1章 第2話 翼の勇者イカロス
「私の番だ。『ゴブリン兵』を出す!出でよ!」
◆ゴブリン兵 コスト1攻撃1体力2
「カードの怪物が...」
「あれがウォーリア。主の呼び掛けに応じて召喚され、彼らの盾となり矛ともなる」
「なら、私のターン!」
左手に集まったカードのデッキから1枚のカードが手札に加わる。
「ツバメ、こっちもウォーリアを出すんだよ!」
「はい、私は『翼の弓取り』を召喚します!」
◆翼の弓取り コスト3攻撃2体力1
●咆哮※このウォーリアが場に出た瞬間、以下の効果を発動する。
①相手のプレイヤーに2点のダメージを与える。
「ばっ......!」
『error!error!マナクリスタルにマナが貯まっておりません!』
「わ、あわ!」
ゴブリンよりも体力も攻撃力も高いカード。そう思い出した妖精の弓取りは実体化することすらなく、手札に戻ってくる。その代わりに、デッキを支えているブレスレットからけたましい音が鳴り響く。
「薄々思ってたけど、あんたやっぱりルドロックカードやったことないんだね!」
「もしやとは思ったのだが、とんだ見込み違いだったのかもしれませんね」
「な、ならこれならどうですか!コスト1のカードです!『武器の研磨』!」
「ばか!何をやってるんだい!」
「えっ?」
ゴブリン兵 攻撃1→2
「ゴブリン兵の攻撃力が上昇しました!?」
「はぁ、これから殺す相手にこんな事は言いたくないんですが、それはどうやらウォーリア1体の攻撃力を上昇させる効果を持つみたいですね。それを出すなら自分のウォーリアを出してからやるものですよ?」
「あんた、ウォーリアを出さなきゃだめでしょうが!それはマジックのカード!」
「そ、そんなーっ」
◆武器の研磨
●選択したウォーリア1体の攻撃力に+1点の修正を与える。
「もうひとつ教えておこう。ウォーリアは1ターン待ってからしか攻撃できないが、例外はある!速攻の効果を持つ『迅速の獣』を召喚!」
◆迅速の獣 コスト2攻撃2体力1
●速攻※このウォーリアは場に出てすぐに攻撃可能。
「2体のウォーリアでダイレクトアタック!」
ツバメ 体力20→16
「へぶっ!」
ウォーリアの攻撃の衝撃で小柄な身体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。まるで現実のようなダメージだ。
「わ、私のターン」
「ドローって宣言するんだよ!」
「は、はい、ドローです!」
声に応え、また1枚カードが手札に加わる。それと同時にブレスレットの埋め込まれた10個の装飾の内2つが淡く輝く。つまり今はコスト2までのカードが使用できるということらしい。それならばと、カードを選ぶ。
「『翼の乗馬コーン』を召喚!このカード効果により、コスト1以下の翼のと名の付くカードを手札に加えます」
◆翼の乗馬コーン コスト2攻撃1体力1
●咆哮※このウォーリアが場に出た瞬間、以下の効果を発動する。
①カード名に『翼の』と名の付くコスト1以下のウォーリアを手札に加える。このターン終了時に加えたカードが手札にあれば、そのカードを墓地に送る。
「手札に加えたコスト0カード、『翼の魔弾』を召喚!このカードは速攻を持つウォーリアです。よって攻撃可能!」
◆翼の魔弾 コスト0攻撃力3体力1
●速攻※このウォーリアは場に出てすぐに攻撃可能。
●このカードが別のウォーリアと戦闘を行う時、このウォーリアを破壊して墓地に送る。この場合、相手ウォーリアにはダメージを与えることはできない。
「ダイレクトアタック!行ってください!」
「ぐああっ!」
騎士団長 体力20→17
魔弾が放たれる風の刃が騎士団長の鎧に確かな傷を付ける。やはり現実のようなダメージを与えているらしい。
「これでターンエンドです」
「そうそう、やればできるじゃないか。でもこれはおままごとじゃないよ。最後まで油断するな!」
「はいっ」
「私のターン、ドロー。ふむ、3コストのカード、『憤怒の管制官』を召喚!このカードは場に存在する限り、味方の攻撃力を1点上昇させる永続効果を持つ」
◆憤怒の管制官 コスト3攻撃1体力1
●このウォーリアが場に存在する限り、永続的に味方の全てのウォーリアの攻撃力に+1点の修正を与える。
ゴブリン兵 攻撃2→3
迅速の獣 攻撃2→3
「攻撃力が3点となった2体でダイレクトアタック!合計6点のダメージだ!」
ツバメ 体力16→10
「(残り体力は10。もしこの盤面を処理できずに速攻持ちの攻撃力2以上のウォーリアが召喚されたら、確実に彼女は負ける...踏ん張るんだよ、ツバメ!)」
「くうぅ...まだです!
