第25話 学園祭が終わって

 学園祭が終わった翌日、王宮の会議室では大臣達が集まり王へ訴えていた。


「我が国の王子であるエイロン様が悪役とは侮辱以外の何でもありません! あの理事長には何かしら罰を与えるべきです」

「私も賛成です! 公平に王子役を二人に増やすなどやり方はあったと思います!」


 エイロンが悪役を演じていた事に大臣達は怒り心頭のようだが、肝心の王は特に気にした様子はなく何か考えているように顎を撫でている。


「ふむ、しかしあの劇の王子役は一人だからこそ意味がある。そのような配慮の為に劇自体を壊しては劇の意味がないではないか」

「た、確かにその通りですが……」

「劇で悪い役をしたからといってエイロンが悪い人間と思う者はおらんだろう。私は息子達と同じクラスの者達が力を合わせて作った劇を見に来たのであって、良い役を演じている子供だけを見にきたわけではない。全ての役に意味があり全員で力を合わせなければ演劇は成り立たん」

「…………」


 王の言葉に大臣達はハッと我に返ったように大人しくなった。


「それにエイロンの演技を見たか? 見事な演技だったぞ。勿論ビオロや他にも魔王役の理事長、ウィリアムといったな、皆素晴らしい演技であった。そうは思わんか?」

「あ、その……」

「わ、私は……」

「ふむ、どうやらそなたらは息子達の配役にだけ注目して劇自体は観ておらんかったのか」

「!!」


 大臣達全員の顔が一気に青褪めたが王は特に不快に感じた様子はなく、逆に安心させるように優しく穏やかな笑みを浮かべた。


「私と私の息子の事を思ってなのだろう? そこは理解しているし感謝する。だが私は息子達の演技とその劇も見てほしい」

「……」

「というわけで、だ。ジルベール宰相」


 名前を呼ばれ、今まで王から少し離れた場所で静かに立っていたジルベールが王の隣へと並んだ。その手には黒い小さな機械が持たれている。


「はい、こちらは魔道具研究所のジェローム殿が開発された撮影機です。先日の劇もしっかり録画されています。私も確認しましたが鑑賞には十分過ぎるほどの性能でした」

「あの……」

「まさか……」

「うむ、今から私の息子達が演じた劇を観てもらおう。観終わる頃にはきっとそなた達の考えも変わるだろう」


 王の宣言と同時に後ろから巨大なスクリーンが降りてきた。


「この劇の時間は約二十分。一回目は主役のビオロ様を中心に鑑賞し、二回目はエイロン様を中心に。三回目は演劇全体を鑑賞しその後にそれぞれ感想を述べる時間を取って一時間半といったところでしょうか」

「そ、そのような時間は……」

「ご安心を。このような事もあるだろうと事前に調整して二時間の余裕を作ってあります」

「ならばそれぞれ感想を述べた後にもう一度見れそうだな。私は何度でも観れるぞ、それ程良いできだった」

「仰せのままに」

「おおう……」


 大臣達は全員見事に改心した。

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