月奈「ありがと♡ あっ、ちょっと行ってくるね。ついてきちゃダメだからね!」


▶月奈が小走りで突き当たりの廊下に行ってしまいました


椊田「理屈はよくわからないが、そのゴミをカプセルに放り込むと鋼材や結晶に変化する。これを俺が加工して紅葉に売り払っているんだ」


藺牟田「もう易易とついていったりしませんよーだ……!へぇ、まさにリサイクル……なのかな?」

椊田「そうだな。エコでいいと思うぞ。月奈はそのうち戻ってくるから気にするな」


▶月奈が戻ってきますが、手には大量の金や茶色の髪の毛のようなものを持っています


藺牟田「わ、何か色々持ってますね……」

月奈「おじさん今日のやつ。なんか斧?っぽいのもあった」

椊田「この素材なぁ。茶色のやつはなんか禍禍しくなるんだよな。藺牟田、見たほうが早いだろ。カプセルに入れてみ」


▶茶色のやつを渡されます。かつらくらいの大きさですね


藺牟田「わわっ……なにこれ……、なんだこれ……?と、とりあえずカプセルに、ですね、よっと……」


▶藺牟田 自炊

 失敗

▶藺牟田が放り込むと、歪なオレンジの金属に変わっていきます


藺牟田 「うわぁ……なんだろう、金属っぽいものになってく……!」

椊田「ありがとう。初めてだしそんなものだ、これが報酬だよ」


▶パンッパンになった封筒を渡されます。


藺牟田「わ……あ、ありがとうございま……!?えっ、えっ……こ、こんなに……なんで……!?」


月奈「月奈、紅葉のえらいひとなんだよ?おねーさん、また一緒に遊んでくれそうだし、もらって」


藺牟田「あ、え、と、う、うん、じゃなくて、はい……。こわいから、3000円くらいは置いておきます……ダッツの業務用でもなんでも買って……」


椊田「よかったな。後で買いに行こうか。――出口はこの扉だ。元の場所に戻りたいって念じながら扉を開いてくれ」


藺牟田「は、はい……。えっと、その、お世話になりました……、でいいのかしら……?戻りたい、戻りたい……早く温泉入りたい……」

月奈「またね。ここ、おねーさんの家の玄関につなげておくから。またきてね……」


▶扉を開けると、糸島市の路地裏、その入口に立っていました。後ろを振り返っても加湿器くらいしかありません。


藺牟田「元の場所だわ……夢だったの……?――そうよ、夢……と思いたいのに……、この封筒の重さがそう思わさせてくれない……」


▶封筒を開けると、300万円がパンッパンに詰め込まれていますね


藺牟田 「うっわうわうわ……。ヤバいって……絶対ヤバいって……」


▶おばさんがヒソ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )ヒソしています


おばさん「さっき警察が来てたんだけど、女の子が何人も殺されたんだって。中村さんが言うにはみんな同じ顔って言ってたけど……」

おばさん「狐につままれたんじゃないのかねえ。あそこの中村さん、少しボケてきてるでしょ」

おばさん「警察もそんな死体もないって言ってたし……迷惑な話よねえ」


藺牟田「さ、さー……、とりあえず今日はもう帰……。いや、やっぱり温泉には入りたい……。そして綺麗さっぱり忘れ……は出来そうにないけど……とにかく今は癒やしがほしい……。でも流石ここじゃ……最寄りのスーパー銭湯で済ますか……」

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