第3話 共通点

 わけがわからない…。現実世界で俺の恋人の「遠山京香」が、まだ発行されていないはずの、俺の執筆した「空を感じて」の作者として、本がこのミルキー王国にある。


「さあ、イーロン様、よければ今夜は我が城でお休み下さい。明日は早速第6の魔獣ブライダルホークがこの城下町を攻めにきます。わが国の兵は第5の魔獣森のウエスタンの攻撃でほぼ壊滅です。残ってる兵士は後10人程度。戦闘の指揮も作戦もイーロン様にお任せいたします。」


 解せない…。俺の小説にそんな化け物なんて出てこない。こいつらは日本語を自分の国の言葉で無理に翻訳し、予言の書として取り扱っている。そもそも、予言の書として解読もしてないのではないか?


「空を感じて」の一話目を俺は思い出す。よく考えると確かに共通点はある。まず、主人公と相手役の女性が出会う場所が神崎天の川公園。ここの国はミルキー王国。天の川は英語でミルキーウェイ。ただ、第一話で重なる所はどう思い出してもそこしかない。

 淡い切ないラブストーリー。それの結末は…。そう、結末通りに行けば結局ハッピーエンドでは無いのだ。


 このミルキー王国を守るどころか最後は悲劇で終わる。そんな終わりが分かっていて、俺はこの国で勇者として戦わなければいけないのだろうか?



「さあ、皆の者、今日は勇者イーロン様が我が国に来て下さった大切な日だ。兵士や町の武器屋等、他イーロン様のお役になる者も呼んで盛大に宴を行うぞ!」

「はっ!すぐに準備を!」

 伝令として王室に居た兵士が出ていった。


 王室に残ったのが王様と俺とハートサブレだけとなった。

「ハートサブレや。イーロン様を部屋にご案内したまえ。」

「はい!パパ!」

 どうやら、ハートサブレは王様の娘らしい、つまり王女様か…。



!!!


!!!



 俺は思い出した!ハートサブレ…。鳩サブレ。鳩サブレの発祥の地は?

 そう、鎌倉。


 俺の小説の「空を感じて」のヒロインの名前は、


 鎌倉リカ…。


 ここまで、くればもういい加減分かっている。この異世界は俺の小説をモチーフに形成され、小説通りに話が進む。恋愛小説と異世界ファンタジーがどう絡み合うのか分からないが、明日、第6の魔獣ブライダルホークを駆除するヒントが俺の小説に書いているはずだ。

 

 ブライダルと言えば結婚だな。確かヒロインの鎌倉リカは婚約者が居た。だが、最近うまくいってなく、憂鬱な時に主人公「飯田源次」(75歳)と出会う。

 飯田老人…だからイーロンか。なるほど、この世界を円滑に回すには作者として、この俺が先回りすればいい。



 シャワーを浴びて、用意された服に着替える。間もなく宴が始まる。作戦はまだ決まっていない。恋愛小説から何をヒントに魔獣ブライダルホークを退治するのか…。


 とにかく、俺は今までこの国の兵隊で退治してきた魔獣の情報や、退治の仕方、そもそも「魔獣とは何か?」を聞かなければいけない。



 それでは宴の時間だ!

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