第41話オーガ
もう時間がない。俺は全速力で残りの小屋にも火をつけてそのまま森の中へと駆け込んだ。
六棟目に火をつけている最中に一棟目と二棟目の方からモンスターらしき声が聞こえてきていたが確認する余裕は無かったので速度を緩めず走った。
森に駆け込むと同時に後方を確認するが火をつけた小屋が、凄い勢いで燃え始めていた。木と乾いた草で出来た小屋は思った以上に燃えやすいようで三棟目までは既に全体が燃え盛っている。
「あれは……」
燃え盛る小屋から数匹のモンスターが飛び出してきているが、炎と煙の影響かどのモンスターもふらふらしており、逃げ遅れた個体もいるのか肉が焼ける匂いと同時に木が燃えるのとは違う色の煙が周囲に充満し始めている。
見ている側から六棟全てが完全に炎に包まれてモンスターがふらふらと出てくるが、全部で十五匹ほどだろうか。
初めて見るモンスターだが何の個体かはすぐに分かった。
角を生やし、大型で筋肉質な体躯、そして牙。こいつらはオーガ……
オーガはゴブリンよりも遥かに上位のモンスターだ。
戦う事を想定した事が無かったので詳しくは知らないが、以前戦ったシルバーウルフと同等以上なのは間違い無い。
煙に巻かれてふらふらしている個体ばかりだがシルバーウルフ以上の個体が十五匹か。俺一人でやれるか?
だがこれは上位のモンスターを糧に出来る絶好の機会だ。
勇者を倒す為にもこの機会を逃す事は出来ない。
覚悟を決めた俺はナイフを手に取る。
オーガを見ると筋肉質で大型ではあるが完全な人型なので、急所は目視出来る。
手元にある使えるナイフは六本。こんな事ならさっさと買いましておけばよかった。
絶対に無駄には出来ないので集中力を高め一番近くにいるオーガの喉元にナイフを投げつける。
「グギァ!」
煙が立ち込めた状況では、突然飛んできたナイフに反応出来るはずもなくあっさりと命中したが俺は矢継ぎ早にナイフ投げ六匹のオーガの喉元に命中させた。
数が多いので一匹を完全にしとめるよりも六体を戦闘不能に追いやる事を選択した。
喉をナイフで貫かれ、即死では無いにしてもまともに戦う事はもう出来ないだろう。
俺は森の中を少し移動してから違うオーガに向けて『アイスジャベリン』を連発する。
「ガアァアッ!」
氷の槍は煙の中をつんざきオーガに命中していく。
まともな状況であればオーガに向かってこの距離から放てば、それなりの確率で避けられたかもしれないが、煙が目隠しの役割を果たし、煙を吸い込んだオーガは、ふらふらとして完全に集中力を失っているようにも見える。
俺は、少しずつ森の中を移動しながら氷の槍を放ち続けるが、何匹かのオーガが痛みに叫び、また仲間が倒れた事に気づき始め、無傷のオーガが中心に集まり警戒を始めている。
俺は無傷のオーガを一旦置いて、ダメージを与えて動けなくなったオーガに向けて『アイスジャベリン』を放っていく。
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