第2話 空を感じて
「イーロン様、もうすぐで我が国に到着します。」
ああ、そうだったよな。馬車に揺られて寝落ちこいてた。起きたら現実に戻るんだろうと思っていたが、やっぱり俺は異世界に転生したらしい。
ぶっちゃけ、どうでもいい事だ。さっきから殺風景な森の中を走り、目の前の女が異世界のキャラってだけで、テレビで世界紀行を見ている様なもの。
ところで、なんで俺は異世界に来れたのだ?俺はリアリストだ。こんな展開は正直、嬉しくも何とも無い。
まず、俺は「空を感じて」の最終話を書き終え、最近の異世界ファンタジーものが量産されている小説界にふざけたアンチテーゼを送る為に適当に書き始めたのだ。酒を飲み…
!!
そうか、酒だ!俺はまだ相当に酔っ払っているのだ。だが…あの鈍器で殴られた衝撃は何だ?
俺を誰かが殴って気絶させた。もしくは俺は死んでしまい、黄泉へ向かう為の世界がこの異世界?
それより待て!「空を感じて」の最終話は執筆は終わっているが、編集局にはまだ転送していないのだ。何者かが「空を感じて」の最終原稿を奪いに来たとしたら誰だ?
「着きましたー!イーロン様!私の国ミルキー王国です!」
ハートサブレはめちゃくちゃアニメキャラ全開の顔でこちらを振り向いた。
どうやら、俺が適当に付けたミルフィーユて名前は、少し変えられて国の名前になったのか…。しかし、確かにミルキー王国。名前から想像するにふさわしいカラフルな城と城下町。どこかのねずみの国のようだ。
鎧を来た兵隊が何十名も並び、両サイドからラッパの演奏。その中をくぐり抜け、城の中へ入る。馬車を降りて王室へ通される。
「おお、あなた様が勇者イーロン様か。この国に押し寄せる魔獣を退治していただけると我が国に代々伝わる予言書に書かれていた。イーロン様、何か必要な武具と兵士が必要であればいくらでも言って下さい。申遅れました。私、このミルキー王国の国王ミルキー16世です。」
……正直、どうでもよかった。早く意識が回復するか、完全に死ぬまでなら、早くこの異世界から抜け出したい程、あまりにも茶番!
小説家の俺からしたら何も面白い要素も個性もない。
え…?
!
なんだ??どうして俺の本が??
その王様の持つ予言書は、まだ世の中に発行されていない俺の小説「空を感じて」のタイトル!!
「ちょっと、それを貸せ!」
俺は王様から本を奪い、中を読んでみた。
……!
俺の書いた小説と全く同じ内容。そして、まだ俺以外知らないはずの最終話で本は完結している。
作者名は誰になってる?
この俺、田中アタル…ではなかった。
「遠山京香」とその予言書には書いてある。俺はこの名前を知っている。昨年、直木賞を受賞した作家だ。
そして、今、俺と交際中の恋人である。
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