第5話 成人の儀

「それで?なんでいるの?アリス」


教会内にある一室に通された僕は、向かい側に座る少女に問いかけた。


「決まってるじゃない。私も見聞を広げる為に旅に同行するのよ。別にあんたがこの大陸の酷さを知ってショックで他の女に浮気しないように監視する為とかじゃないからね、勘違いしないでよ」


僕はジトっとした目でアリスを見る。


「本音は?」

「な、なによ。さっきのが本音に決まってるじゃない」


挙動不審に目を泳がすアリス。

もう一押し。


「本音は?」

「うぅ〜〜〜、いつ帰って来るかわからないのに待ってられないわ。寂しいもん」


ふふぅ〜ん、あのアリスがデレた。


そんなことを思いながらニヤニヤ見てると思わぬ反撃がきた。


「それにユキヒコくんが『旅から帰って来たら結婚しよう』とかそう言うセリフは、フラグって言って死んじゃったりするって言うんだもん。ユキヒコくんがへし折る為に追いかけようって色々協力してくれたの。だから一緒に行ってもいい?」


アリスが上目遣いで僕を見上げる。

こ、これは、反則だわぁ〜。

別れ際の人王の不機嫌さやみんなのニヤニヤしてた意味がわかった。全員知ってやがる。


「はぁ〜、わかったよ。一緒に行こう。婚前旅行とでも思えば悪くないか」

「はぅ〜〜〜〜、婚前、旅行〜〜〜♡」


顔を真っ赤にさせてニヨニヨするアリスを見て悪くないなぁ〜なんて考えてたら


ドアがノックされ15歳前後の少女入って来た。

「失礼します。わたくしは、ユリアと申します。成人の儀の準備が整いましたのでお迎えに上がりました」


「初めまして。リト・スカーレットです。こちらが私の婚約者でアリス・フォン・バーナビーです。わざわざ、ありがとうございます」


やっと成人の儀を受けれる。

これが終われば宿を取ってゆっくり休もう。


前を向くとまだニヨニヨしているアリスが「婚約者。うふふ、婚約者♡」なんて呟いている。

ユリアと名乗った少女も苦笑いしてる。


「それでは、着いて来てください」


僕とアリスは、部屋を出てユリアに着いて行く。

長い廊下を数分歩き、大きな扉が見えて来た。

「こちらは、かつて聖女様がお使いになられた祈りの間でございます。ここでは、聖女様の家系の者が成人の儀を行う際にのみ、使用されます。本日は、リト様とアリス様、大変僭越ながらわたくしもこちらで受けることとなっております」


これまた驚いた。このユリアも15歳でしかも聖女の家系と来た。


ユリアが扉の前に立ち、取手の部分に触れ魔力を流した。

扉は音を立てながら開き、中に入るように促される。

部屋の中は中央に台座と水晶が置かれているだけの簡素なものだった。


「先ずは、わたくしから行います」


そういうと台座の前に立ち、懐から何かを取り出して台座に置いた。

たぶん、ステータスカードだろう。

そして水晶に手をかざし次第に水晶は白く光出した。

数秒で光は収まり、ユリアは台座からカードを拾い上げ内容を確認してこちらを向く。


「それでは、アリス様から行います。先程のわたくしの行動を見てわかるように、台座にステータスカードを置いてもらい水晶に手をかざすと水晶が光出します。光が収まれば終了です」

「ええ、わかったわ」


アリスは返事をすると台座の前に立ち、ステータスカードをセットして水晶に触れる。

水晶は先程のユリアと違い、に光出した。

光が収まり、アリスはステータスカードを取り内容を確認する。

その様子を眺めていたら、急に首を捻って難しい顔をしてこちらを振り向いた。


「どったの?」

「内容がちょっとよく分からないの」


ん?内容がわからない?

なんて疑問に思っていたら


「まぁ〜後で見せるわ。それより、リトもしてしまいましょ」


そう言われて、僕はユリアの方を向くと目が合い頷かれた。

取り敢えず、やってしまおう。そう思い、僕は台座の前に立ちインベントリからステータスカードを取り出して置き、水晶に触れた。



水晶からとんでもなく、の光が溢れて来る。


水晶が1分近く光続け収まった。

後ろを振り返るとアリスもユリアも唖然としていた。

僕は、嫌な予感がして全身から冷や汗が出て内心、激しく動揺した。


恐る恐る、ステータスカードを取り内容を確認する。



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リト・スカーレット

人族(現神人)

適性職業:【龍神】

適性属性:火(爆炎)水(氷)風(雷)土(重力)光(聖)闇(魔)無(時空間)

称号:【全属性の使い手】【神々の王】【全てを見通す者】【加護を与えし者】【祝福を与えし者】【創造する者】【裁きを与えし者】【全てを奪いし者】【理を滅する者】

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僕は、若干涙目でギチギチと壊れたゴーレムのようにアリスの方を向いた。

不安そうな顔で僕と目が合う。

アリスは恐る恐る訪ねてくる。


「どうだったの?」

「泣きたい。。。」

「えっ!?」

「と、取り敢えず、先程の部屋に戻り一旦落ち着きましょう」


ユリアの提案でさっきまで待っていた部屋に戻ることに。

部屋に戻るまでアリスがそっと手を握ってくれた。


小さいけど暖かくて柔らかい手だなぁ〜。

ちょっと落ち着いたかも。

ユキヒコくん、ゴウケツ、ブッチャ。

僕に平穏な生活出来ないらしいよ。

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