2-5 「おいステラ! たいへんだーっ!」

「おいステラ! たいへんだーっ!」

 ゴックが魔術師組合の本部へ駆け込んできた。

 ステラが出しっぱなしにしたさまざまな魔術書を、一冊ずつ丁寧に本棚へもどしていたペルは、軽い既視感をおぼえつつそちらへ首を回した。

「ゴックさん、どうしたんですか」

「おお、ペルか。ステラは、ステラはどこだ?」

「ステラさんなら、裏庭のほうで鋭気を養ってますが」

「なんだまた昼寝か」

 渋い顔をしたゴックが、どたどたと床を踏み鳴らして裏口へ走ってゆく。何事かと思いペルもそれにつづいた。

「おいステラ、たいへんだ。また大なめくじが出たぞ」

「ふえ~、どこに?」

 お気に入りの寝椅子で優雅にごろ寝していたステラは、寝ぼけ眼でゴックに訊いた。

「聞いて驚くなよ、今度はレストブリッジ卿の領地だ。あいつめ、くだらん手を使ってこっちにいやがらせをしたせいで、バチがあたったにちがいない」

「へえ」

「ふひひ、ベーンのやつめ、ざまあみろ。あいつの泣きっ面が目に浮かぶわ。そうだ、いっちょこれから見にいってくるか」

 言うと、ゴックはきたときと同じように、あわただしく去っていった。

 裏山で大なめくじが大量発生してから、もう半月が経過していた。ステラのおかげでそれらのほとんどは退治され、裏山に残っていたものも自警団が見回って一掃したはずである。

 念入りに処置したはずなのにこれはおかしいと、首をかしげたペルがステラに訊いた。

「ステラさん、もしかして、このあいだのやつがまだ残ってたんですかね?」

「さあねえ」

 とステラ。

 そこでペルははっとなる。そういえば、廃坑でステラがアスポートを使って転移させた大なめくじの卵は、どこへいったのだろうか。

「もしかして、ステラさん、やりましたね……」

 ペルに言われてくすっと笑うと、ステラは寝返りを打った。

「あたし、しーらないっと」

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