第4話ウザい後輩との通話

風呂からあがり、自室まで歩いていると一階から母さんに呼ばれる。

「ひろー、電話。友達からー」

「すぐ行くー」

階段をおりて、受話器を受け取る。

「もしもし?」

『弘貴先輩。これで満足頂けましたか?』

明るい声ではなく低い声の水倉。見下しているようにしか聞こえない。

「満足できるかっ!こんな時間に何だよ。嫌がらせか?」

『はぁー、嫌がらせもしたくなりますよ。ブサイク弘貴っ!』

「話しかけてこようが口聞かないぞ。一生」

『ごめんなさい。今のは言いすぎました。ごめん......弘貴』

「......」

『ほっとぅーにごめん。私が全面的に悪いです。口を聞かないのだけは勘弁してくださいっ。弘貴先輩ぃぃ、反省しているので、何か言ってくれませんか。何か言ってください、お願いします。罵詈雑言を浴びせていいですからぁー』

号泣する彼女。嗚咽まじりに鼻水を啜りながらの声。

そこまで落ち込むことかよ。

「号泣すんなよ、水倉。大丈夫か、お前。浴びせるつもりなんてねぇーよ。100倍で返ってきそうだし。それで用件は」

『あ、ああぁぁ。よぅーかぁったぁ、弘貴が口聞いてくれなくなったらぁぁぁー』

「泣き止めよ。明日、学食でおごるからそれでいいだろ?」

『......う、えっ。ほ、んとうなの?弘貴』

「用件を言ってくれ」

『う、うん。日曜日のことで。ばっくれないよね?付き合ってくれるよね?』

「へまをしなければ、日曜日だけは付き合うよ。じゃ、明日」

受話器を戻すと、母さんが頬をつねってきた。

「女の子に向かってだめでしょ。泣かせるなんて──」

つねる腕を叩き、降参する。

「勝手に泣いたんだよ」

「謝んなさいよ。彼女に」

階段をあがり終え、返す。

「言われなくても、そのつもりだよ」

自室のベッドに寝転び、眠りにつくのに時間はかからなかった。

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