第2話 悪役令嬢は和食に飢えています①
前世の記憶を思い出してから一週間。
お金持ちだから欲しいものは何でも片っ端から買いまくってやる! って思ってたけど、よく考えたらこの世界にはアニメや漫画、ゲームがないから買いようがない。
小説はあるけど恋愛とかヒューマンドラマみたいなのばっかでちょっと私の好みからは外れている。
それに、わざわざ贅沢しなくても今が十分過ぎる程贅沢な暮らしなんだよね。
部屋は毎日メイドが綺麗に掃除してくれるしベッドもふかふかでいい匂い。更に着替えの用意や髪の手入れまでしてくれてまさに至れり尽せり。
お嬢様というよりお姫様気分。
しかも。
「……やっぱり可愛いよね」
鏡に写っているのは悪役令嬢エグレット、何度見ても可愛い。
水色の瞳をした吊り気味な目は知的に見えるし、金色の髪だって染めたみたいなギラギラした感じがなくて、何か落ち着いているというかしっとりしている? とにかく自然な色だからかとっても綺麗。
しかも長い。
前世の私は髪の手入れが面倒だったから黒髪ショートヘア、エグレットの髪はメイドが毎日丁寧に手入れをしてくれるおかげでサラサラストレートヘア。メイドさん凄い、本当にありがとう。
鏡に向かってにっこり笑ってみれば普通の可愛い女の子。
まあこれはゲーム内のエグレットが人を見下した表情とかこれぞ悪役! って感じの笑い顔などなど普通の表情が一切なかったからそう思うだけかもしれない。
ゲームでも普通の表情が一つでもあればあそこまで嫌われは……いややっぱり妨害イベントは無理。表情一つで評価は変わらない。
とにかく、ゲーム関連がないのは残念だけどなんだかんだ満たされているからわざわざ贅沢しなくてもいいと思っていた。
昨日まで。
夕食の時間になり席につけば並べられたの美味しそうな白身魚のムニエル。
その前はポワソだったかポワレだったか焼いた魚とソースがとっても美味しい料理だった。
あとテレビでしか見たことがないでっかいエビや貝の入ったブイヤベースもすっごく美味しくて、パンとの相性もバッチリ。
他にもクリームパスタ(カルボナーラとは違う料理みたいだけど私には違いが分からなかった)が出てきたり、とにかく食事がとっても美味しい。
豪華で美味しい食事が毎日毎食で嬉しいんだけど……。
「お米が、ご飯が食べたい……」
パンもパスタも好きだけど、前世の記憶が戻ってからご飯が恋しくて仕方ない。
料理の種類から予想するに、このゲームはイギリスとかフランスみたいなヨーロッパ系がモデルになっているみたいで、お米というか和食系が一切ない。
せめて醤油が欲しい、でもそれらしきものすらない。
ないなら作ればいいじゃないってどこかの偉い人が言っていた気がするけど、醤油の作り方なんて分からない。
材料が大豆って事ぐらいしか知らないし、豆からどうやって液体にするの。
「スマホが、スマホがあれば簡単に調べられるのに……!」
でも当然スマホもない。ないないだらけ。
お金ならいくらでもあるのに!
「……あ、でもこの国にはないってだけで探せば米とか醤油の国があるんじゃない?」
大体こういうゲームって日本をモデルにした国があるし、この世界にだってあったっておかしくない。
流石に日本そのままの名前は使われていないと思うから、和国とか大和とかそんな名前で絶対ある筈!
******
家の書庫にそれらしいのがなかったから図書館で片っ端から調べてみたらやっぱりあったよ日本に似た国。
倭国とかこれ絶対日本だって。
主食はお米だしあとは何とかしてお米を買ってきてもらえばいいんだけど……何かちょっと調べてみたら倭国ってあんまり他国と仲良くないというかどこの国とも交流持っていないみたいで詳しくは分からないのよね。
……鎖国なの? 江戸時代なの?
けれどこれぐらいで諦めたくなんかない!
それに全く交流がないというわけじゃないから何とかなる! と思う。
鎖国時代だってオランダだったか一ヶ国だけ交流していたし、ペリーの黒船来航よろしくいざ開国。
お金はあるんだから何としてもお米を! あと醤油!
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