第48話 三人で
革鎧なので使っているうちに多少内側が身体に馴染んでくるらしい。
少しでも早く馴染む様にこれからは寝る時以外はつけておこうと思う。
流石にこの鎧を盗られたりしたら立ち直れそうにないで常時手放さないようにしよう。
ただ、鱗の色が黒光りしており、太陽に当たるとそれなりに反射して結構目立つ気がするのでその事にも慣れる必要があるだろう。
ポーション、投げナイフ、鎧、そして今持っている剣で非常に高額だったがようやく今のステータスに相応しい装備が揃った気がするので、これから勇者を殺すために更にステータスの向上に努めたいと思う。
次の日、俺は朝からモンスターを狩りに出たが、装備を新調したせいで何と無く新鮮な気分で一日を過ごすことが出来た。ただ、俺のモチベーションとは比例せず成果はそれ程芳しく無く、ゴブリン二体にオーク二体のみだったので新しい鎧の性能を実感する場面は全く無かった。
街へと引き返し魔石を売ってから朱音の家へと向かうが、既に蒼花と一緒に待っていてくれた。
「それじゃあ行くか」
「はい、それよりリュートさん、その鎧は昨日までつけていませんでしたよね」
「ああ、昨日買ったんだ。アースリザードの革鎧だそうだ」
「いい感じですね。黒がシックな感じで締まって見えますね」
「そうですね〜。リュートさんは黒が似合うのです。黒でちょっと悪い感じも加わって渋いのです」
「そうか? 鎧を買ったのは初めてだから自分ではよくわからないが二人がそう言ってくれるならまあ良かったよ」
大枚を叩いて買った鎧が褒められて悪い気はしない。
「それじゃあ行くか。どこに行くんだ?」
「ちょっとお洒落なお店を見つけたんです。そこに行こうと思います」
「値段は、どうなんだ?」
「すいません、入った事がないので分かりません」
「まあ、今日も魔石を四個売ったしお金は足りるだろ。じゃあ案内してくれ」
「はい」
そう言って三人で食事に向かう。朱音が先頭で案内してくれるが、蒼花がなぜか俺の左腕にしがみついて来ている。
鎧が当たってそれ程いい物では無いと思うが、この前のアイアンウルフとの戦闘以来蒼花の距離感が妙に近い。
「あっ……蒼花ちゃん。わたしも」
蒼花の様子に気がついた朱音も真似をする様に俺の右腕にしがみついて来て、そのまま俺を引っ張って行こうとする。
行く店を知らないので、素直に引っ張られて進んでいるが、周りから見るとこれは異様な光景が繰り広げられているのではないだろうか。
勇者二人が俺にしがみついて道を歩いている。
朱音や蒼花の黒髪、黒い瞳は典型的な勇者の特徴でもあるので、知らない人間が見ても今の状況は異質だとすぐに気がつくだろう。
「おい、二人とも歩きにくいだろ。俺も歩きにくいんだ」
「え〜そうですか〜?私はこれが一番安定感あるのです」
「わ、私もです」
もうこの二人が何を言っているのかは、正直よく分からないが、普通に三人で並んで歩く気が無いのだけは分かった。
周囲からの窺い見るような視線を感じながらも仕方がないのでそのままお店に向かう。
「リュートさん、ここです」
「ここか……」
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