第100話 繰り返しで
「……出来た、出来てるよね? シヤちゃん!」
発動を終わらせたのを確認し、つぐみはシヤに抱きつく。
シヤは難しい顔をして、つぐみを見つめたまま何も言わない。
「し、シヤちゃん大丈夫? ひょっとして、反動ってやつが来ちゃったの?」
「……いいえ、大丈夫です。ただ成功したことに、少し驚いているだけです」
シヤは、自分の両手を見つ目ながら続ける。
「やはりつぐみさんは凄いですね。私はこの考えは、思いつきもしませんでした」
「ううん、凄くないよ。ただ最近、白日や皆の発動の勉強をさせてもらっててるから。もしかしたらって思ったことを、シヤちゃんが成功させてくれたんだよ。頑張ったのはシヤちゃん。だから凄いのはシヤちゃんだよ」
つぐみは一気にまくしたてる。
シヤはいつものように困ったような、でも少しだけ嬉しそうな表情を向けてきた。
本人に言うと強く否定されてしまうのだが。
その時のシヤの顔は、とてもかわいいとつぐみは思う。
品子が、高速で頬ずりしたくなるのは仕方ない。
だが痛かったり苦しいといけないので、自分は我慢をして抱きしめるだけにする。
「つ、つぐみさん。苦しいです」
だが、その我慢は上手くできなかったと思い知る。
「ごめん。えっとそれで、今回のこの件なんだけど。早速、先生か靭さんに報告をしようか?」
「すみません。それはもう少し、待ってもらいたいです」
「え、どうして?」
「先程は確かに成功しましたが、次も成功するとは限らないので。もう少し私に精度を上げる時間が欲しいのです」
「なるほど。シヤちゃんは本当に頑張り屋さんだね」
つぐみも学習する人間だ。
なので先程より、少し優しく抱きしめてみる。
「つ、つぐみさん」
「あれ、まだ苦しかった?」
「あの……。あ、ありがとうございます。この件のきっかけを作ってくれたのは、間違いなくつぐみさんです」
シヤの顔を見る。
何となくわかっていたが、彼女の顔は赤く染まっていた。
色白な彼女だけに、その赤がとても鮮やかに浮かび上がっている。
さらにはこちらを見上げながら、お礼を言うその姿。
こんな可愛いことを言っている相手に我慢できるほど、つぐみの心は大人ではない。
思わず強く、ぎゅっと抱き着いてしまう。
「つ、つぐみさん、苦しいです。というかこれではずっと繰り返しです」
「うん、そうだね。繰り返しだー! エンドレスだよー!」
自分もゆっくり目だが、シヤへと頬ずりをする
「繰り返しでいい。このまま私は。いや、違うな。私達は繰り返しで、こうやって仲良くなっていくんだよ。いいよね? シヤちゃん!」
返事はない。
代わりにシヤは、静かにつぐみを抱きしめてくれた。
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