第3話放課後のリア充先輩
放課後になり、帰り支度をしていると教室の前方の扉付近から俺を呼ぶ声がして、顔をそちらに向ける。
扉の横から小さく顔だけを出し、瞬きをしている笑顔の花宿先輩。
花宿先輩に駆け寄る。
「今日は部活ないんでしたっけ。花宿先輩」
訊ねると、隠していた身体をみせる。
彼女は、水色のユニフォーム姿だった。
「一緒に帰ろっ、霜河君。6時に終わるけど待っててくれる?」
「いいですよ。6時前に体育館に向かいます」
「えっとぉ......恥ずかしいから、みないでね。霜河君......」
彼女は、顔を俯かせ、身体をモジモジさせる。
練習試合を観られているのに今さら恥ずかしがることはないのに。
「わかりましたよ。みませんから、心配しないでください」
「ありが、とう。じゃあ、行くね。部活」
小さく手を振り、廊下を走る彼女。
席に戻り、机の中に残っている物をスクールバッグに詰め込み、図書室に向かう。
廊下を歩いていると、帰宅部の男子数人が壁に寄りかかり会話をしている姿、掃き掃除をしている生徒などを見かける。
図書室に到着し、扉を開けると、男子二人女子五人の計七人がいた。男子は離れた席で女子三人は固まり談笑していた。残りの女子二人は離れていた。
本棚に近い席に歩き出すと、女子三人の前を通りかかると一人に声をかけられた。
「女でも待ってんの、霜河?」
威圧的な態度に声が小さくなる。
「興味......ないでしょ。美乃さんには」
「はぁー、なかったら聞くなってか?」
「そういう、わけじゃ......」
彼女の不機嫌さが増す。
「悪かったね、声かけて。もういいから」
会話に戻る彼女。
本棚から一冊の文庫本を取り出し、椅子に腰をおろし、彼女を一瞥する。
読み進めていると下校を促す放送がスピーカーから流れる。
文庫本を閉じ、本棚に戻して、図書室を後にする。
体育館から出てきた花宿先輩は首にタオルをかけて、ポニーテールにしていた。
「ごめん、待ったよね。霜河君」
「いいですよ。どこか寄りますか、花宿先輩」
「うーん、クレープを食べたいけど......」
彼女は歩きだし、夕飯が食べきれるか心配のようだ。
「半分食べますよ、それならいいですよね」
「ありがとう。行こっか、クレープを食べに」
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