【第十五話】鋼鉄山 ⑥

「誰だッ!!」



恭司は刀を抜き放つ。


霧に隠れた気配は"2点"ーー。


どちらも只者じゃない。


すると、


その霧の向こう側から、人影が2つ歩み出てきた。


どちらも見たことのある顔だ。


その顔を見ると、


恭司は怒り顔で、スパイルは冷や汗混じりに、それぞれ同時に反応した。



「お前は……ッ!!」


「まさか……アンタかよ……」



そう、


霧の向こう側から出てきたのは、


ミッドカオス、バルキー・ローズの近衛隊長ーー『ビス・ヨルゲン』。


そして……



「つい先日ぶりだなァ?会いたかったぞ?スパイル・ラーチェス……」



ディオラスの"No.3"、『ドーバー・シブリス』だった。


よりによってミッドカオスとディオラスの、重鎮クラスが出張ってきたということだ。


予想外の展開に、驚愕と焦りが拭いきれない。



「クックックックックッ……。まさかこんな所で会うとはねェ……。ずいぶん元気そうだなァ、三谷恭司」



ビスはそう言って、相変わらずの歪な笑みを浮かべた。


恭司は怒りのあまり、今にも襲い掛かりそうだ。


かつての仇敵の一人で、シェルとの激闘の後、恭司を追いかけ回してきた男ーー。


怨みも憎しみも限界まで溜まり切っている。


今すぐにでも……コロシテヤリタイ。


しかし……



「落ち着け、恭司……。まずは状況把握だ」



そこで、スパイルが恭司を制止した。


手を前に出し、冷や汗で体をビショビショにしながら、目の前に佇む強敵を見つめる。


恭司は、不承不承にそれに応じた。


その様子を、ドーバーが物珍しそうに見つめる。


そして、


ニヤリと口を三日月状に広げた。



「ホォォォォォォォォォォォォォォォ……。どうやら……ずいぶん"上手いことやってる"みたいだなァ、スパイル・ラーチェス」



ドーバーはそう言って、スパイルに向けてゆっくりと歩み寄ってきた。


白っぽい銀髪で褐色の肌をしたこの老人は、両手それぞれに巨大な円月刀を持ち、スパイルに明確な殺意を向けている。


そのオーラは人とは思えないほどに禍々しく、ひどく邪悪な印象を持った。


スパイルはそれを見ると、冷や汗と共に闘志を滾らせ、引き攣り気味にニヤリと笑う。



「ハハハハ……。なんだかんだで、アンタと喋るのは初めてだなァ、『ドーバー・シブリス』……。相変わらず……邪悪で悍ましいオーラした爺さんだ……」



この男のディオラスにおける順位は『No.3』ーー。


つまり、


元々のスパイルよりも格上の存在なのだ。


戦い好きなスパイルが慎重になるくらい、この『ドーバー・シブリス』という男には、底が知れない危険性と妖しさがある。


スパイルにとっては、ある意味ティアル以上の警戒対象だった。

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