こんな私だからさ 2
「やっぱあんた凄いね」
「まあ良くある事なのでね…笑」
私と握手したら、なんてジンクスが流れたのは、
良くある、噂話が人と人で語られていく間に話が盛られたりするあれである。
最初は、この喫茶店が経営困難に陥った時、
面白半分で知美さんが「ドラ〇もんみたいに願い叶えたりできたらいいのになぁ〜〜!!」
と酔った勢いで言われ、私もふざけて、
「私と握手すると願い叶うんですよ〜笑」
と言って握手したら、次の日テレビ取材され、
見事経営困難を逃れ、それから経済が滞った事も無い。
と、言う話を常連の前でしたもんで、
いつの間にか私と握手すれば何でも叶うというジンクスが出回ってしまったのである。
実際の所大体の願いは叶うもので、自分でも自分の潜在能力におっかなびっくりしている。
「…まあ私は」
「特に何かが突出してる訳でも無いので…」
「こんな私だから出来る事があるって、それっていい事だと思いません?……あ、いらっしゃいませ」
うちの教えは、無責任な発言をしないこと。
母方の方にはそういう言い伝えがあって、隔世遺伝に纏わる何からしい。
その何かを知るのはそう遅く無かった。
ある日、私は虐められていた。
いや、少しいじりが加速したぐらいで、
今の私からしたら何ともないけど、昔の繊細で小心者の私からしたら、とても嫌な物だった。
私はか弱い物で、いつもやられっぱなしだったけど、ある時ちょっとの勇気で言い返した。
「みかちゃんなんてお怪我しちゃえばいいのに!」
次の日その、みかちゃんは足首を捻挫して、真っ赤に腫らして学校にやってきた。
生憎みんな聞いていた訳では無かったけど、
みかちゃんは私を怖がり、避けるようになった。
そして都合良く次の年に引っ越していった。
そう、うちの家系は言ったことが現実になる、
そんな非現実的な事が起こる血統なのだ。
これは誰にも言ったことがないが、
教科書に乗っている卑弥呼的なポジの……なんだったっけ。占い師的な人が私の先祖らしい。
……これがこんな平凡な私に与えられた、
ただひとつのスキルである。
これもまたとある日の昼下がり、常連の___
橋田さん、そう橋田さんが私に話しかけてきた。
「あのねぇ、甥っ子が病気に倒れちゃって…」
「それを治療するには大っきい大学病院に行かなきゃいけないんだけど、そこまで余裕が無くてね…」
お金が、と苦笑いする。
「やっぱり人間お金がないと所詮生きていけないのよ…」
人は生まれながらにして平等なんて、こんなの誰が言ったんだろうか。
どちらにしろ不平等じゃなくなるってのに…
そんなこと言い出した奴は、
今すぐとっちめてやりたいとか思っちゃう。
「分かりました。場所教えて貰っても大丈夫ですか?」
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