第33話 勇者佐間を殺す

背後からの俺の一撃を完全に見切ってギリギリのところで躱してきた。

俺の俊敏のステータスはブレイブスレイヤーの効果で八百に迫る。

それをあっさりと躱して来るとは……

「あんた本当に初心者? それにしては剣の扱いとかスピードが早すぎる気がするんだけど〜。どう言う事かしら。まあ私の敵じゃないから別にどうでもいいけど」

正面を向いた佐間は、再びナイフを手にして、こちらへと投げてきたので俺は止まらずに走り続ける。

背中に刺さったナイフは致命傷ではないと思うが、激痛が走る上に、徐々に血が流れていっている。

このままでは、消耗して俺の限界が先に来る。

長期戦は得策では無い。

どうにかして佐間を斬らなければならない。

だが、交戦してみて分かったが、悔しい事に攻撃力以外は佐間の方が上だ。

正面からまともにぶつかってもいなされて、恐らく逃げられる。

俺はナイフを回避する為に先ほど同様佐間に向かって走り、そのまま佐間の背後に回り込んだ。

俺は背後から先程同様に剣を振るうが


『火炎剣』


スキルを発動し剣に炎の刃を纏わせてそのまま振り切る。

火炎の刃を纏わせる事で剣の間合いが一気に伸びる。

先程まで紙一重で躱していた佐間の距離感を完全に狂わせる事ができる筈だ。

佐間は先程と同じ様に前方に飛んで逃げようとするが、俺も更に一歩踏み込み剣をねじ込む。

手元に肉を断つ感触が伝わって来る。

捉えた。


「くぅっ! ああっ!」


火炎剣が肉を焼く臭いがするが、焼き切るには浅かったらしい。

完全に捉えたと思っただけに予想外だったが、確実にダメージを与える事に成功した。

動きの鈍った佐間はまだ背を向けているので、更に一振りし手傷を負わせる。


「あ、あんた私の身体に……身体に傷を〜!」


佐間騒いでいるが知ったことでは無いので攻撃の手を緩めずにとどめをさす。


『アイスジャベリン』


氷の槍と同時に俺も飛び込み、佐間が氷の槍を避けた方向に向かって斬りつけた。

今度は炎の刃が完全に身体を捉え、鈍い抵抗と共に佐間の身体を切断し一気に燃え上がらせた。


「ううっ……」


無理矢理動かしていた身体が悲鳴をあげる。

背中に刺さったナイフの周辺を中心に上半身全体に痛みと熱を感じる。

正面から勇者と戦ったのはこれが初めてだが強かった。

強化されたステータスでそれなりに戦えるだろうと踏んで、勝負を挑んだが、思った以上に強かった。

佐間は、どちらかというと前衛タイプでは無く後衛タイプだったので押し切れたが、佐間と同レベルの前衛タイプの勇者が相手なら結果は逆になっていた可能性が高い。


「ぐっうあっ!」


俺は背中に刺さったナイフを二本共に引き抜いたが、気を失いそうになるほどの激痛が走る。

ナイフを引き抜いても傷口が閉じるわけでは無いので、治療は必須だ。

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