2018年12月15日 雪の精霊

――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


▶ダルマストーブを灯し、青葉がはぁと白い息を吐きます


青葉「ということで、この時期は人も閑散としてていいですなぁ。そこそこ広い部室が更に広い」


莉乃「いいですね……」


青葉「はぁ……。莉乃ちゃんしかいないってのも隔り世って感じよねぇ……、空も雪降ってるし……」

青葉「――雪?」

青葉「…………莉乃ちゃん?」


莉乃「わたしじゃ、ないです」


▶ふるふると小さく首を振るよ


青葉「えぇ……。でも、雪降らせれるのって莉乃ちゃんと成仏した野郎だけでしょ?ちょっと外行きましょうか」


莉乃「せっかくの、暖かい空間……」


――雪城市 雪城高校:グラウンド――


▶グラウンドに出ると、黒魔術部が儀式をくるくるしています


青葉「やっぱりしんどさとかないわね……そっちもない?」


莉乃「私は特に……」

莉乃「皆さんは……また、何をしているんです……?」


黒魔術「好天の儀式よ。こんなに寒いと日課のFGOもできないわ」


青葉「取り敢えず太陽出してくれる?多分いけるはず」


莉乃「はい。終わらぬ儀式に終わりを……」


▶莉乃が祈りますが、雪はずっと降ったままですね


青葉「……サボった?」


莉乃「いや、詠唱しましたけど……」


青葉「そっか……、おかしい。莉乃ちゃんほどのド有能が術トチるわけないしね」


莉乃「私のお祈りよりも上位の何か、ですか……?」


青葉「まあ……、現実的にそういうことできるのって精霊かなにかよね……。――精霊?」


莉乃「精霊……?氷の精霊……」


青葉「寒い時期にあそこ行くのは癪だけど、会いに行きましょうか……。日盛山に行くわよ」


莉乃「はぁ……――――はい……」


――日陽山:洞窟入り口――


▶登り直して洞窟の入り口に立ちましたが、結界が貼り直され、再封印がされていますね。入ることはできそうにありません


青葉「私は悪だからね……こういうのを用意してたのよ」 


▶入り口の左側の土壁を押すと、ガラガラとからくり屋敷のように壁ごと回ります


青葉「これで再封印されてても侵入できるってわけ」


莉乃「何でもあり、ですね……」


青葉「これで進むわよ。もっかいあの洞窟進むのは気が重いけどねえ」


莉乃「先生以外に、私一人ってのが心さみしいです……」


――青暗寺:洞窟――


▶前に来たときよりかなりガタガタに崩れており、氷のつららなども随所に見られます。当然、暗いですが青葉が人差し指で紋章を書き天使の輪のようなものを自分と莉乃の上に展開します


青葉「まあ暗いわよね。ということで灯りをほいっと」


莉乃 「先生、頼りになりますね……」


青葉「まあ場数がね?」

青葉「壁伝いでいいでしょう。崩れてても問題ないわ」


――青暗寺:大広間――


▶しばらく進むと、開けた場所に出るよ。地面に氷が張っていて、かなり滑りますね


莉乃「足場が以前よりも相当悪いです……」


青葉「おっと。こけないようにね。――ほいっとな」


莉乃「ありがとうございます……」


▶莉乃 風向きで判定

 成功

▶どうやら黒き手はもういないようだよ。つららの下に黒い粒子が見えますね


青葉「おかしいわね……。私、ここ討伐してないんだけど」


莉乃「以前は、岩か何かでふさいだんでしたね……」

青葉「そうよ。念のために生徒会にも連絡しておきましょうか」 


▶青葉は紋章を描いた後、紙で鳩を形作って飛ばします。鳩は外に向かって飛んでいきました


莉乃「なにその便利でかわいい伝書鳩……」


青葉「これでも本業は美術方面なのよ。――ほら、武器もハサミでしょ?」


莉乃「ハサミってそういうことでしたか……。猟奇的なものじゃなくて安心しました」


青葉「人のことをなんだと……まあいいわ」


――青暗寺:広間――


▶氷が洞窟の全面に貼られており、更に温度が下がってきています。凍える程ですね


青葉「うっわさっむ……。ここまで氷あった?」


莉乃「氷はなかったような……動物がいた跡が見つかったと……」


▶莉乃 空間把握で判定

 失敗

▶青葉 空間把握で判定

 成功

▶莉乃が周りを見渡すのと同時に、青葉が指差します。洞窟の片隅に、カチコチに凍らされたグリードワームが転がっています。既に死んでいるようですね


青葉「あれ……?これ、ミミズね」

莉乃(まだまだ精進しないと……)


莉乃「ミミズ……?あれ、前は動物だったような……?」


青葉「こんなモグラもミミズも変わんないわ。休憩もできないから」


▶莉乃達の眼の前に魔法陣が形作られていきます。そして、ぴょんっと少女が出てきますね


莉乃「ほあ」


鷲見「お呼びでしょうかーってくっら!さっむ!」


莉乃「援軍……!」


青葉「ご苦労。他の子たちは?」


鷲見「先輩たちは受験という名の遠征。大郷のアホは日光浴に沖縄。戸田は最近見てないから知らん」


青葉「うーん……、壁がいない……」


莉乃「私は豆腐ですから……」


鷲見「そっちよりはマシよマシ。それより来年どうすんのよミステリ部。火力ないじゃん」

青葉「うちは新入りがいるし中学生もいるから私がいなくても大丈夫よ。莉乃ちゃんでもそのへんの雑魚は飛ばせるわ。というより寒いからとっとと行きましょうか」


莉乃「さむいです……」


――青暗寺:歪の迷路――


▶洞窟の先に進むための通路はすべて氷で固められており、道もかなり広くなっています。戦闘の痕跡が調べなくてもわかるほどですね


青葉「生徒会ってここ入った?」


鷲見「いえ、常に人手不足なので……。おかしいですね」


莉乃「前回はここ、迷路でだいぶ大変だったのに……」


青葉「一応見て回りましょうか」


莉乃「はい……」


▶莉乃 闇目で判定

 成功

▶壁際に口がだらりと開いてる死体を見つけます。ジャイアントケイブアントリオンが壁端で死んでいるようですね


莉乃「こんなのが……?前のものとは違うんでしょうか……」


青葉「なんかあったのは間違いなさそうね……。とっとと聞いてみるのが一番そうだわ」


鷲見「先輩達いないのに面倒事はいやですねえ……、ミステリ部とセットにしても前いませんよ」


青葉「不穏よねえ。進みますか」


――青暗寺:地下湖――


▶湖全体に氷が貼っているようです。水に濡れる心配はないですが、かなり滑りますね


青葉「地下湖が凍ってる……?」


莉乃「浸かるほどの水が凍っているのが怖いです……」


鷲見「ここって確かかなりびしょ濡れになるんでしたよね?やだなぁ……」


莉乃「サメが来ないならいいです……」


▶莉乃 忍び足で判定

 成功[意地]

▶生物の気配がありません。よく見ると氷の下がサメの死体だらけですね


莉乃「サメは、いなかったです……」


青葉「チェーンソー持ってきたんだけどなぁ」


鷲見「チェーンソー……?サメ……?」


莉乃「映画の如く、ここにうようよと……」

鷲見「なにそれこわい」


――青暗寺:最深部――


▶洞窟の最深部に辿り着きました。かつて神と出会った崖の方には雪が降っているのが見えます。洞窟の中の氷は幻惑的で、この間よりも更に美しく見えます。ふわりふわりと、折り紙のように錯覚で見にくいですが氷の精霊が姿を見せます。かつてと違い敵意はなさそうですね。莉乃達の周りをくるくると飛び回っています


