20. この恋が、きっと

ゆたかに触れられると、心臓が痛くなる。でも、これが好きって気持ちなんだなって思う。

デート中、不意にゆたかがわたしの手を握ってくる。


「どうしたの?」

「繋ぎたくなったの」


見た目はけして優しいとは言えないのに、心はとても温かな人。

わたしがいやいやモードに入っちゃっても、見捨てずに一緒に解決策を考えてくれる。

葉月、大くんと絶対別れちゃダメだよ、こんないい人いないよ、って、両親も友達も言う。ゆたかがいい人なのはわたしもわかっているし、そもそも別れるつもりもない。ゆたかがわたしを離さないかぎりは。


「今日めちゃめちゃ天気いいね」

「ぽかぽかしてる」

「俺さ、最近まで小春日和が秋の言葉だって知らなかった」

「え?秋の言葉なの?」

「うん。秋の暖かい日のことを言うんだって」


歩きながらの何気ない会話も、手を握られていたらそっちに意識が集中して受け取れなくなってしまう。

まるで初めて恋をしたかのようだ。

ううん。今まで付き合ってきた人には悪いけれど、この恋がきっと本当の恋なんだと思う。ドキドキして、きゅんきゅんして、離れたくなくて。だって、泣いちゃうようなことがあっても、それでもゆたかが好きだなって思うんだから。


「はーちゃん」

「ん?」

「好き」

「今?」

「今です」


突然の愛の言葉にわたしはドキドキが止まらない。心臓が早く動きすぎて過労死しちゃいそう。でもわたしはゆたかとまだまだ一緒にいたいよ。


「はーちゃん顔赤い」

「だって」

「だって?」

「ゆたかが、好きって言ってくれたから」

「可愛いかよ」


ゆたかが顔をくしゃっとさせるように笑顔を作る。

あ、この顔も好き。

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