2020年7月8日 再誕の巫女

――岩手県 雫石町 木陰研究所――


木陰「むーくんむーくん、コレ、見て見て!!マジヤバじゃない????」


▶木陰は宝石から人間の腕が出ているのをキラッキラした目で骸に見せてきます


骸「ユメ…… どこ あった? 拾った?」


木陰「コレね!!!!日本特有の気候を使って三精に五行放り込んでこうきゅーっってしてホワってしたら出来た!!」


骸「ユメ 流石。 天才 実験 実 結ぶ」


木陰「それでね、日本だと三精四季五行じゃん?紅葉が定義してる属性ってそっから突出したのを出してるだけなんだけど、北海道だと属性違うのよ!!」

木陰「日本じゃ星が足りないから、こうなんだけどカイヤナイトを使うとね」


▶宝石から人間の肩くらいまで出てきます


骸「どうして? 海外 だから?」


木陰「ここももともとアイヌだったんだけど、もともとの構成されている人の意思の種類が違うの」

木陰「この辺だと寒さに耐えるとか、自然を味方につけるとかが多いの。だから月に氷放り込んで、抽出すると、人間の意志の妖精が生まれるってこと!」


骸「なるほど 人間の 意思 だから 人型」


木陰「意思から生まれるような妖精は大体何も覚えてないんだけど、コレにね」


▶木陰は黒い物体を取り出します


骸「ユメ それは?」


木陰「これはね、負の感情の塊なの。いつか人体実験に使おうと思って回収してたんだけど、秋夜くんにも彩音ちゃんにもことりちゃんにも断られちゃったし、今使っちゃおうかなって」

骸 「……なるほど」


▶木陰は黒い物体を宝石に入れます。 すると、肩だけだったのが幼女くらいの大きさになって出てきますね


木陰「やっぱね。――意思に感情で指向性を与えてあげると、それなりにまともな妖精になるってわけ」


▶何もわかってなさそうな幼女を、そのままプレス機に放り込んで笑顔で潰します


木陰「まあこんな感じ。ある意味めっちゃ簡単に人体錬成出来るってことよ」

骸「……もちろん 与える 感情 個体 影響 ある。ってこと?」


▶骸は潰れて粉末になった妖精を見ながら聞きます


木陰「当然!!さっき入れたのは負の感情だったから十中八九羅刹ってこと。話も通じないし、現実に侵食する羅刹なんて嘘でも野放しに出来ないわ。サイレントヒル待ったなしね」

木陰「例えばむーくんのその毒、出身地に属性に毒、というより障気があったから使えるのよ。――黒死病の概念だけ持ってるってことなの。属性にさっき負の感情を放り込んだから、負の感情を無意識でばらまく悪意なき妖精が出来上がっちゃうの」

木陰「妖精はその属性は意図せず振り撒くものだからね」


骸「妖精 自然 そのもの」


▶扉が控えめにノックされます


??「失礼します!木陰博士はいらっしゃるでしょうか!!」


木陰「お客さんね。お水か何か、出してもらえる?」

骸「わかった カルピス あった」


結凪「はじめまして、伊良原博士の助手……?してます。戸田結凪って言います。種族は……人間……だったらいいなあ」

骸「ようこそ そこ 座って」


▶骸はカルピスをミネラルウォーターで3倍で割ったものを出して椅子を下げます


木陰「ふーん、へえ……。あいつ、それなりに無茶してるわね。むーくん聞いて聞いて!!!この子、人間なのにサキュバスとドリアードと化け狐と天狗と吸血鬼の要素入ってるよ!!!自意識保ってるだけの化け物だよこの子!!!!!」