莉乃「ここは……。ああ、そういえば……」


青葉「暴走でもしてるもんだと思ったんだけど……、ご健勝のようで」


氷の精霊「…………!……………………!!!」


青葉「なんか訴えてるけど……、鷲見ちゃんわかる?」


鷲見「精霊語がわからんのなら人間の体にすればいいんですよ。器よ見よ!」


▶鷲見は魔法陣を多角的に展開し、虫あみのように魔法の線を妖精に当て、女の子の姿に塗り替えていきます


青葉「いや無理でしょ……。紅葉学術式のフェイクは他人に使うのは難しいって、できんのかい!」


鷲見「天才ですから。鈴倉とは違うんですよ。ま、妖精側の人間態の認知みたいなものを促してるだけですけど」


莉乃「なんという……」


氷の精霊「……あ!……………………!!!!!!」


莉乃 「え、ええぇっと……」

鷲見「人間っぽくしただけじゃダメみたいね……、なんつってるかわかってねえわ。翻訳はまかせた」


▶莉乃 日本語で判定

 成功


氷の精霊「~~~~~~~~~~~~~、あーこっち?こっちの言葉しゃべるの久しぶりなんだけど、わかる? ~~~~~~~~ 意味通じてる?もしかしてこの言語じゃダメ?」


▶かなり古めの日本語で喋っているのが辛うじて伝わります


莉乃「まだ、わかります! 意味も通じてます~」


▶しばらく見ていると、精霊の姿がどんどん女子高生くらいの見た目で固まっていきます。褐色で透けるような青い髪。目つきは鋭く冷たいですが、敵意は感じません。


氷の精霊「うーん……、あっ!もしかして時代古い?最近日本語アプデしてないしなぁ……」


莉乃「十分だと思います……」


氷の精霊「ちょっとまってね……」


鷲見「で、このロリはなんて?」

莉乃「ちょっとまってね、といわれました……」


青葉「えぇ……フランク」


氷の精霊「はいおっけー。マジおっけーよ。東雲っち逝ってからついついサボリ気味にしてアプデしてこなかったのがダメだとは思わんかったね。言語の壁って怖いわ。人間の進歩もね」


▶氷の精霊はしばらく考え込んだ後、物凄くフランクに話し始めます


青葉「フランク~~~」


莉乃「なんという……」

鷲見「で、あの入り口あたりのやつはあんたがやったの?」


氷の精霊「違うよ~。東雲っち逝ってからマジやる気でなくって。もうそりゃ初恋の人に身を捧げてたレベルの奉仕っぷりしてたから。でで、悲しすぎてふて寝してたわけ。仕事はしたよ?バイバイの日に大雪ね?あれやってからもうグッスリよグッスリ」


青葉「えぇ……。誰かわからないの」


莉乃「なんというか、えーと……。えぇ……」


氷の精霊「まあでもいいけどね。――こうやって、ここに来たってことは私と契約しに来たんでしょ?誰?」


青葉「私は魔法はちょっと……」

鷲見「ちょっとカツカツで……」


氷の精霊「じゃあそこのちんまいのね。契約の方法は知ってる?」


莉乃「いえ、……初めてです」


氷の精霊「そっか。昔は武力でお互い黙らせるのが主流だったんだけど、民主主義?ってやつのせいで野蛮なことはしないって世界樹パイセンが決めたらしくてね。なんか最近だと耐えるだけらしいよ?」


莉乃「あれ?――え?」

莉乃「すごーく雲行き怪しくないですか……先生……?」


青葉「がんばって♪」


莉乃 「やっぱりそういうと思ってましたー!!」


氷の精霊「じゃあそっちの2人は邪魔しないでね。私の攻撃に1分耐えればおーけー。……本気出すから死んでも知らないよ?」


青葉「がんばって~」

鷲見「おおさむさむ」


莉乃「どうぞ、耐えきります……!」


氷の精霊「じゃ、遠慮しないから、死なないでよ!」



▶氷の精霊 アブソリュート・プリズン(氷魔法7d9毒4d8。毒無効時14d18)

