第3話 悪役令嬢は和食に飢えています②
何とかお米が主食の国、倭国を見つけてお父様におねだりしてお米を買ってもらった。
お金の力って凄い。この場合は権力の方かな。
まあ過程はともかく今、目の前に念願のお米があるわけだけど。
「お米ってどうやって炊くの……?」
いつもなら炊飯器に水入れてスイッチ入れるだけだったけど、よく考えなくてもお米がないんだから炊飯器なんてあるわけないし、倭国でもそういうのはなかった。
でもご飯を炊くぐらい簡単だよね。
小学生の時にキャンプでご飯炊いた事あるし。
お粥を作る感じで水少なめにすればきっと出来る。
テレビでもよく土鍋でご飯炊いているの見てたし大丈夫。
よし、早速料理長に頼んで作ってもらおう。
これで今日からご飯が食べれる!
******
おかしい……今私の目の前にあるのはまごう事なき白米。お米。ご飯。
なのに……。
「ぼ、ぼそぼそ……芯はないのにパサついているのは何で……」
料理長の腕は悪くない。お米の質だって悪くない。
なのに出来上がったご飯はいつものご飯と全然違って何かツヤもないし、味が……物凄く不味い。
「やっぱり何かしらの技術が必要なのね……」
よく考えればキャンプも先生がついていたもんなあ。
「これがご飯というものですか……中々、変わった食感ですね」
おおう、料理長の顔が渋い。
お嬢様の私がわざわざ取り寄せて言われた通りに作ったから不味いなんて言えないものね。
「ありがとうポール。このご飯は私がいただくから仕事に戻ってちょうだい」
「い、いえ! このような珍しい食材を扱うのが私達の仕事ですから! これは私達が責任もって全ていただきますので」
おっと、このままだとご飯という食べ物は不味いものだと料理長に限らず周りの人全員にそう認識されちゃう。
それだけは避けないと。
ご飯は美味しいものなんだから!
こんな時こそ悪役令嬢の本領発揮!
「いいえ、これは私が食べたくて作らせたのだから全て私のものです! これは命令です! 誰にも分けたりしません!」
「お、お嬢様……は、はい、分かりました……」
よっし!
流石身分の高いお嬢様! 料理長といえど逆らえない!
ごめんね、ポール。十歳の子供に命令されて従うのは嫌だろうけど、失敗したご飯を食べさせるわけにはいかない。しかも私の言うとおりに作らせたものなら尚更。
失敗したご飯を鍋ごと部屋まで持ってきたはいいけど、このご飯だけを食べるのは流石にきついな?
「というか、梅干しもタラコも味付け海苔さえない! え、他にご飯のお供……お漬物、はあるっちゃあるけどオリーブとかピクルスはご飯に合いそうにないし……」
白ご飯だけでもきついのに失敗したご飯をおかずなしは……。今からまたキッチンに戻ろうにもちょっと戻りにくいし、いくら失敗作といっても食べ物を捨てるのはバチが当たるからこのまま食べるしかない。
「というか、お米だけじゃなくて倭国の料理人も呼べば良かったんじゃ……。いや、明日にでもまたお父様に頼もう。……とりあえず初めてだからと念の為に一合だけにした私は賢い。うん、大丈夫……」
後でこっそり塩を取りに行こう。それまではとにかく少しでもこの量を減らしておかないと。
「あ、でも冷めたらさっきより一層不味い……。これ完全に冷める前に早く食べないと……」
後とか言ってられないな? 私の浅はかさと要領の悪さをおかずにして頑張ろう……。
******
「お嬢様……私の腕が至らない事を叱責するどころかあのようなものをご自身が指示したからと全て食されるとは、何て責任感のあるお方なのだ……。このポール、お嬢様の為に必ずや満足いく料理に仕上げてみせます!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます