23. 沈む、溺れる ☆
はーちゃんは可愛い。自分が気を許した人にはわがままになるところもあるけれど、それはそれで愛しい。俺の友達とも仲良くしてくれるし、接客業のバイトだって頑張っている。マイナスな部分があったってそれをカバーして尚有り余るプラスの部分があるように思う。そう思うのは惚れた弱みっていうやつなのかもしれない。
「んぅ、ゆたかぁ…」
もう季節は春から夏に変わろうとしているのに、朝晩はそれなりに寒い。くっついて眠っていると気分が高揚してくることも多々ある。俺もまだ、若いので、ね。
俺たちは一緒には暮らしていない。正式には俺の住所はまだ実家にある。でも、この家に入り浸っているので半同棲、いや、ほぼ同棲しているような状態だ。俺の親ははーちゃんに会ったこともあるし、節度を守った交際ならば構わない、というスタンスらしい。そのときは頷きはしたけれど、節度を守った交際とは何なんだろうなとは思う。こういう行為をしてしまったら、節度は守られていないのだろうか。それでも、はーちゃんに触れたいという欲求は我慢できないのだけれど。
「はーちゃん」
上手く呼吸ができていないはーちゃんと視線を合わせる。口をはくはくとさせて、甲高い声を我慢できていなくて。そんな姿も愛しいし、これからもずっと独占していたいと思う。
「はーちゃん」
「っ、う、ゆた、か、ゆたか…っ」
強くしがみついてくる、その小さな身体が震える。そして、完全に力が抜けてしまったようで、ベッドに沈み込んでいる。
「ゆたか」
「ん?」
「ぎゅう」
はーちゃんは、俺に抱き締めろと言わんばかりに腕を伸ばしてくる。甘えんぼさんモードで、とても可愛い。望まれたとおりに、俺ははーちゃんを抱き締める。肌が汗ばんでいて、えっちだ。
「すき」
はーちゃんが俺の首に腕を回して言う。俺にはない柔らかい部分が俺に触れて、それでまた興奮してしまいそうになるけれど、それをぐっと抑える。
「ゆたかは?」
「好き。もちろん、好き」
「よかったぁ」
ふふ、って嬉しそうに笑うから、愛しさが募ってしまって、ゆっくりと唇を重ねる。
こんなに、人を好きになることなんて、きっと人生で一度きりだ。
俺たちは、今日も、愛に溺れる。
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