私のターン、ドローです!コスト3マジックカード、『翼の旋風』発動!このカードは相手全てのウォーリアに1ダメージを与える!」
「なっ!?」
◆翼の旋風 コスト3
●相手の盤面に存在する全てのウォーリアに1点のダメージを与える。
●上記の効果で相手ウォーリアを破壊できた時、自分のコスト1以下のウォーリア1体のコピートークンを召喚する。このトークンは自分のターンの終了時に盤面から取り除かれる。
ゴブリン兵 体力2→1
迅速の獣 体力1→0 破壊
憤怒の管制官 体力1→0 破壊
「よし、相手の場ががら空きになったよ!」
「3体のモンスターでダイレクトアタック!この攻撃でトークンモンスターは、場から取り除かれます」
騎士団長 体力 17→10
「な、なかなかやるじゃないですか!私のターン、ドロー。コスト2の『不退のソードマン』を召喚!」
◆不退のソードマン コスト2攻撃2体力2
序盤から多くの手札を使った影響だろう。騎士団長はコストが明らかに低いウォーリアを出すのでもはや精一杯のようだ。だがそれはこちらも変わらない。あるのは先ほどの翼の弓取りともう1枚しか残っていない。勝負はまだどうなるか分からない状態だ。額を嫌な汗が伝う。
「ゴブリン兵で翼の魔弾を攻撃!魔弾は自身の効果により自壊する」
「くっ...」
「私のデッキには切り札がまだ眠っている。偉大なる女王から授かった大いなるカードがな!ターンエンド」
「私のターン、ドローです!『翼の弓取り』を召喚!このカードの咆哮の効果により、あなたに2点分のダメージを与えます!」
騎士団長 体力10→9
「さらに残った翼の乗馬コーンでダイレクトアタック!これでターンエンドです!」
騎士団長 体力9→8
「私のターン、ドロー。...くく、来たぞ来たぞ!貴様を倒すための切り札がっ!『鏡のファランクス』を召喚!」
◆鏡のファランクス コスト5攻撃0体力5
●奮闘※このウォーリアが場に存在する限り、相手のウォーリアは必ずこのウォーリアを攻撃しなければならない。
●相手のターン、戦闘を行うこのウォーリアの攻撃力は、相手の攻撃ウォーリアの体力と同数値となる。その戦闘終了後にこのカードの体力は最大値まで回復する。
●自分ターン終了時にこのカードの体力が最大値の場合、相手プレイヤーに2点のダメージを与える。
先ほどの兵士たちの成れの果てであろうか、無機物か有機物かの境目さえ解らぬ不気味な肉塊が姿を現す。無数に生えた手にはそれぞれが大小様々な歪な形の盾が握られていた。
「ゴブリン兵と不退のソードマンでダイレクトアタック!」
「くうぅ、ああぁ!!」
ツバメ 体力10→6
「さらにターンエンド時、鏡のファランクスの効果が発動。相手プレイヤーに2点のダメージを与える!」
投げつけられた盾が肩を切り裂き、激痛に顔をしかめる。
「私のターン、ドロー。
...、私はこのカードを召喚します。『翼の勇者イカロス』!!!」
◆翼の勇者イカロス コスト7攻撃5体力5
●共鳴『翼の』※このウォーリアの召喚コストはカード名に『翼の』と名の付くコスト3以下のウォーリアの数×1少なくなる。
●疾風※このカードは一度の戦闘で2回攻撃可能。
●このカードは戦闘によるダメージを受けない。また、戦闘では破壊されない。
「出たか、先ほどの光の主よ。だが血迷ったか!?そのウォーリアのコストは7!今のマナチャージ量では到底足りんぞ!」
「このウォーリアは共鳴の効果を持っています!」
「まさか、コスト軽減効果!?」
「そのまさかです!では行きます!翼の弓取りで攻撃!ダイレクトアタック!」
力ある叫びに応えて、無数の矢が放たれるが、空を舞うそれらは同じく無数の盾によっていとも簡単に防がれる。
「鏡のファランクスは奮闘の効果を持っている!相手は必ずこの永続効果を持つウォーリアしか攻撃できない!更に相手ターンの戦闘の際には攻撃ウォーリアの体力と同じ攻撃力を持つ!」
翼の弓取り 体力1→0 破壊
鏡のファランクス 体力5→3
「そして、効果適用下の戦闘終了後にこのウォーリアの体力は最大値まで回復する」
鏡のファランクス 体力3→5
「そ、そんなっ!」
「これで、終わりだ!私のターン、ドロー。2体のウォーリアでダイレクトアタック!」
ツバメ 体力6→2
「ツバメの体力が2点になった...もうおしまいじゃあ...」
「ターンエンド。この瞬間鏡のファランクスの効果が発「待ってください!手札の『砂金の守り虫』を捨てます!」な、何っ!?」
◆砂金の守り虫 コスト2攻撃1体力1
●相手のコントロールする効果によるダメージを1回だけ無効にし、そのダメージを相手に返す。この効果は相手ターン、手札からこのカードを捨てることで適用される。
「このウォーリアの効果で、鏡のファランクスの効果ダメージを跳ね返します!」
騎士団長 体力8→6
「私のターン、ドローです!よし、これで、多分、勝てます!翼の勇者イカロスで攻撃します!イカロスは戦闘によるダメージは受けません。これで鏡のファランクスのみ破壊できます!」
鏡のファランクス 体力5→0 破壊
「奮闘持ちのファランクスがやられた!い、いやそれよりもっ!?」
「翼の勇者イカロスは2回攻撃が可能なウォーリアです。2体分のウォーリアの攻撃力合計は6です!いけっ、ダイレクトアタックっ!!!」
「ば、ばかなぁ!ぐああっ!!!」
騎士団長 体力6→0 敗北
ツバメ 体力2 勝利
「やった、勝ちましたよ!」
「初心者というのも考慮しても中々焦らされる戦いだったよ」
勝利の余韻に浸る二人とは対称的にボロボロと雪が溶けるように崩れ、砕ける男。騎士団長は最期に呻き声のような断末魔をあげる。
「まだだ、まだ、終わらぬ、この童話は決して........」
その声は北風に吹かれ、かき消えるのだった。
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