第6話可愛い後輩の裏側を垣間見た

「弘貴ぃ、先輩っ!泣かすなんて見損ないました!」

階段をおり、リビングの扉を開けた途端、そんな言葉を仁王立ちする宮倉鈴音から言われた。

「それって、もしかして......言ってないよな。宮倉に」

鋭い眼光にびびりながら、確認する。

「本人から聞いたの。彼女も今の弘貴先輩の気持ちだったんだからね。気を付けてよ、わ・か・り・ま・し・た、ですよ」

「わかりました......ぶ、部活じゃ、ないの。宮倉」

「そう。

「しっ、しないって。その本気マジの瞳で言うのやめてぇ、俺だけじゃなくてあいつに言い聞かせてくれない?」

?」

笑顔なのに瞳が笑っていない。

「殺されるんですか、俺?全面的に俺が悪いとは......」

近付いてくる彼女から距離をとり、階段を上がろうとしたところで腕を掴まれる。

「冗談ですよぅ。冗談も通じなくなったんですか?」

本気マジだったじゃねぇかぁ。冷や汗がとまらないだよ、金輪際やめろよっ!そういうのっ、トラウマになるわっ」

「弘貴先輩が悪いんですから。終わったら寄ります。クッキー食べたいなぁ~」

「当分の間、来ないでほしい。寿命縮んだよ、絶対っ。ポストに入れとくから、家に上がらないで。お願いだからっ!」

「そこまで怯えなくても良いじゃないですかぁ。弘貴ぃせ~ぱいっ!」

甘えた声のまま、円を描くように胸元を触ってくる。

「やっ、やめぇって。冗談じゃないから、今日の宮倉怖すぎる。本気マジで当分、来ないでくださいっ。あいつには何もしないからっ、なっ」

身体を反りながら懇願する。

「やりすぎました。本当にごめんなさい、弘貴先輩」

彼女は、頭をさげ、謝る。

「......あ、ああ。がんば、れよ......部活、ぅ」

力ない声で彼女を送り出す。

宮倉ってあんなやつなのかぁよぅ、心臓に悪い。

ほしいものを聞こうとしていたのだが、失敗した。


クッキーを作り終え、一枚かじるが美味しいと感じなかった。

翌日、約束していたのに行けない。やらかしたら、どうなるか?

考えただけでも震えがとまらない。

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