第24話 学園祭がやって来た③
アズマのご褒美とフィンク様のクラスへ行くという明確な目的のおかげで演劇は大成功。
拍手大喝采なのは、ビオロ様エイロン様王族がいたからかそれとも理事長の魔王ぶりが様になりすぎていたからか。
あまりに怖くて私が半泣きで命乞いをするシーンが演技じゃなくて本気になっていたのは内緒。
とにかく、劇も無事に終わってアズマと一緒に約束していたフィンク様のクラスへ。
ビオロ様とコルセイユさんは二人で見に行きたいところがあるらしくて別行動、エイロン様はあの時フィンク様の会話が聞こえていたみたいで心配して私達と一緒に来る事になった。
「アズマ! それにエグレットにエイロンも! 来てくれたんだ!」
嬉しそうに出迎えてくれたフィンク様の姿は執事そのもの。髪もいつものふわふわじゃなくピシッと綺麗に整えられていて、いつもの可愛い雰囲気と違って普通に格好いい。
ん?
「フィンク様、その格好は……」
「メイドだよ! 僕達のお世話をしてくれる人」
あ。あー、そうだった。
フィンク様はこの国の言葉がまだ上手く使えないんだった。
「フィンク、メイドっていうのは女に使う言葉であって男には使わない。この場合は召使いとか使用人、お前の格好だと執事っていうんだ」
「そうなの!? 僕間違えて周りに言っちゃってた」
つまりフィンク様のいうメイドの格好というのは執事の格好で、普通にウェイターとして働くって事だったのね。
うん、何となく分かってはいた。だって、ねえ。
でも何だろうこの、残念なような安心したような複雑な感情は。
とりあえず席について簡単に注文して待っていたら衣装担当の子達も来た。
やっぱりちょっと残念そうな顔をしていたけど、フィンク様の執事姿と髪型にこれはこれでありって感じで満足そうに眺めている。
何となく周りを確認してみれば女子生徒の割合が多い。
これはカフェという女性向けのお店だからかそれともフィンク様の勘違いメイドからの執事姿が目当てなのか。
出されたパンケーキが美味しかったからこれ以上深く考えない事にしよう。
無事学園祭が終わった翌日、右手に語学の本、左手にフィンク様を小脇に抱えた理事長を見かけた。
何も知らなければフィンク様の命が危ないと以前の私なら心配していたけど、昨日のやり取りを知っている私は安心してフィンク様を見送れる。
正しい言葉を教えるんですね、頑張ってくださいフィンク様!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます