2020年2月12日 君が僕の光
――新潟県 寺泊町 古民家紅葉――
▶もみじと棗が栃木に行き、そのまま宇都宮に転勤してしまった為、桃風香は店を1人で切り盛りしています。ですが、客がほとんど来ないのでほとんど1人で珈琲を作って飲むを繰り返していますね
桃風香 「ふぅー……。うん、お掃除はこんなもんかな!」
▶そうしていると、半月ほどぶりくらいに客が入ってきます。妙齢のおじさんのようですね
桃風香「あ、いらっしゃいませー!」
???「ブレンドはあるかね?」
桃風香「はい、ございますよー!お好きな席へどうぞっ!」
???「ふふ、あのじゃじゃ馬の弟子にしてはまともだ……」
桃風香「?」
▶慣れた手付きで珈琲を淹れ、お客に出します
???「ありがとう。さて、北森くんだったかな?」
桃風香「え?ええと、はい。確かに名前は北森ですけど……」
伏菟野「私は伏菟野。そうだね……、七瀬の上司って言うとわかるかい?」
▶そう言いながら、おじさんはコートを脱ぎます。コートの下に金属の杖が、すごく威圧的に桃風香は感じます
桃風香「――師匠の上司!?」
伏菟野「驚かせてしまったかな。私は現場主義でね、できるだけ調査報告は自分で聞きたい性質なんだ」
桃風香「そうだったんですね……。ええと、今師匠は居ないんですけど、それでも大丈夫ですか?」
伏菟野「構わないよ。ゆっくり、自分の言葉で聞かせてくれ」
桃風香「はい。私と師匠は『神様を概念として取り込めるか』の調査として、まず佐渡へと行きました」
桃風香「それで片付けをしながら、私達は神様の残りを自分に取り込めるか試してみました」
桃風香「神様全部を取り込むことはできなかったんですけど、部分的に取り込んで強くなることはできました」
伏菟野「ほう……。やはり取り込むことそのものは出来るのか。副作用とかはあるかい?」
桃風香「よく、分からないんですけど……。生きてるって実感が薄くなった、みたいな……」
伏菟野「そうか……。ありがとう、やはり神を取り込むのは無理がありそうだ。なら香道は計画廃止にしよう。杖道の方面で進めてみることにするよ」
伏菟野「――ところで、北森くんの調査が今、役に立っているのは知っているかね?」
桃風香「えっと、最近はずっとお店の掃除とかで忙しくて……」
伏菟野「そうか……。なら、君にというよりこの店にプレゼントだ」
▶伏菟野は金属の杖を空中に放り投げ、開いた空間の裂け目から何か機械のような台座のようなものが出てきます。かなり大きいですね
桃風香「うわっ……すっごく大きい……」
伏菟野「聞いたところによると、これはどこでもドアだ。これに入ると指定した場所に一瞬で移動できる。原理は私には難しくてわからないが、朱鷺森に直結しているよ」
桃風香「朱鷺森……」
▶パッと顔が明るくなりますが、すぐ俯いてしまいます
伏菟野「君の友人たちも宇都宮から一時的に休暇を取って戻ってきているはずだ。会いに行ってあげるといい。店番なら私がしよう。――その代わり、組み立てはお願いできるかな?」
桃風香「……えっと、じゃあ、そうします!」
▶身支度をして、組み立てを手伝いました
――朱鷺森市 美術館併設喫茶店:紅葉――
▶鼻歌を歌いながら夏水が皿洗いしていますね
夏水「最近は暇でいい。面倒な奴らはみんな英雄様になって出張したし、知り合いはVtuberでてんてこまいだし、今、唯一いるオカルトでなにもない所でニコニコ1人で会話してる真崎くんもいないと来た。久々に羽根伸ばせるわー」
灯風「やっほ^^」
夏水「うわ……」
▶灯風が店に入ってきます。夏水は見るからに嫌そうな顔になりますね
灯風「うわとはなんだうわとは。推しに会うために何人撒いてきたと思ってんだ夏水ちゃんねーよー。ここの紅葉ではコーヒーの一つでも出ないんですかねえ」
夏水「いや聞きましたよ?あの時連れてた綺麗な人だけじゃなくて今4人もたらしこんでるらしいですね?……セクハラされたって、嫁さんに連絡いれますよ?」
灯風「おっとそれは勘弁してくれ……。噂のナマこのはちゃんに会いに来ただけ。人畜無害。オーケー?」
▶夏水は無言でスマホに打ち込みます
夏水「咲百合さんとラウラさんに連絡入れておきましたからね。――コーヒーです。もう少しで来ると思いますよ」
灯風「ああ……さらば俺の有給。さらば俺の平穏な日々……」
▶カランと音が鳴って、このはと幽雅が戻ってきますね
このは「戻りました~。あれ、今日何かありましたっけ?」
幽雅「ただいま戻りました。あれ、鷲羽さんじゃないですか。紅葉の方はいいんですか?」
夏水「さあ?まさか本当に生このはちゃん見るためだけに来たんじゃないんですよね?」
灯風「そらそうよ。既に一度会ったことあるし方便に決まってるだろ……。あっこないだのうちの真帆とのコラボありがとうございました。あいつのキャラわかって対応してもらえたようで感謝してます。――あいつもロリコンなんで1日楽しく過ごせたと思います」
このは「いえ~、こちらこそありがとうございました。……あの、本当にあれでよかったんですか?」
灯風「あいつはボロ泣きして凹んで死にたい……、って言ってからが一番かわいいんで。適度にいじってたまに無視してあげてください。泣いたら構うくらいでいいです」
幽雅「わかりました。次からそのようにしますね」
夏水「あっ……(察し)」
灯風「時候の挨拶はこれくらいにして、伏菟野さんから出待ちしてやれって電話来たんですよ。怜ちゃんあれはどこ?」
夏水「怜ちゃんはやめてください……。あの量子ワープなんとかは裏の物置に置いてありますよ。使うんですか?」
灯風「や、そのうち来るでしょ……。ミルクティー淹れといてくれ」
▶物置の方で、「うわぁ!」という声と一緒に、物がどたどたと崩れ落ちる音が聞こえてきますね
夏水「あの声は……!おーい大丈夫?」
桃風香「げほっげほっ!何でこんな埃が……」
▶物置から這いずるように出てきます
このは 「桃風香ちゃん!?どうしてここに……」
幽雅「北森さん……!お久しぶりですね」
桃風香「あ、このはちゃん、ゆーがくん……。えへへ、来ちゃった……」
灯風「あー君がもみじさんの娘さんね。えっなんかまともそうじゃない……?え、実は1回死んでるとか?」
夏水「んなわけないでしょ……。この失礼なのがもみじさんの一番弟子の鷲羽さんだよ」
桃風香「あ、ええと……北森桃風香って言います!」
▶頭を下げると、灯風は信じられないものを見た目をしますね
灯風「すまん……。こういうなんか普通にいい子って曜灯ちゃん以来で……、いやごめん」
このは「元気そうで何よりです~」
桃風香「うん!このはちゃんも元気そうで良かった!」
▶抱き合っているのを幽雅が窘めます
幽雅「えーと、紅葉の戦力分析?をするんですよね。僕たちは収益を一番あげてるから代表ってことで、ですよね?」
灯風「その前にえっと桃風香ちゃん。調査の結果、そこのお友達に見せてあげな」
桃風香「はい!……ドンッ!」
▶水鉄砲を空中に向かって射つと、水が落ちてきません。水の塊が空中で大きさを変えたり分裂したりしながら自由自在に飛び回っていますね
このは「わぁ~……!!凄い、これは負けてられないです」
幽雅「凄いですね。いつも北森さんは僕の一歩先を行って見えなくなりますね……僕も――っ!?、もっと頑張らないと」
桃風香 「えへへ……」
▶桃風香は顔を赤くして、少し複雑そうな顔をします。それを見た灯風がやりにくそうに話し始めますね
灯風「こんなガキばっかに聞かせる話でもないんだがな。――……18年から19年末にかけて各所でクローンの精製が見つかった。総じて現状の敵勢力、冬泉か皇、または別の勢力かなどは一切不明。どれも10歳から18歳の女の子で、主な利用は臓器売買、売春、拷問といったところだ」
桃風香「臓器売買、売春、拷問……?」
灯風「それに対抗してかどうかは知らんが、冬泉は凍結していたアンドロイド製造を復活。現在の製造は20体程。そのうち4体は俺が所有している。紅葉は伊良原のカスが妖怪や神、特定の思想を既製品の普通のドールに取り込んで概念移植し、結凪と呼ばれる少女を素体にすることで、タオシリーズのアンドロイドを製造。3体が脱走するも2体は解体済みだ」
このは 「逃げられたんですか……」
灯風「らしい。現在は主に冬泉と皇による各所でアンドロイドとクローンの戦争が起こっている。主な発生地は静岡、鹿児島、佐賀、栃木、福島といったところだ。静岡、栃木、佐賀は優勢。他は潰滅だな」
灯風「Vtuber班は収益や概念の固定化の為に前述の場所に加え、東京、香川、滋賀への渡航を禁止するとのボスの意向だ。君らは今後岡山で隠居してもらうことになる。――うちの真帆とかの他のVtuber班もそうだが、桃風香ちゃんもだ」
幽雅「わかりました」
このは「隠居……ですか?」
桃風香 「あ、あれ?けど新潟の紅葉は……?」
夏水「ああ、民間のレジスタンスが接収するんだって」
桃風香「なるほど!」
灯風「Vtuber班の知名度を上げ、戦力の底上げをする計画は予想以上に順調に進んでいるらしい。二次創作で君たちの力を引用して召喚できるのが魅力なんだと。桃風香ちゃんのその神の力はカスの調査結果、妖怪の身体に毒になるのがわかった。俺の天使に会って、仕送りのついでに解毒してもらってくれ」
桃風香「は、はい。……このはちゃん、すっごく頑張ってるんだね!」
このは「手伝ってくれる周りのみんなの力があってこそだから、そんな……」
幽雅「また北森さんと一緒にいれるんですね。また、光を見ることが出来るんですね」
▶幽雅は桃風香に抱きつき、頭を撫でます
桃風香「ふぇ……?ゆ、ゆーが君……?」
幽雅「ヒナさんが、大事にしたい人は抱きついてでも離さないほうがいいって言ってたので。それに、北森さんは頭を撫でられるの、好きですよね」
桃風香 「えと、ボク、2人が……。このはちゃんと、ゆーがくんが……ボクは、だから」
桃風香「うぅ……。ゆーが、くん……」
▶顔を見られないように、腕に隠れるように俯きます
幽雅「これからはまた一緒にいられますよ。僕の光でいてくださいね」
灯風「やべえよやべえよ……。噂には聞いてたけどマジじゃん……。俺みたいに打算とかないやつじゃん……、やべえよやべえよ……」
夏水「久々に見た。女の敵だわやっぱ」
桃風香 「ごめん……ごめんね……」
幽雅「――――――っっっ!?光でいてくれて嬉しいです」
▶幽雅は急に飛び退くように桃風香から離れます。少し息が上がっているようですね
桃風香「だ、大丈夫?ゆーがくん……」
幽雅「僕は、平気、ですから……。心配してくれて、ありがとうございます」
灯風「……まあ、女の子に5分以上くっつけばそうなるな。うんうん。一応岡山の知り合いのお屋敷に泊まってもらうことになってる。Vtuberとして桃風香ちゃんも参加したいならしてくれていいとのことらしいぞ。まあこのはちゃんもだけど10年老けてたらな、俺もな」
夏水「大人として、色々どうなんだそれは……」
このは「桃風香ちゃんもやってみますか?そんなに難しいことじゃないですよ」
桃風香「うん……ボクも、やってみたいな!」
灯風「じゃ、怜ちゃん。俺、こいつらを曜灯ちゃんとこ送ってくから。車の送迎も仕事のうちに入っててな……。こっから岡山まで何時間かかると思ってんだって感じですわ」
夏水「怜ちゃんはやめてください……。報告の方は幹部連中に回しておきますね。――栃木が、宇都宮がまだ無事で良かったです」
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