第3話

 全く、この世界の女どもはいったいどうなっているんだと、執務室の扉を閉める。帝国の防衛において、最高権力者に次ぐ力を持つ大臣は、苛立ち紛れに腰を下ろす。陛下も然り、勇者も然りと、女ばかりが力を持って、男はいつも影にいる。

 なんて事を思いながらも、心の内に留め置き、帝国勢力下にある各国の軍備状況に目を通す。

 人族の世界は主に三つの勢力に分けられる。

 一つは共和国。

 人族の協和と調和を謳う、砂漠の向こうの超大国だ。国家総統と議会の二つで舵取りされて、どちらも同格の権限を持つ。内政については議会が、軍務を含めた外交を国家総統が担う。

 もう一つが連合国。

 共和国とも帝国とも、海を隔てた先に位置する大陸を全て支配している。完全民主制であって代表と呼ばれる存在は無い。最高議長があるが、連合としての代表では無く、言葉の通り、各国議員を取りまとめるだけの存在で大した力を持っていない。外交儀礼の場においては、連合の代表として最適な議員が選ばれ派遣される。

 最後が我が帝国だ。

 皇帝を中心とした絶対君主制国家であり、全ては皇帝の一存による。担当ごとに大臣と呼ばれる存在が公務の補佐をしていくが、万事に置いて最終決定権を握るのは常に皇帝であった。

 その他にも、いずれの勢力にも属さない衛星国家群があるが力が乏しく、三大勢力とは比較にもならない。発言力も極めて乏しく、言ってしまえば何もできない小魚だった。

 人族世界の地図では、帝国、共和国、連合国の勢力が描いているが、いずれの国家にも属さない、最大最強の力を持った組織がある。

 異世界からの転生者達を取りまとめ、圧倒的な力を盾に人族全ての脅威と戦う集団。

 勇者ギルドだ。

 史上初のホワイトランクに達した雷の勇者を筆頭に、紫ランクの水の勇者、具現の勇者、時空の勇者と、そして不滅の勇者の四人が並ぶ。紫ランクの一人でさえ、その気になれば国の一つや二つを容易く滅ぼし、世界を破滅に導くだけの力がある。

 これは決して物の例え等で無く。現に雷の勇者を使った共和国の手によって、連合国の艦隊は百隻以上も沈められた。かの海戦で共和国は無傷で連合国に勝利したが、戦闘直後の大規模な気候変動によって共和国は甚大な被害を受けたらしい。帝国としては幸いな事に、両者とも深い傷を負ったのだった。

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