【第十三話】ドラルスの街 11

「どうッ!?上手く作れているでしょうッ!?」



店員のテンションは高かった。


元の素材の良さもあるのだろうが、確かにどこからどう見ても、"裕福な環境で育った、貴族の箱入り娘"にしか見えない。


恭司自身の肌の綺麗さや白さ、体の細さと合わせ、思わず守ってあげたくなるような美しさを兼ね備えていた。


これなら、


まさかミッドカオスで1,000人も暗殺した『王族狩り』だとは誰も思わないだろう。


スパイルは思わず拍手していた。



「なるほど。良い仕事するじゃないか……」



完全に女性としか見えない容姿に、金髪で貴族という設定ーー。


スパイルの執事姿と合わせ、設定もあるから確かにバレる危険性は低くなったかもしれない。


何の格好をしても恭司の美しさは隠せないから、いっそのこと性別を変えるというのは良い判断だ。


だが、


恭司の感想は違うようだった。



「こんな屈辱は生まれて初めてだ……。家訓が無ければ死んでもおかしくないぞ……」



見た目にそぐわず、恭司は低い声で唸る。


変装としての役割はキチンと果たしていそうだが、性別を変えたことについて、恭司自身がそれを受け入れられずにいるようだった。


鏡の前にいるのは間違いなく可憐な美少女なのだが、恭司にとってはそれこそが気に食わないのだろう。


しかし、


そんな恭司の様子を見てか、店員は大きな声で叫んだ。



「あァァアアアアアアアらァァアアアアアアアッ!?それは随分なお言葉ねェ!?私としては最高の出来栄えなんだけどォォォオオオオオオオオオッ!?」



オネェ系である店員にとっては、そんな恭司のことは羨ましくて仕方がないのだろう。


自分ではいくら望んでもこうはならないのだ。


言いたいことは分かる。


だが、


恭司は納得がいかないのか、相当不満な様子で鏡を睨みつけていた。


恭司は母親似だが、男である恭司にとってはコレは屈辱と映るようだ。


店員と恭司では価値観がまるで違う。


だからこそ、


そこはやはりというか、スパイルが仲裁に入ることにした。


怒りと恥辱でプルプルと体を震わす恭司に、このままだと店員が殺されかねないと判断したからだ。


ここは一旦フォローを入れて、恭司を鎮静化させておかなければならない。


スパイルは恭司の前に立つと、声をかけた。



「綺麗だよ」



恭司の怒りが、スパイルに向けて大爆発した。


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