第二話
条件反射で、飛び出してしまった。
姉さんが観ていたら、
『あま、あま、だぞ! もっと、お兄ちゃんみたいに、狡猾にならないと』
と、云い終え。
さらに、
『そんな、あま、あま、な、
と、
ぼくの首を、刈ってきそう。
そして、
『うん、うん。姉弟、仲良きことは美しきかな』
と、兄さんが春の陽気を感じさせる声音で、ぼく達に語り終える。と、続け様に、
『あ、庭で
と、冬の寒波を感じさせる声音で、
…………、って!
そんなことを考えている場合じゃない!
しっちゃかめっちゃか、になってるぞ――ぼく、おちつけ!
一つ間違っていたら、腕一本、失うどころか、胴体ごと切断されていた。
彼女が片手ではなく、本来の大剣として両手持ちで一撃を繰り出せば。炎で鍛えあげ、硬質化させた肉体すら斬ることも不可能じゃない。
それに、大剣を片手で振るった女性の背後にいる、二人の女性も同じ力量だとしたら。
生半可に手加減したら、自分が殺されてしまいかねない。
この戦闘は――ハンデキャップ戦。
実力が未知数な相手に、三対一。戦意が抜け出た成人男性三人の護衛をしながら戦う不利な闘い。
なのだが、
勝利するだけなら、造作ないことだった――火之夜にとっては。
あの三人の女性たちを確実に倒せ――殺せる方法を
この状況を打破する方法――
力いっぱいに大剣を受け止めながら、首を右斜め後方に向ける。が、片手で大剣を振るった女性と背後にいる二人の女性を視線で、牽制しながら。
「散り散りに、森の中に、逃げて、ください! そうすれば、助かる可能性が高まりますから!」
高身長な男性が、幼い声で、この危機的状況を打開するための最善の解決策を出す。
すると、
その場の停止していた時間の針が動き出した。
高身長の男性が死に誘う斬撃の前に突如として姿を現すなり、その一撃を防具で受け止めたのではなく、ただ衣服を纏った生身の右腕で一本で、受け止めた光景。しかるべく外側からの衝撃に力負けしないため、基本中の基本として、左腕を右腕の内側から押し当て支えていたとしても。
なんの変哲もない、肉体で斬撃を防いでいる、一種異様。
これが、相手も殴るや蹴るなど生身の攻撃ならまだしも。斬撃という生身で、受ければ致命傷は避けられない。
はずなのに、
この高身長の男性は平然としてのけたのだ。
その場の時間を止めるには十分な――原因。
高長身の幼い声に三人の男たちは、一瞬、困惑した。が、すぐさま、顔を見合わせると、言うとおりの行動をとった。
だが、
声に反応したのは、男たちだけではなかった。
火之夜が大剣を受け止めている女性の背後から、小柄な女性が横に飛び出し、森の中に逃走し始めている、男性三人を狙う。
右腕を前に出すと、装着されている装置が機械音と、ともに正体を現す。
軽量小型された可変式クロスボウ。
左手は西部劇に登場する有名な、
「殺させませんよ!
左の肩甲骨から高温発光した美麗の片羽が出現し、逃げる三人に襲いかかっていた、鉄の矢を溶解させて、護った。
「ぁぁぁぁあーーーーー!!!!! ば、バカ、やろう! な、なに、空賊を逃してんのよぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」
火之夜と大剣が、衝突したときの金属音よりも、甲高い悲鳴とけたたましい罵倒が森中を駆け抜ける。
「ぇ?!」
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