第2話 事の発端

卒業式の翌日。


朝日が差し込み、鳥の囀りが聞こえる中、リトは目を覚ました。

しばらく天井を眺めながら昨日のこと、これまでのことを思い出していた。


昨日の学園最強決定戦は、大いに盛り上がりそれを観た人々は、記憶に残る一戦だったと口を揃えて言う。


そして今日、旅立つんだなぁ〜と思い、あの日のことを、事の発端を思い出していた。



     ♢


それは去年の秋、卒業まで半年といったところで皆思い思いに進路について話していたとき、


「みんな、卒業したらどうするん?」


不意に気になったことをゴウケツ、ブッチャ、ユキヒコに聞いた。


「おでは、料理屋開くだ」


最初に返事したのはブッチャだ。


「確かにブッチャの飯は美味いからなぁ〜。正直、我が家の料理人になって欲しかったけど、また食えるならそれでいいや!」

「ブッチャ、店の場所決まったら教えてくれよな」

「みんなで食べに行くからさ」


みんなブッチャ飯、好きだからなぁ〜。

そんなことを考えていた。


「みんな、ありがとっ!決まったら教えるだ、そしたらぐいにぎてぐれ」


「それでユキヒコくんは、やっぱり小説家?」

「うん、せっかく転生して来て前世の知識があるからそれをもとに娯楽になる小説や僕の世界にあった漫画って言う絵のような読み物を書こうと思ってる。それにゴウケツも手伝ってくれるって約束したしね」

「あぁ、漫画を描くの手伝って楽しかったからな。もちろん、俺も親父の跡を継ぐけどそれまではアシスタント?ってのしようと思ってる。いつかは漫画を学園の魔法学の指南書としたいんだ。昔、俺らが漫画で魔法の練習したように」

「んだ!!そのおかげでおでは強くなれただ」


よくやったなぁ〜、ユキヒコくんが描いた絵を見てみんなで真似してたまたま出来たりして楽しかったな。


「なら僕はユキヒコくんの書く本を読んだり、冒険者ギルドの依頼を受けてのんびり暮らすことかな」

「それってほぼ冒険者になるって事だよな?」

「そうなるとSランクまで上げないと人王陛下は許してくれないんじゃない?」

「いちよ、そこを目標にしてる。僕らってすでにDランクだしさ?」

「確かにな」

「んだ」


「リト〜、リトいる〜?」


不意に名前を呼ばれ教室の入り口の方を見る。

ひょこっと顔を出したのは、愛しの幼馴染だった。


「ん?どったの?アリス。もしかして愛の告白?」

「バカッ、そ、そんなんじゃ無いんだからね!それよりお父様がリトに大至急、お城に来て欲しいって伝言よ」


おうおうおう、アリスちゃんってば耳まで真っ赤にして可愛い。


「もう!何ニヤニヤしてんのよ!?行くわよ」

「ふっ、好きならとっとと付き合えばいいのに、お熱いことで」

「ちょっとユキヒコくん?茶化さないでくれる!?」

「んで〜、リト何やらかした?」

「わからん。けど大至急ってことは絶対、マーリン母さん絡みだから」


はぁ〜〜〜、気が重くなる。


「面倒だけどちょっと行ってくる」

「「「いってらっしゃ〜い」」」


そして、アリスに腕を引っ張られ城まで連れて行かれた。

城に着くまで顔を真っ赤にしながら僕の手を引っ張るアリスの姿を見た街のみんなの視線が生暖かくて恥ずかしかったのは内緒。


城に着くとあれよあれよと言う間に会議室まで通された。


コンコンコンコン

「失礼します、リト・スカーレット只今、参上致しました」

「入れ」


間髪入れずに渋い声で返事が来た。

部屋に入ると驚いた。

なんたってこの国の4人の王様と案の定、のマーリンがいた。

滅多に4人の王様が揃うことはない。

マーリン母さんが集めたにしては、4人の王様の承認が必要な案件だろうなっと思ってしまった。

実際、城に入ってからも引っ張って来たアリスですら驚いてる。


「ゴホン、いつまで手を繋いでおる」


ちょっと苛立った声で言って来たのは、人族の王、アリスの父親である。

僕とアリスは、ハッとして急いで手を離した。アリスは、恥ずかしさの余り、下を向いた。

「申し訳ありません。四王様が揃っていらして驚いてしまいました」

「よい、アリスとの婚約は認めるが、それでも程々にな」

「あ、ありがとうございます」


うわ、恥ずかし、お互いに想い合ってるけどここまでハッキリと婚約の話されるのはドギマギする。


「取り敢えず、呼び出したのはあたしだ。単刀直入言おう」

「はい」


やっぱり、マーリン母さんが発起人なんだ。

なんだろうなぁ〜

そんな風に呑気に考えていた僕に衝撃的な一言だった。


「あんた、卒業したら隣の大陸を、国々を見て周りなさい。これ四王も納得してるから拒否権ないよ。」


「はぁっ?」

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