第143話 ちがうばしょで

 それはつぐみがいる所から離れた。

 遠い遠い場所。


 そこである人物が、独り言をつぶやいていた。


「これはこれは本当に、何というのでしょう本当に、……面白い。


 こんなに面白いものをみたのはどれくらい前でしたっけ?


 ……あぁ、確か十年位前、かな?


 あの時の彼女も、とても面白かったですね。


 ここ最近の面白いことは皆、一人の人間が軸になって起こっていますね。


 うん、本当にこれはわくわくしてくる観察対象です。


 汐田君の印を付けられた発動能力を持たないお嬢さん。


 冬野つぐみさん。


 とても可愛いお名前と姿のお嬢さんですね。


 でもこの冬鳥のお嬢さんを一般人と呼ぶには少々違う気がします。


 室さんの中にいらっしゃる黒蝶のお嬢さんも、この冬野さんがきっかけで覚醒したと聞きましたし。

 

 そうですね、冬野さんとは一度ゆっくりと話をしてみたいものです。


 こんな面白くて素敵なお嬢さんとの会話は、一体どんな話が出来るでしょうか?


 私にどれだけの刺激を、新しい楽しみを与えてくれるのでしょう。


 あぁ、我慢できませんね。


 さてそのためには……。


 どうしたら実現が出来ますかね?


 とても楽しい企画になるでしょうから、この計画を進めるのは別にいいですよね。


 だって今、私は何も頼まれていな……。


 おっと、そういえば頼まれていましたね。


 しかし、あの室さんから『頼み事』をされるなんて思いませんでしたよ。


 そうさせるきっかけを作った冬野さん。


 やっぱり話がしたいなぁ。


 あ、でも汐田君には内密の方がよさそうですね。


 この間はついうっかり口が滑り、怒らせてしまいましたから。


 あぁ、それに白日の人に私と彼女が話しているのを知られるのも、ちょっと面倒ですかね。


 とはいえ、彼女はいつも白日の方が誰かしらがついているようにしていますしねぇ。


 うーん、……少し考えてみますか」

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