【第六話】王族狩り 11

「おいおい、ずいぶんしぶといなぁ……。流石にここまで粘られると萎えてくるよ」



シェルはそう言うと、ため息を吐きながら歩み寄ってきた。


もう恭司に反撃する余力はない。


そう判断してのことだ。


シェルは剣を恭司に向け、今一度構える。


直接斬るつもりだ。



「僕も二度の雷でエネルギーを消費し過ぎてしまったからね。"もう使えない"し、最後はコレで締めるとするよ」



恭司は体をピクリと揺らした。


『もう使えない』と、シェルは言った。


残りは自力の剣術のみだということだ。


恭司はない力を振り絞って立ち上がる。


シェルは感心に目を大きくした。



「ほぉぉぉぉぉぉ、いい漢気だ。流石は『三谷』……。とでも言っておくよ。君との戦いはとても熱くて、楽しかった」



シェルはそう言って剣を振り上げる。


隙の一つも見つけられないほど綺麗なフォームで、恭司はそれを睨み付けるように見ていた。


決して見逃すまいと、目を大きくしながら、その瞬間を待っていた。


シェルはその様子を確認しつつ、剣を振り下ろす。


そのフォームはやはりとても綺麗で、隙なんてどこにもなかった。


どこまでも油断しない男だ。


その攻撃はここに至っても正確無比で、反撃された時のことまでしっかり織り込まれている。


万が一すら許さないつもりだ。


そして、


恭司はその剣筋を見ながら、ギリギリの所で技を行使する。


ラスト1回の三谷の技。


最後の最後に残された、唯一の活路ーー。


それを放つ。


ーー基本技が一つ、『瞬動』。


恭司の体は、その瞬間、まるで瞬間移動のように消え去った。



「やはりかァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



シェルの振り下ろした剣は空を斬るが、シェルは待ってましたとばかりに反撃に対する準備を整えた。


雷使いとしての反射神経はもちろんそのままだ。


油断も勿論していない。


何が来ようとも防いでカウンターを与える準備は出来ていた。


しかし、



「………………どうなっている……」



反撃は結局こなかった。


全ての準備を終え、いつ来られても大丈夫だったのに、何もこなかった。


何なら恭司自身の姿すらない。


瞬動を使って移動したはずだが、ここにはもうシェル以外誰もいなかった。


シェルはハッとすぐに気付いて、思わず身をプルプルと震わす。


そう、


シェルは、もうエネルギーを消費し過ぎて雷技を使えないのだ。


つまり、


『雷伝』も使えない。


シェルは思わず叫ぶ。



「逃げやがったかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



声だけで衝撃が走り、殺気が辺りに弾け飛んだ。


今日で一番だった。


シェルは血が出るほど歯を食い縛り、己が失策を呪う。


カウンターの用意ではなく、逃げられないようにするべきだった。


まさかあの局面で『逃げる』と思えなかったのが、全ての要因だ。

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