第6話 魔獣登場

 俺達は北を目指して馬車を走らせた。万が一の場合に備えてミルキー王国との連絡が取れる水晶玉を操れる自称魔導士ベルルという老婆も一緒に同行である。

 異世界ファンタジーだからといって美少女ばかりに囲まれる世界ではないようだ。


 これで仮に、第6の魔獣ブライダルホークが王国を攻めてきた場合、引き返す事もできる。


 だが、俺は確信している。自分の著書「空を感じて」との共通性。

 その物語の舞台は第2話から金沢と移動し、物語は進んでいく。



「ハートサブレ、北には街や村はあるのか?」

「はい。北宿ゴールデン街という、酒屋の集う有名な街があります。」

 北のゴールデン=金で、金沢か?何処かで聞いた事のある名前の街に少し現実感が見えて、俺は正直萎えてしまう。

 まさか吉○興業本社が近くにはあったりしないよな…。




 しばらくすると、突然周りが霧がかり、獣の雄叫びが聞こえてきた!


 なんだと?北の街に行く前に何のイベントだ!?


「ハートサブレ!これは!?」

「イーロン様!魔獣です!!」


 どういう事だ?小説通り魔獣は北の街でのイベントではないのか?

 小説の中で金沢に逃避行する道中は書かれていないはずだ。


「どうしますか?イーロン様!」

「とにかく、北の街まで急いで走って逃げてくれ!その間、どう対処するか考える。」

「はい!」



 確かに新郎は金沢まで鎌倉リカを追いかけてくる。主人公の飯田源次と鎌倉リカは夜行バスで逃避行。新郎は自家用車で2人を追走。



 馬車の荷台に移動し、後ろから追いかけてくる魔獣を探す。少しずつ霧が無くなり、俺は初めて魔獣を目の当たりにした。



 見た目は巨大な牛。そういえば、新郎の車はランボルギーニだ。ランボルギーニのエンブレムが牛。よくここまで異世界と俺の小説をリンクさせたものだ。しかも、こちらは馬車。まさに、フェラーリ対ランボルギーニ。関心しながらも、魔獣を足止めする方法を考えた。



 ランボルギーニのようなスーパーカーの弱点を狙うか?牛の弱点を狙うか?スーパーカーで言えば、こちらの馬車もフェラーリとしてスーパーカー扱いされるとしたら条件は一緒…。


 しかし、牛の弱点が思いつかない。今や完全にフェラーリ対ランボルギーニのスピード対決になっている。


 これはもう賭けに出るしかない!フェラーリのエンブレム跳ね馬に賭けて!



「ハートサブレ!段差の激しい道を選んで進め!」

「はい!揺れるんで、しっかり捕まってて下さい。」


 馬車は荒地を走る。見事に馬は跳ね馬の如く、荒地の上でも飛び跳ねながら進んでいく。


 一方、魔獣は段差に何度もつまずき、こちらとの距離がどんどん離れていった。スポーツカーの弱点、段差を利用したのがうまくいったのだ。




「ここまで来れば安心ですね。もうすぐ北宿ゴールデン街に到着しますよ。」

「ふぁ。よく寝たわ。何事もなく到着したようじゃのう。」

 どうやら魔導士のババアはこんな時に平気で熟睡していたようだった。



 だが、この魔導士ベルルも大事な登場人物の1人なのだ。

 小説「空を感じて」では鈴木明子として重要な役で登場する。


 そして、無事に北の街に俺達は辿り着いた。


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