14. 運命に引き寄せられて

りゅうが信号待ちの間にアイスコーヒーを飲む。その様子を助手席から見るのが好きだ。

りゅうと私は両親の再婚によって兄妹になった。傍から見ても、仲の良い兄妹だと思う。りゅうは私のことをとても大切にしてくれるし、そんなりゅうのことを兄としても人間としても、とても尊敬している。

海を見に行こう。昨日の夜、りゅうが言った。かなり唐突なお誘いだったけれど特に予定もなかったので、一緒に行く、とすぐに答えた。私は、りゅうが好きだ。

血が繋がっていなくても、私たちは兄妹だ。好きだと思うことは許されないのかもしれない。それでも。


「寝てていいのに」

「二人でドライブしてて助手席の人が寝たら失礼だし、そうなるとりゅう暇だよ?」

「それは確かにそうだけど」


車内にはおしゃれな洋楽が流れていて、これはデートなのだと思う。車、おしゃれな洋楽、でデートに繋がってしまう私の脳もいかがなものか、と思うけれど、りゅう以外を好きになったことのない恋愛初心者なのだから許してほしい。

私は、りゅうしか好きになれない。こんなに魅力的な人が一番近くにいて、他の人を好きになれっていうのなら、神様は私に難題を押し付けているだろう。


「でも、花菜が俺の運転で寝るなら、俺に気を許してくれてるってことだから」

「お兄ちゃんだもん」


お兄ちゃんという言葉は、近くにいるための免罪符。触れても、触れられても、許されるための言葉。


「お兄ちゃん、だもん」


りゅうが好きだと思えば思うほど、私の心は苦しくなる。でも、それでも、この恋を諦められないの。

お父さん、お母さん、ごめんなさい。運命に引き寄せられたのは、あなたたち二人じゃなくて、私たちの方だったのかもしれないね。

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