【第六話】王族狩り 12
「おのれェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!絶対に許さんぞォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!必ず見つけ出してズタズタにしてやるッ!!」
シェルはそう叫ぶと、その場で地面を踏み付け、地団駄を踏んだ。
その衝撃で地面が割れ砕け、目から血が飛び出す。
すると、
物陰から人の気配がした。
「誰だッ!!」
雷伝がない今、シェルも気配に敏感になっている。
もしかしたら恭司かもしれない。
しかし、
森の中からゆっくり現れたのは、味方のよく知った顔だった。
「こんにちは、お坊ちゃん。なんか戦いが終わったっぽかったんで来てみたんですが……こりゃ一体どういったご状況なんですかね?」
その男は、明らかに私服と思わしき格好で現れた。
表情もニヤケ顔で、見るからに軽薄そうな印象を受ける。
バルキーの持つ私兵団……近衛部隊隊長『ビス・ヨルゲン』だった。
「ビスかッ!!ちょうどいい所にきた!!王族狩りだッ!!さっき奴と戦って、仕留め損なったッ!!まだ近くにいるはずだ!!」
「へぇ……。坊ちゃんが仕留め損なうなんて珍しい所じゃねぇな。と言うか、坊ちゃんの場合、いつもので簡単に見つけられるんじゃないです?」
「消耗してるんだよッ!!今は使えない!!だから言っているんだろう!!」
「へぇぇぇぇぇ……。それは凄い……。坊ちゃんにそこまで力を使わせるとは……」
「相手は『三谷』の生き残りだった……ッ!!青い着物姿だ!!重傷だからまだ遠くには行ってないはずだッ!!見つけて殺せッ!!」
「……ッ!!ハッ、ハハハハハハッ!!なるほど!!そうですかッ!!三谷ですかッ!!ハハハハ!!懐かしい……ッ!!
分かりました!!やりましょう!!請け負いましょう!!とっ捕まえて晒し首にしてやりますよッ!!」
ビスはそう言って、その場からナイフを使って飛び去った。
シェルはそれを見届けると、そのままパタリと倒れ込む。
流石に疲れていた。
「頼んだぞ、ビス……。三谷だけは、決して生かしておくわけにはいかないんだ……」
そう言って、
シェルは間もなくして寝息を立てた。
そうしているうちにバルキーの私兵団も合流し、シェルは彼らによって城へと連れ帰られる。
王族狩りは仕留め損なったが、その追撃にはビスを向かわせたのだ。
暗殺一族だろうが、そもそも生きているのが不思議なほどの怪我で、そこに超能力者のビス・ヨルゲンを投入しているのだから、見つけ出すのは時間の問題だろう。
兎にも角にも、いったん、この王族狩りによる事件は解決を見たと言える。
シェルは安心して眠りの中に落ちていった。
これでもう大丈夫だろうと、シェルの頭の中は、晒し首になった王族狩りの姿でいっぱいだった。
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