キュンキュン❤️ハニー❤️プリミティブ

涙を舐める約束 Lily ver

※※※百合です※※※

「300円で美味しいお肉を食べたい」

　陶器のような艶のある白い肌に、整った唇の赤が際立って見える。そんな麗しい相貌を曇らせ、彼女はアホな相談をしてきた。

　彼女ことリリは、自称吸血鬼である。なので普段から血肉を欲している。

「それは難しいねぇ」

　私はリリのそういった相談は慣れっこになっていたので、ふんわりとスルーした。風を装って、頭の中では最適解を必死に探している。

　300円もあればコンビニのチキンとか、そこそこ美味しいお肉は食べられる。でも彼女が所望しているものは、放課後の小腹を満たすガッツリ系のおやつではなく、吸血衝動を抑えるための血肉だ。ならば生肉だろうか、それならばお肉屋さんだ。いやでもちょっと待って、生肉なんてそのまま食べたら危険じゃない？いくら夜の帝王こと吸血鬼でも、B型肝炎ウイルスまでは消化できなくないだろうか。肝炎を患ったまま永遠の命があるなんて切ない。それに、リリは自称吸血鬼なので、本当に吸血鬼かどうかなんてわからない。今日も普通に炎天下でハードル走をしていた。そうなると安全に食べられる生の肉……馬肉だろうか。だとしたら300円で馬肉なんて買えるのだろうか。

「るぅ、難しい顔してる。はい」

　リリがはにかんだような笑顔で私の顔を覗き込み、小さな包みをくれた。

「あったかい」

「あったかいものが恋しい季節だよねー」

　リリは自分の包みを開けて、中からたい焼きを取り出した。

「え？たい焼き……お肉は」

　散々300円で買える生肉のことを考えているうちに、リリの300円は生でも肉でもないものになっていた。現状把握に追いつかない私を見つめながら、リリはたい焼きの腹にかぶりつく。この憎めない、なんちゃって吸血鬼に振り回されている自分が、なんだかおかしくなっちゃって、私もリリに倣ってたい焼きのお腹に齧り付いた。私のはあんこが入っていて、リリのそれはピザ味なのかトマトソースが飛び出していた。

「ごちそうさま。あんこって久しぶりに食べた。おいしかった」

「どういたしまして。そういえば、るぅ……涙の原料って知ってる？」

「知らない。水でしょ？」

「正解は、け・つ・え・きでした〜」

　踊るような軽やかさでリリは散歩先を歩いていて、そして振り向いた。

「ねぇ、るぅ。今度思いっきり泣ける映画、一緒に観に行こうね」

「ずるいな。たい焼き食べちゃったから断れないじゃない」

「ふふ。作戦成功だね」

　私は妖艶に微笑むリリに、断るつもりなんてないよ。全部あげる。と声に出さないで告げた。

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発掘したぞぅ！