【第六話】王族狩り ⑩

「ハハァ!!おかわりだぞォ!!それッ!!ラララ・らァァァァァい(雷)!!ラララ・らァァァァァい!!(雷)!!」



奇怪な叫び声を上げながら、シェルは何度も何度も雷撃砲を放ち、恭司はその度に障壁ごと弾き飛ばされた。


体がどんどんボロボロになっていき、出血と眩暈が止まらない。


アバラの辺りを見るに、骨も折れただろう。


完全にショータイムだ。



(俺は……死ぬのか。もう、終わるのか)



一瞬、脳裏に諦めの考えが過ぎる。


思えば、シェルは最初から恭司が風撃閃を放ってくるのを待っていたのだろう。


おそらくは挑発を始めた辺りから、それを狙って動いていたのだろう。


恭司の目に涙が浮かぶ。


なんとも無様で、情けない姿だ。



「何でだ……何で……」



何で、勝てない。


何で、ここにきて仇を討てないのだ。


自分は、そのために、今日まで生きてきたというのに。



「ハハハハハハァァァアアアアアアアアアアアアアア!!ここにきてずいぶん良い顔をするなァ!!王族狩りィ!!とても唆るよ!!とてもセクシーだよ!!もっと見せろよ、その顔ををををををををををををををを!!!!」



再び繰り出される雷撃砲ーー。


恭司は精一杯の力で跳んで避けた。


自分がさっきまでいた辺りが破壊される光景を目にしながら、恭司は考える。


何で、避けたのかーー。



「さぁさぁ!!次は避けられるかなァ!?次は広範囲だぞォォオオオオオオオオオオ!!」



シェルはそう言うと、間髪入れずに即座に次の攻撃を放ってきた。


大量の雷の球体を展開し、一斉に放ってくる。


恭司は再び風の障壁を展開し、ソレを耐えた。


いくつもの球体が着弾し、障壁を破壊していく中、恭司は歯を食いしばる。


何で、耐える?


何で、こんな苦しい思いをしているのか、今になってよく分からなかった。


このまま一つでも直撃してしまえば、楽になるはずだ。


皆のもとにいけるはずだ。


なのに、


何故、耐え凌ぐ?



「クハハハハハ!!ホントに素晴らしいな、お前はッ!!ここまで興奮したのは初めてだ!!最後はッ!!お前の仲間たちと同じ末路を歩ませてやろう!!」



シェルはそう言うと、剣を天に向かって振り上げた。


雷雲が光り、またしても視界がホワイトアウトする。


恭司は歯を噛み締めた。


何でかなど、決まっていたはずだ。


当たり前だったはずだ。


いつもそうだったはずだ。


自らをここに立たせる理由は、いつも『三谷』だった。


『三谷』が自分を支え、自分は『三谷』のために生きてきた。


だから、


生きるのだ。


三谷は生きることを何よりも重要なこととして考え、何度でも立ち向かう。


そう、


何度でも。


何度でも。


シェル・ローズが死ぬその時まで、


三谷恭司は、



「俺はッ!!絶対に死んではならないッ!!」



ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!



再び落ちてきた落雷ーー。


シェルの雷技が一つ、『王の裁き』。


恭司は自らの全てをかけて、技を行使する。


足を地につけ、血を力を神経を、その全てを使って、今一度解き放った。


三谷の秘奥が一つ、『風撃閃』。



ドガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!



風撃閃と雷は今度こそ真正面からぶつかり合った。


巨大なエネルギー同士のぶつかった衝撃が大気を揺らし、上に向かう竜巻と下に落ちる雷は、辛くも膠着する。


ほんの一瞬でも気を抜けば死ぬだろう。


それほどに雷の力は強く、恭司は雄叫びを上げる。


もう、あの時と同じになってはならない。


あの時の借りを、恭司は返さなくてはならないのだ。


やるしかないのだ。


やらなければならない。


だから、



「だからッ!!ここで死ねるかァアアアアアアアアアア!!」



叫び声と共に、雷と風撃閃は互いに弾け飛んだ。


衝撃を横に逃がした恭司はそこから吹き飛ばされ、再び木の一つにぶつかる。


意識は既に、飛ぶ寸前だった。


もう、三谷の技も、『あと一回』くらいしか使えない。

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