1章-4
街の入口には門番がいた。
といっても物々しいやつではなく、警察のパトロールみたいな抑止力?目当てなのかな。
目を光らせて通行人を見ている訳でもない。
通るときも何も言われなかった。
漫画なんかじゃ街に入るのにお金かかるみたいだけど特にそれも求められなかった。
「おおー、これが異世界街かー!来るときの道はそうでもなかったけど街の中は結構人いるんだなー」
この街を目的地にする人があまりいないだけで街自体は栄えてるようだ。
当たり前だけどいろんな格好のいろんな人がいる。なんかテンションあがるね!
あ、あの人はハンターかな?鎧着て剣をぶら下げてる!刃物持って街歩きなんて元の世界じゃ考えられない。物騒すぎる。
絡まれないようにしなきゃ…
「爺さん、道の真ん中に突っ立ってると危ねぇよ、休むなら端の方に行ってくれよ」
後ろからそう声を掛けられて、振り向くとゴツい男が重そうな荷車を引いて向かってくる。
今更ながらにぼーっと突っ立っていたことに気づいて素直に端に寄ることにした。
「すまねぇな爺さん。ん?見ない顔だがどこの爺さんだ?」
まずい、なんだか怪しまれている気がする…
異世界初めてのピーンチ!
どう切り抜ける?逃げるか?ごまかすか?なんとかしないと!嘘は苦手だから正面突破か?
「街の外に住んでるんだ、この街には今日初めて来た。不作法で申し訳ない。」
ペコリとお辞儀しながらできるだけゆっくり落ち着いてしゃべってみた。すぐにおじいさん口調は無理だからそういう風にしゃべるようにとシルに忠告されたんだ。なんたって見た目はおじいさんだからね!
「ああ、いや別に謝らせるつもりはなかったんだ、こっちこそすまない。ちょっと急いでてな。じゃあな爺さん、気をつけろよ。」
そういって男は荷車をひいて結構なスピードで歩いていった。ちからもちーぃ。
さて、気持ちを切り替えて情報収集と食料の買い出ししなきゃね。周りに人がいないことを確認してシルに聞いてみる。
「シル、買い物はどこの店に行ってたの?」
「あたしが前にきたのって十年以上前だから、あんまり参考にならないと思うわ。だから気にせず見て回ってヨウのいいと思う店でいいわよ。」
そうと決まればちょっと街並みをうろついてみようと思う。
お金はシルに貰ってるから大丈夫。
ちなみにお金は金銀銅貨制だ。金貨の上には白金ていうのもあるらしいけど縁がなさそうなので覚える必要もない。
キョロキョロと珍しげに店を物色していく。
売られているものは野菜だったり肉だったり服だったり、元の世界の商店街そのもの。
すごくなじみがある。
そして街の中心っぽい交差点の一角に一際大きい建物があった。
入口の上には狼?に剣のレリーフが彫られた木の看板がかかっている。
多分ハンターギルドだろう。やっぱり存在したんだ、ギルド!胸熱!でもいまは用事が無いから無視して場所だけは覚えておくことにする。
大通りは歩き尽くしたので、次は少し路地に入ってみようかな。
にしてもこの街意外と大きかったな。
まぁ疲れはしたが興奮が勝っているので、まだまだ歩けるよ!
いくつ目かの路地に入ったとき、植物の香りが漂ってきた。
「これは!この香りは!植物が群生してる!いや、栽培かな!?どこだ?どこから!?」
「えっ、またこれ!?こんな街中に植物なんてないでしょ?」
急なテンションの変わりように思わずシルが声をあげた。近くに人がいなくてよかった。
しかしこうなったら止まらない、シルの疑問に答えることもなく鼻をスンスン言わせ香りの出所を探る。
近づいている!近くにわが愛しの植物ちゃんたちが!ん?でもこのにおいは…
「元気な植物の香りじゃない…摘まれた後の匂いと、枯れかけている匂い?乾燥植物の匂いに薬品の匂いもするし加工場かなにかかも。あ、ここだ」
見上げるとその建物には見慣れない文字にフラスコみたいな絵が書かれた看板がかかっている。
「ヨウ?」
「あ、シルごめん!植物の匂いがしたからついフラフラと…それでここって何屋さんか、わかる??できたら入りたいんだけど」
「植物になると変態並みの嗅覚ね…ヨークラム様もここまで変態的とは思わなかったでしょうね…あ、ここはポーション屋よ。もちろん入ってもかまわないけど、ヨウにポーションはいらないわよ?魔法使えるんだから。」
ポーション屋!!なんだか心に刺さる事を言われた気がするけど、そんな事よりポーション!
ということは薬草、解毒草の類は確実だな。いわゆる生薬なんかになるのも期待できるし、きっと漢方薬になる乾燥植物もあるだろう!
やばい、興奮が止まらない!これがワクテカというやつかっ!!
中に!中に入ろう!!
「ごめんください!」
思っていたより大きい声がでてしまったが問題ないだろう、黙って入るより友好的に思われるはずだ。
俺はポーションを買いに来た訳じゃない、ポーションの中身が知りたい、いや正確に言えば原材料について詳しく知りたい!
うまく店の人に伝わるといいんだけど…
「いらっしゃい、元気なお爺さん」
フフフと可愛らしい笑みをうかべながら奥から二十歳前後と思われる綺麗なお姉さんが出てきた。金髪碧眼、可愛いすぎです。
特に胸のあたりが暴力的なまでに…
一気にテンパり挙動不審になってしまう。
「いや、あ、あの、す、すみません。うるさくするつもりはなかったんです…じゃよ。」
「あ、ち、違うんですよ!うるさいとかじゃなくホントに元気だなって思っただけで…申し訳ありません、お客様に対して失礼でした。」
変におじいちゃん口調を意識しておかしな言葉になったのにそれには触れずに逆に謝られてしまった。
この人はいい人だ。かわいいし、胸も大きい!
背中あたりを蹴られた感覚が襲ったが気のせいだろう。
おかけで少し落ち着けたので、本題を切り出すことにする。
「あの、こちらポーション屋さんですよね?私好奇心が強くて、ポーションがどうやって作られているか見てみたいのです。秘匿されている技術を知りたいわけではないので、どうか見学させてください」
興味があるのは原材料の植物だから、ポーションの作り方に興味はない。秘匿されているなら仕方がないがポーションが一般に普及しているなら原材料くらいは見せてくれるはず。
だめと言われたら原材料の入手方法を聞いてみよう。せっかく初めての異世界植物を手に取れるチャンスだから無駄にしないようにしなきゃ!
「えっと、ポーション作りは秘匿ってほどではないですが、店によって配合が違うのでそのあたりはお見せすることはできません。ちょっと
店主に聞いてきますのでそのままお待ちいただけますか?」
「おお、すみませんが頼みます!ちなみに私は植物の研究をしているしがない老人ですじゃ。」
「研究、ですか。それなら…あ、すみません、すぐに店主を呼んできます!」
ん?なんだか植物の研究してるって言ったら態度が少し変わった?気のせいかな?
でも最初は確実に断られる雰囲気だったよね?
くんかくんかと漂う植物の香りを嗅ぎながら、さっきのお姉さんの対応を考えていたら奥から壮年の男の人を連れてお姉さんが戻ってきた。
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