 38ダメージ[窓の板]

[毒:22ダメージ]



氷の精霊「あーやっぱあの時の。やっぱ小手調べ程度じゃダメかぁ」



▶氷の精霊 インブレイスエンド(氷魔法11d8毒8d6。毒無効時22d16)

瞬氷殺(氷物理必中11d9)

アブソリュート・プリズン

 47ダメージ 73ダメージ 83ダメージ

[薄い本、厚い薄い本、スライド式携帯電話、オンリーイベントカタログ、例大祭カタログ、分厚い薄い本、コンプエース]

[毒:21ダメージ、31ダメージ、19ダメージ]



氷の精霊「まだまだいける?生きてる?死んでないよね?」


莉乃「いけます」



▶氷の精霊 インブレイスエンド

 フリーズランサー(氷自然反応。17d9×5)

 45ダメージ 99ダメージ 96ダメージ 77ダメージ 88ダメージ 94ダメージ

[例大祭カタログ、コミケカタログ3個、林檎の板2個、分厚い薄い本、ストレート式携帯電話3個、田舎間畳2個、WS2個、コンプエース2個]

[毒:24ダメージ、31ダメージ、17ダメージ、28ダメージ]

[もこたんの羽]



莉乃 「た、たえきった……よね!!」


氷の精霊「フリーズランサーも陵がれちゃうかぁ。最後の特大……受けきってよね」


莉乃「うそ……」



▶氷の精霊 凍刃穿爆隆(氷自然反応。22d18)

 163ダメージ

[コンプエース、ドレミーのひつじ]



莉乃「もう、もう無理……。でも耐えきった……!!」


氷の精霊「はーもうマジ無理。おみそれいたしました。契約のセリフは知ってる?」


莉乃「はぁ……はぁ……。ごめんなさい……よくわからないです……」


青葉「『自然の姿を我の前に示せ。盟約のもと、我に従い給え。私を主としよ』だったかな。私ってとこに入るのは自分の名前ね」


莉乃「ふぅ……はぁ……。ありがとうございます……はい……」


氷の精霊「よく知ってるね!精霊使いでもいたの?」


青葉「ちょっと昔の知り合いがね」


鷲見「はえーさくらみたいなことするんですね」


青葉「我が名はクラース……」


鷲見「?」

莉乃「?? ……と、とにかく!それを唱えればいいんですよね」


青葉「伝わらない……これがカルチャーギャップ……」


莉乃「では……『自然の姿を我の前に示せ。盟約のもと、我に従い給え。葉月莉乃を主としよ』!」

莉乃 「こ、これで……、よかったんですかね……」


▶何も起きませんでしたが、氷の精霊は跪き莉乃の周りの地面を氷漬けにしてしまいます


氷の精霊「御意……」


青葉「で、結局なんで雪降ってるかわかる?」


氷の精霊「降ってますね。精霊っていうよりこれは……、えっと……あーなんていうんだっけ?妖術……?」


鷲見「妖術ぅ?私も使えるんですけど」

莉乃「妖術……ですか……?」


氷の精霊「いやそういうそっちの用語じゃなくて、自然的な呪術に近いものだね。使えるのはケモノだよ」


莉乃「本当の妖ってことですか……」


青葉「獣……?あーそういや通知来てたわ。二ツ岩大明神が失踪したとかなんとか」


鷲見「メンドクセ。今日は帰りますよ。後寒いからこっち来ないで」


氷の精霊「つめたーい」


莉乃「……あなたのことは?」



氷の精霊「キミが名前をつけてね。名前で私という存在を縛るの」



莉乃「――なるほど。じゃあ、セシルで」


▶セシルと言われた少女はうんうんと頷きます


セシル「はいはいセシルセシル……。おっけーよろよろー」


青葉「はー……人手不足なのに結局雪問題解決してない……やだなぁ……」

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