第34話 倒れる

俺はその場から離れる為に、佐間が投げて地面に落ちていたナイフを拾い集めてから歩き始める。

ナイフは俺の背中に刺さっていたものも含めると一二本あった。

一体何本のナイフを身体に隠し持っていたのか。

痛みを我慢してステータスを確認する。


リュート グルー 18歳 男 


筋力:508→599

体力:541→635

耐性:423→510

敏捷:522→620

魔力:301→379

魔耐:263→338


スキル ブレイブスレイヤー 火炎剣 アイスジャベリン トリックorトリート


俺のステータスは先程の佐間との戦いを経て大幅にアップしている。

やはり佐間はかなりの強敵だった様でステータスの伸びも大きい。

そして、佐間の使用していたスキルトリックorトリートが発現していた。

これではっきりとした。

勇者を殺せば勇者の保有しているスキルが使える様になる。

ただ佐間は『ブラッディアース』と言うスキルも使用していたので、全てのスキルが発現する訳では無い様だ。

そして勇者を倒せば大幅にステータスのアップが見込める。

恐らくモンスターでも同等の強さを持つ個体を殺せば同様にステータスがアップするのかもしれないが、いずれにしても今回の戦闘を経ていくつかのステータスが六百を超えている。

ナイフによる傷も高い体力と耐性のおかげでなんとか耐える事ができているのだと思うが、秋葉との時に様に傷が完全に癒える様な事は無かったので放置すると危ない。

傷をできるだけ早く治療する必要があるが、選択肢は三つ。

街の治療院へ行くか、ポーションを買うか、朱音に直してもらうかだ。

一番安く上がるのは朱音に頼んで治してもらうことだが、治療院にしても朱音にしても背中の刺し傷を見て何も疑われ無いというのは難しいだろう。

なので、一番高額だがポーションを買いにいくしか無い。

俺は、傷を押してポーションを売っている道具屋に向かうが、背中がとにかく痛いせいで筋肉が強張り、動きが鈍い。

なかなか足が前に進まない。

時間がかかったせいで街の道具屋に着く頃にはあたりは薄暗くなってしまっており、道具屋を見ると既に閉まっていた。

まずいな……

ここまでは何とかたどり着いたが、治療せずに家まで戻って夜を越せるのか?

腕の傷などであれば自分で止血ぐらい出来るが、背中の傷なのでそうもいかない。


「くっ……」


痛みは何とか我慢も出来るが、血が流れたせいか視界が霞んできた。

どこかで少し休んだとしても余計悪化しそうなので、気力を奮い立たせて再び歩を進める。

致命傷は避けていたつもりだが思ったよりも傷が深いのか?

足取りは更に重くなり、身体を上手く前に運ぶ事が出来ない。


「あれ? リュートさんじゃ無いですか。どうしたんですか?」


前方から聞き覚えのある声がしたが、返事をする余裕が無い。


「リュートさん?」


前方から近づいて来ているのは分かったが、不覚にも知り合いの声と姿に気が緩んでしまい、その場で意識を手放してしまった。

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