結凪「化け……物……。あう……」

骸「すごい。人権 習った?」


木陰「せっかくだし、ついでに世界再生の世界樹の巫女要素も取っちゃう?」

結凪「なにそれ……!なんかかっこいい……!!もう1個増えても一緒だしやりますやります!!!」

木陰「勧めてる身だけど、この子、大丈夫なの……?モルモットになれすぎてない?」


骸「それで なにしに? 人体改造?」

結凪「あー、忘れてました。伊良原博士からこちらを見てもらうようにって」


▶結凪は書類を渡しますね。機密とだけ書かれています


木陰「なになに……?」

木陰「ふーん。むーくん、コレ見てよ。東京と神奈川で夜叉が6人死んじゃったんだけど、死因が溺死なんだって」


骸「どうして? 遠泳 してた?」


木陰「原因がわからないから、伊良原のやつが朱城って子の身体を勝手に解剖したらね、出てきたらしいのよ」

骸「…… なにが?」

木陰「鳥の羽と、石臼」


木陰「これは面白いわ。古代日本の価値観から見て鳥の羽と石臼っていうのは死の象徴なの。渡り鳥が海の向こうに消えて、自分で芽が出ないように磨り潰すからね」

木陰「古代日本にとって、日本の夜叉法則は違ってると見ていいわ。三精四季五行が今の日本を司ってる属性なんだけど、当時は三精死再誕の5属性なの」

木陰「鳥というのは死の訪れを示した後、生命の再誕を表す象徴なの。春になれば鳥は戻ってきて、生命の息吹を取り戻すからね」

木陰「これは、夜叉を何かしらの概念で殺した後、再誕を司るピースを人体に埋め込んで再生怪人にする、みたいなところかしら」

木陰「まあこういう迂遠なことをするのは皇でしょうね。冬泉ならサイボーグにしちゃうし、紅葉ならあの子みたいに死にかけたなら何が何でも今すぐ即戦力にしちゃうから」


結凪「なるほど。わかります。死にかける度色々増えてます」

骸 「確かに それで どうする?」


木陰「無視よ無視。原理がわかったならそれを逆に利用してやればいいのよ。さ、結凪ちゃんこっちへ」

結凪「あ、はい」


▶カプセルのようなものに案内し、結凪を入れます


木陰「要するに人間をやめたいんでしょ皇は。実際ここに人間をやめた丁度いい実験体がいる。――皇にバレたら、まず間違いなく生け贄にされて人体解剖ね」

木陰「だから、世界樹の巫女はもとから再誕の属性を持っているわ。世界樹なんて昔の昔からあるし、属性区分を当てはめるとするならここね。ってことは、死の要素も埋め込んであげれば解剖した瞬間に、解剖したやつだけ死ぬ即死トラップを仕込めるってこと。当然再誕するから死なないって寸法ね」

木陰「これも使いましょう」


▶プレス機からぐちゃぐちゃになった肉片と粉末を拾います


木陰「普通の人間だったら恐怖とか自意識の喪失とかで多分廃人コースだから死体で実験してたんだろうけど、この子なら大丈夫でしょ。他の構成要素が中和してくれるわ」

骸「経験 豊富」


▶妖精の羽根を少しもいだものと、肉片と粉末を入れ、カプセルで身体に注入していきます。結凪の顔が少し歪みますが、それだけですね


木陰「やっぱすごいわ。あなた、モルモットの才能があるわね」

骸「ユメ すごい 褒めてる。 キミ すごい」


▶注入が終わりカプセルが水のようなもので満たされ、また水が抜けた後、カプセルが開いてふらふらとしながら結凪が降りてきます


結凪「ちょっとつらいですけど、見た目とかなにか変化ありますか?」


木陰「そうね……むーくん、一発本気でこの子殴ってみて」

骸「わかった」


▶骸は腰を落として踏み込むと同時に、結凪のみぞおちに右拳を叩き込みます。風穴が開いていますが、それと同時に傷が塞いでいきます。殴った側である筈の骸の身体にも激痛が走ります


結凪「えっ、えっ……死、死んじゃう……!!あ、あれ……?」

骸「! ……! この 痛み……傷 ない。 これは?」


木陰「成功ね。これが再誕の力。ざっくりいうと老化以外じゃ死なないわ。老化じゃ死なないからこそ、当時の人間は巫女を神様と同一視したってこと。ついでに死も混ぜ込んだから、立ってるだけで返り討ちに出来るわよ」

骸「すごい」


結凪「えぇ……やだなぁ……。実験もっと怖くなる……」


木陰「ついでにこの宝石も伊良原に渡しておいてね。スターアースの子供みたいなものだから、一応打開策の実験に使えるわ」


結凪「あっはい……。あの、ありがとうございました!」


木陰「いい子ねえ……。伊良原はどうやってあんな便利なモルモット手に入れたんだろ?」

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