第4話 戦闘狂
「————————————ッッッ!!!」
突如、森に轟音が響いた。木々が倒れ、引き裂かれ、粉砕される。
同時に、新たなモンスターの気配が出現した。
遥か遠くなのに、さっきまでのモンスターと比べるのがおこがましい程の圧倒的な気配を感じる。隠す気のない濃密な強さが届く。
今は遠いが、それでも大きな振動が耳を打つ。その音を注意して聞くと、徐々に大きくなっていることに気が付いた。
このままでは追いつかれてしまう。敵は確実に強い。俺が今まで倒してきたどんなモンスターよりも強い、はず。
おかしい。このモンスターには、俺は勝てる保証はない。
だが———、
逃げた方が、良い。若しくは、全員で力を合わせて戦う、とか。命を最優先にするなら、馬車を囮にして、自分だけ逃げるのも、あり。
だからこそ———、
こんなところで命を懸けるなんて馬鹿げてる。
——————試したい!!!
自分の力がどこまで通用するのかを!
心の奥底にある微かにある本能的な恐怖を差し置いて、胸が高鳴る。
俺は、走る馬車から飛び出しつつ、合図の笛を鳴らす。
『撤退の殿を務める』
まあ、轟音で聞こえているかは怪しいが。
森の1本道に立ち、敵が来るまでの時間、自分の魔力を練る。魔力を身体に纏わせ、循環させ、強化する。
魔力は、身体に宿る魔法の源。魔法を使う他にも、身体に巡らすことで強化になる。
この技術とスキル『支援』での身体強化を使った戦い方が、俺のファイトスタイルの1つだ。それは、道場でサグノアおじさんから直々に教えてもらったもの。肉体的に脆弱な人間が、モンスターに打ち勝つための秘策。俺が、理不尽に立ち向かう為の術。
その名は、操力術。この力で俺は戦う。どんな奴にも、負けない。
肌が痺れる。息が重い。血が巡る。轟音は、もうすぐそこまで迫っている。
正面から見て左側、木々を倒しながら奴が姿を現した。
そのまま奴は、奥の馬車に向けて突進していく。まるで俺の事など眼中にないように。
そんな奴の横っ面を思いっきり殴りつけた。奴は弾けた様に吹っ飛び、近くの木に叩きつけられた。
ゆっくりと起き上がると、苛立たしそうな目でこちらを見た。初めて、お互いの目が交錯する。これで、奴を同じ土俵に立たせた。
そして、俺は開戦の口火を切る。
「さあ、やろう」
俺は、奴———Sランクモンスター、ハイオーガに、勝つ。
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