1-3

「も、申し訳ないわ……ちょっと私の趣味の関係で興奮してしまったわ……。今のは忘れてくれるとありがたいわね」

 ひとしきり「売って!? なるべく言い値で買うわよ!?」という甘い言葉に首を横に振るという、不毛なやりとりを続けた。

 ようやく女性が我を取り戻してくれたものの、あなたの女性への好感度はダダ下がりであった。

 先ほどの救出劇と合わせて、プラスマイナスゼロといったところだろう。

「お、オホン。自己紹介がまだだったわね。わたしは『ミルフィーナ・A・ドルチェ』。この辺りでは、冒険者兼……まあ慈善事業してる活動家みたいなので通っているわね」

「俺様はギドだ。他は憶えていない」

 マントが先に名乗りを上げるのか。

 あなたは少々このマントの自由奔放さを疎ましく思いながらも、自分の名前について記憶を辿ろうとした。

 二人の視線がじっとあなたを見据える……。


「リリス」


 自分の口が勝手に動き、そんな名前を吐き出した。

 あなたは突然のことに、驚き、口を押さえるが、それ以降勝手に口が動くことはなかった。

 そんなあなたの様子を訝し気に見ながらも、ミルフィーナは「そう」と頷いた。

「リリス、ね。私は……長いだろうから、フィナとでも呼んで。

 ……さて。早速で悪いんだけど、あなたとギドのことを教えてもらってもいいかしら?」

 フィナの言葉にあなたは頷く。が、大した話は出来なかった。

 ここまでのごく短い経緯を語ると、フィナは「ふむ……」と思案顔になる。

「そんなことが現実にあるなんて……なかなか信じがたいけれど、嘘をつくようなメリットもあなたには無いわよね」

「そうだな。こんな荒唐無稽な話を完全に信じろ、とは言わん。が、少なくともそんな嘘をついてお前を騙しても、俺達にもお前にも一文の得にもならんことは確かだ」

「まあ、経緯はわかったわ。なら、少しここがどこだ、とかの話をしましょうか」

 それは願ったり叶ったりである。

 あなたが頷くと、フィナは咳ばらいを一つして、腕を組んでから話を始めた。


「ここは、ドラゴニアと呼ばれる大陸の東に位置する王国、アルスタリアよ。

 大雑把に言って、大陸の五分の一ほどを統治している大陸の大勢力の一つね。大陸外の交易も盛んに行っているし、程よく河川の巡る肥沃な土地を持った、大陸内でもかなり豊かな『方』の国……だったわ。

 ちなみに大陸の内訳を簡単に話すと、アルスタリアを一つの大勢力とみて、残り二つ、大きな勢力があるわ。

 一つは、同じく五分の一ほどを統治する『南の共和国』。そして、もう一つ、西に位置し大陸五分の二以上を統治して、大陸内の最大勢力として君臨する『西の帝国』ね。

 ……この国が豊かさに対して城下にスラムを形成しているのは、今、アルスタリアがその帝国と戦争状態にあるからね。

 戦争とは言ってもここ数年は小競り合いが主なんだけど、かなり国土や資源を荒らされてしまっている状況で、戦争に費やす資源もあって、こんな状況に陥っている感じね……。


 ……ま、まあそういうどうしようもない話は置いておきましょうか。

 ひとまず、これが大体のこの地の情勢っていったところよ。実際には、小国なんかが結構点在しているし、一口に三つの勢力だけで大陸が分けられているわけではないけどね。ここまではいいかしら?」

 あなたは、世情についてはわかったと頷いた。

「で、ここから先は、あなたがここからどうすべきかってことについてね」

「ほう、そんなことまで面倒見てくれるのか」

「助けた手前、しかも記憶喪失のヒトに、『あとは自分で考えて』なんて言うのも後味が悪いでしょ……」

 人情で言うとその通りであるが、あなたはフィナのことを『損な性分だなぁ』と優しい瞳で見つめた。

「な、なに、その生暖かい目は……。まったく、話を進めるわよ。

 まず一つは、孤児院や養子なんかの手段で保護してもらうことね。これは、戦災孤児なんかも多い現状、ちょっと望み薄ね……色々掛け合ってはみるけど、正直受け入れ先があるとは言い切れない感じ。

 次は……危険が伴うけれど、自活が可能である『冒険者』になる、という選択肢ね。ギルドに所属すれば、新米で稼ぎの低い内は多少支援を受けることも可能だし、私とパーティを組むことであなたを養うことも可能よ。その時は荷物持ちなり出来そうなことをしてもらうことにはなると思うけど。私としても、ギドがどういう物なのか鑑定する機会も得られるし、メリットはあるから、悪くない案よ。

 デメリットは、最初に言った通り、危険が伴うわ。痛いことも多いし、最悪は死んでしまうことすらあるわね。あなたみたいな年齢の子に強いたくは……正直無いわ。

 他は……まあ何かしら、城下なんかで仕事を探すことかしら。ただこれも、情勢的にどこも余裕がないから、私がどう言ったところで、雇ってもらえるかは謎ね……」

 糊口を凌ぎたいのはやまやまであったが、あなたは自身の記憶についても蔑ろにしたくはなかった。

 そういう意味で、ただこの国の一市民としている選択肢はないこととなる。

 冒険者のように、自由、ないしは相応に手段を得られるように身を立てる。そして、自分のルーツを探せる手段を手に入れる必要があると感じた。


 そこであなたは、フィナに対して――――――――



・冒険者となることを伝えた

 →フィナとともに冒険に出ます。冒険に関するミクロな話題を中心に、自分のルーツを探ります。


・国の行く末を憂いていることを伝えた

 →国の情勢を憂い、貢献すべく、国に仕官し身を立てます。大陸のマクロな話を交え、何かしらでの立身出世の話を主とします。フィナとは事情により別れます。


(投票期間は五日程度を予定しています)

https://twitter.com/hinkaku3_poid/status/1361276926581637122

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る